12.第九話 『鑑賞会』
「鑑賞会をします」
一木さんと花ちゃんが拍手する。
「なんですか、そのうちわは?」
「何って、こういうことかと思って」
【トミカと一緒に今つくったのよ】
「いや、雑誌の切り抜きの再利用じゃないですか」
一木さんもワクワクそわそわしている。
黒田くんから最高記録達成した配信映像を見てほしいと言われたのだ。
自慢やん。
もう、黒田くん。褒められたい人やん。
まぁ、いいよ。そんな素直に言われたら、付き合いますよ。
ただし全力でね。
「誤解しないでください。実際の探索活動を見た方が、今後の創薬活動に役立つと思ったんです。色々と課題がありましたし」
「照れるなよ~褒めて欲しいんだろ~」
【照れてるの、黒田?】
「照れてませんよ。むしろ、あなたのポーションが如何に役立ったか、見てもらいたかったのはそちらですし」
とはいえ、確かに。
最高記録である66階層突破どころか、ついでに67階層も突破しちゃったとか。
ま、楽勝だったんだろうけど、私が内容を知らないのは、関わったものとして無責任だよね。
わざわざUSBメモリで持ってきてもらえなければ、ここで映像は見られないものね。
感謝してもう茶化すのはやめよう。
「さぁ、高解像度4K小型6時間駆動バッテリー搭載、輝度800ANSIルーメン150インチ投影、30Wステレオサラウンド付きプロジェクターの性能をご覧あれ」
「いや、呪文か」
【黒田はおもちゃが好きね】
「ガジェットです」
生配信とは違い、綺麗にステータスや解説が入った編集版は誰が何の目的で行動しているか、とても分かりやすい。
「お、BGMかっこいい!!」
【テレビみたいねー】
「いやこれは広報担当の仕事ですから」
迫力の戦い。親切な解説と編集。
「おお、黒田くん、すごい!」
【働いてる黒田は立派ねー】
「ここでも働いているんですが」
恐ろしく過酷な戦いが繰り広げられる。
「ああ、黒田くーん!!!」
【逃げて黒田ー!】
「よくそこまでのめり込めますね」
まさに死闘。
熾烈な魔法戦。
マイケル・ベイ監督ばりの連続大爆発。
「立派だったね、黒田くん」
【あなたのことは忘れないわー黒田】
「いや、生きてますからね」
あ、本当だ。
黒田くんの回想シーンが入った。
インタビューはいいよ! 飛ばして飛ばして!!
「うぉぉ! 勝てぇ、勝つんだ黒田!!」
【わぁー】
『きゅぃぃ!!』
どす黒い魔力の塊と、青白い光の玉が激突した。
スーパー黒田の光の玉が打ち勝った。
あとは『東京賢人会』の数の暴力による一方的なタコ殴り。
「うぉぉぉ、勝ったぞぉぉ!!!」
【わー】
『きゅぃぃ、きゅぃぃ!』
「結果はわかっていたでしょう。よくそこまで盛り上がれますね」
いやぁ、臨場感?が違うんだよ。
「ふふ、一木さんも出てたね」
【出た。ちょっと楽しかった】
「そうですか」
いやー、興奮したー。
あ、クレジットは見ましょうね。礼儀として。
ふぅー大満足。
「ねぇ、ねぇ、感想言いながらご飯食べようよー」
【まぁ、お行儀が悪いわ】
「えぇ~いいでしょ~」
「いや余韻に浸るのはいいので、何か改善点は見つかりましたか?」
そうだった。はいはいそう言う体裁だったわよね。
「そうだね……実況とか入れたらもっと盛り上がると思うんだけど」
【私は字幕をもっと細かく入れて欲しい】
「動画に対してではないです」
みんな見事に自分の役割を全うしていたように思う。
普段から連携の練習をしているんだろう。
【終盤は動きのキレが落ちていたような気がするわ】
「まぁ、ポーションで回復しても、体力が戻るわけではないからね」
「むしろ、『秘薬』を使ったときは大変でしたよ」
「えぇー!? 副作用? 何かマズかったですか!?」
いかんいかんいかん!
どこだ、どこがよくなかった?
顔色は悪くないけど……
「もう平気ですよ。ただ……飲んだ直後は異常に腹が減るんです」
「腹が?」
【減る?】
ああ、そういえば……
「ちゃんと携帯食を用意しなかったの?」
「しましたよ。腹に何かしら入れた状態で使ったんですが。ダメでした」
「でも、それはしょうがないというか……」
「ポーションで打ち消せませんか?」
「中毒とかじゃないから無理だよ。身体が治ったら、血とかエネルギーを消耗するのは当然のことだから」
余裕がありそうに見えるけど、67階層突破で探索を終えている。
理由はお腹が減ったから。
マジックバッグがあるから、いくらでも食べ物が用意できるけど、栄養補給に適した携帯食料では『秘薬』による消費カロリーを補えないのか。
これは、気付かなかった。
「なら、ここの作物で携帯食を作りましょうか?」
「それで何か変わりますか?」
【ここの作物、トミカが栽培しているから普通よりはるかに栄養価が高いわよ】
「大自然教のおかげね。ああ、摩訶不思議大自然教」
ミラクル作物は、大自然教の力で育っているのです。
「そうなんですか? 確かにやたら美味いとは思っていましたが」
そうか。
『秘薬』の改良は難しい。
でも、携帯食料なら……
「よし、いっちょやってみますか」
こうして私たちは栄養満点の携帯食料を試作することに決めた。
第一部完となります。
ここまでお読みくださりありがとうございました。
第二部に続きます。
ある程度ストックが溜まってから再度投稿となりますのでよろしくお願いします。




