191 Epilogue4 ──Ĵ㏂м¡₦₲
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「いやぁ……僕はまだまだやりたい仕事がたくさんあるので、当面は……」
そう言う白鳥の目元には、含羞むような皺が出来ていた。
「そっかぁ。でもなんだか、もったいないなぁ。白鳥なんて絶対にモテるだろうに」
「いやぁ。そんなこと全然ないですよ。あはは」
──この世には、“ジャミング症候群”という障害がある。有病率は0.1%──千人に一人の罹患率だ。
「ふーん。ところで……今って、王宮勤めだよね?」
「一応、そうですね。王宮の敷地内に、神聖騎士団の本部があるので」
想像力や注意力の欠如、奇妙な思考のクセと拘り、極端な不器用さ、衝動性、感情制御能力の乏しさ、稚拙で拙劣なコミュニケーション能力──。
言うまでもなく、ヒトは社会的な動物だ。
なので、こうした障害──“個性”と言う人もいる──は周囲の人間に──違和感、怒り、呆れ、蔑み等の──否定的な反応を引き起こす。
それは人の本能に根差した営み。致し方のないことだ。
「流石だなぁ。この国の軍隊の総長だなんて。大出世だよね。元の国で言うと、防衛大臣みたいな感じかな?」
「いやぁ、そんな立派なものではないですよ。僕らなんて所詮、只の公僕ですよ」
こうした障害に対し、有効な治療法は未だ確立されておらず──。
「ふーん。随分と謙遜するなぁ。で、昔に比べて、王宮界隈の様子って変った? 最近は亜人との交易も増えてきたって、聞いているんだけど?」
「そうですねぇ。最近は普通に市場で、亜人製の野菜を見かけますね」
この障害──乃至は個性──を持って生まれた人間は、一生この障害(個性)に──影のように付き纏われる。
上述のような欠陥(個性)は、幼少時には友情の形成を遠ざけ──。
「へぇ。それって、ひょっとしてコロボックル族の?」
「はい。彼らが作った野菜です。随分人気があるみたいで、街のレストランでもよく使われていますよ」
成人期には就職活動の足を引っ張り……運よく就業出来ても離職するのがよくあるパターン。
生涯年収は有意に低く、自殺率は有意に高い。当然、配偶者を見つけることも難しい。
「へぇ。やるなぁ、コルボ爺さんたち、元気かなぁ」
「コロボックル族は長命ですからね。きっと今も、お元気でいる筈です」
“ジャミング症候群”──20年ほど前、フランク・ジャミングという医師が──発見し、人口に膾炙したこの障害。
なんだか小難しく、悲劇の主人公ぶった“上等な疾患”のように語られることも多いが──詰まるところ──“只のデキソコナイ”だ。
「うん。きっと、元気なんだろうね」
「えぇ。……そうだ! 今度、時間が出来たら、一緒に彼らを訪ねませんか?」
「いいねぇ。是非、そうしよう!」
僕の返事に白鳥が、淡い微笑を滲ませる。
そして──僕はふと、昔を思い出し。
「そうだ、話しは変わるけど、毎朝の食事はどうしてるの?」
「朝御飯ですか? それなら、僕はいつもトーストと──」
これは──そんなデキソコナイが、他愛のない会話を出来るようになるまでの──ただ、それだけの物語。
『──♰ Ĵ㏂м¡₦₲ ♰──』
~完~
最後まで読んでいただいて、本当にありがとうございました。
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