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175 白鳥翔の闘い2 ──【青龍の覇気】


 白鳥の頭にまず真っ先に浮かんだのは、勿論──明日部あすべのことだった。



 白鳥はスキル──【青龍の覇気】──を放った。

 ──混乱、恐怖、怒り、悲しみ等の精神状態異常を正すスキルだ。


 裂帛れっぱくの気合とともにスキルを放つと──騎士達の怒鳴りあいや、殴りあいがピタリと止まる。

 その後、部隊に移動中止命令を下し、全ての馬車を緊急停車。

 

 次に白鳥は、騎士たち一人一人を【鑑定】スキルで見ていった。



 結果────茫然とし、言葉を失うほかなかった。


 そして、最後に自身のそれを確認すると──。

 比喩表現でもなんでもなく──暗幕が降りてきたかの如く、視界が一瞬にして黒く染まった。

 こんなことは、生まれて初めての経験だ。


 ジリジリと締め付けてくるような焦燥──取り返しのつかない失敗。

 絶望と言う名の毒が、自らの身体をジワリ、ジワリと犯していくような感覚……。


 白鳥は治まらない動悸を無理矢理スキルで治め──辺りを見回し、比較的まともそうな騎士に、明日部を連れて来るように命じた。


 その騎士は、多少イラついた態度を見せながらも、白鳥の指示に従い、明日部の元へと向かった。



 ・

 ・

 ・



 だが待てど暮らせど、その騎士が戻って来る気配はない。

 仕方がないので白鳥は、別の騎士に指示を出し、くだんの騎士を連れ戻させた。

 

 連れ戻された騎士は、呆れ返るような報告をした。



「……す、すみません。………………明日部の馬車のドアを開けたんですが、中にいたやつの姿を見ると、何故かドアを閉めてしまって………………そして、その後……家族から貰ったお守りを無くしたのに気がついて……自分の馬車まで戻ったのですが…………そしたら……馬車の中の道具類が散らかっていて……それが気になって、整理整頓を始めたら……故郷を出るときにもらった恋人からの手紙が見つかって、それを読み始めると……いつの間にか時間が過ぎていて…………最初の副師団長の指示をすっかり忘れてしまって………………気がつくとこんなことに…………」



 白鳥がその騎士を【鑑定】すると、【注意力】が1まで低下していた。

 間違いなく明日部の仕業なんだろう……。


 白鳥は、その騎士に「暫く休むように」と指示を与えた。


 自ら動く必要がある。

 そう判断した白鳥は、己の意識をギュッと握り締めるように決意を固めた。


 何度か深呼吸を繰り返し、心を落ち着けた後……遠く──隊列中央部に位置する明日部の馬車に視線を定める。



 まだ、中に明日部さんの気配を感じる……。



 白鳥は、背中に担いだ大振りの両刃剣を音高く抜き放った。

 白銀の刃が陽光に照らされ、刃先が鈍く輝く。



 斬撃で馬車の躯体だけを解体し、彼を引きずり出そう──そう、白鳥は算段し──。

 

 両手で握った大剣を、ゆっくり、大きく振り被る──────。


 白鳥の愛剣が応じるのように、その刀身に紅緋べにひの燐光をまとい始める。


 


 





 ──白鳥が剣を構え終えたのと、大地の其処彼処そこかしこに、無数の亀裂が走ったのはほぼ同時だった。

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