葉子と翔太28ー会社のイベント
日曜日。
今日はパパの会社のイベントがあるらしい。
楽しいから一緒に行こう、と言われたけど、イベントのチラシを見る限り、どうも子ども向けのイベントのような気がする。
「パパ張り切ってるから、一緒に行ってあげましょ」
ママは結構乗り気だ。いつもより時間をかけてメイクしている気がする。
三人で電車に乗って、お昼前に会場に着いた。
入口でパパがスマホを見せて、三人分のリストバンドとスタンプラリーの紙と、フードチケットを受け取る。
「葉子、左手出して」
ママがリストバンドを巻いてくれる。こういうイベントは久しぶりだ。なんだかんだ、ちょっと楽しそうかもしれない。
パパは知り合いに会う度に、ペコペコと頭を下げて挨拶している。ママも一緒になって挨拶しているので、私も一応、頭を下げて「こんにちは」と挨拶する。
「しっかりしたお嬢さんですね」とか、「お父さんそっくりですね」とか、知らない大人の人に声をかけられて緊張する。
上司だったり同僚だったり、専務だったり、とにかく色んな人とパパはにこやかに挨拶してから、「まずお昼を食べようか」と言った。
芝生のエリアに屋台がいくつも並んでいる。
チケットで空揚げとフランクフルト、焼きそば、ポテトを注文して、パラソルのついたテラス席に座った。
ポテトを食べながら、ママは真剣な顔でスタンプラリーの地図を見ている。
「1個目のスタンプ、ここから近いわね」
「1時半から芸人のライブが始まるから、それまでに射的と輪投げ行こう」
パパもママも全力で楽しむつもりらしい。歩きやすい格好で来て良かった。多分夕方まで、歩き回る事になりそうだ。
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夕方。
半日歩き回って、スタンプラリーも出店も全部回った。お笑い芸人も見た。景品のお菓子とぬいぐるみ、ストラップなど、戦利品もいっぱいだ。
「夕飯買って帰りましょ。今日はもう疲れちゃった」
「葉子、大活躍だったな。ボウリングもダーツも上手いじゃないか」
パパもママも、一日中にこにこしていた。近所の人や親戚の人と話す時もだけど、会社の人と話す時も、いつもずっとにこにこしているのかな。
なんだか働くって大変そうだ。将来、どんな仕事がしたいか全く想像がつかない。
ーー『良い学校に行きなさい。就職には、学歴。』
ふいにおばあちゃんの言葉を思い出す。
……将来の事、何も決まっていないなら、とりあえず偏差値の高い中学を目指すのは、悪くないのかもしれない。




