ずっと一緒!
活動報告にも書きましたが、
ここで本編は完結にさせていただきます。
後日談やSSも書きたいので連載のままにしますが、
旅に出て冒険をする話はタイトルを変えて新しく始めます。
シリーズ化しますので、投稿を始めた時はまたよろしくお願いします!
――アアアアアアアアアアアァ!!!!
ディアブロの血に支配されたエルアナが雄叫びを上げた。
「エル……これがあなたの力……」
「すごい魔力……なの……」
「とんでもない才能ねー……これ程なんて……」
「エル……そんなに私達と一緒にいたかったんだね……」
…………。
「――しっかりなさい! ここからが正念場よ! 何としてもエルを取り押さえるわ!」
覚悟はしていたが、エルアナの変貌ぶりにショックを受けていた一同を、ステリアが一喝した。
「すみませんステアさん。まずは私が牽制します!」
そう言ってベアータはエルアナの注意を引くために蛇腹刀で攻撃を仕掛ける。
ベアータが注意を引いている隙に他の面々も戦闘態勢を整える。
とはいえ、致命傷を与えたくはない――目的は取り押さえること。
取り押さえるのは主にミーランとカレットの役割になった。
フレイシアとステリアはそれぞれのサポートに回る。
「エヴァー、《思考の首飾り》、『極限の集中』」
カレットのエレメントはハムスターだ。
そして、魔装|《思考の首飾り》は思考力を上昇させるもの。
更に『極限の集中』という魔法によって余計な思考を排除する。
普段はミーランと大差ない頭脳であるが、コンセントレイションを発動させれば、すべての思考を作業的に処理できる。
余計な思考がなくなれば――感情も消える。
感情が消えれば――人格が変わる。
「ミーラン、私が道を塞いで退路を限定する。君が捕まえなさい」
普段のカレットとはまるで違う口調。
しかし、カレットに魔法、錬金術を、付きっきりで教授されていたミーランは、すでに見慣れている。
「イエス、なの。ママ」
空間魔法をミーランに仕込んだのはカレットだ。
今のカレットは通常の思考力を上回っている。
当然、空間に打てるポイントも、ミーランの比ではない。
身に受ける重力を操り、羽と、微力な風魔法を駆使して得た推進力によって、宙を舞っているエルアナ。
カレットはエルアナの行動パターンを解析し――
――次々に空中に障害物を出現させていった。
ミーランのようなグリモワールを持っていないカレットだが、自らが開発した魔道具《アイテムボックス》を用いて、ミーランのグリモワールと同じように、指定したポイントに中の物資を出現させ――空間に固定している。
「道は塞いだ。飛び出してくるポイントは分かるな?」
「オーライなの。後はタイミングなの……」
ミーランは空中の迷路を抜け出してくるエルアナを捕えるタイミングを伺っている。
とはいえ、エルアナは一見不規則に動いているようにしか見えない。
目で追っているだけでは事を仕損じる可能性が高い――
「『ミーランの領域』!」
そこでミーランは魔法を発動した。
ミーランの魔装|《魔導錬金の白衣》、この白衣から粒子状の魔力を放射状に散布することによって半径十メートル圏内を完全把握できるというのが、『ミーランの領域』という魔法である。
レギオスを発動したミーランは、フレイシアを伴って迷路の出口に陣取る。
「感じるの……」
――とうとうエルアナがミーランの監視網に捕まった。
「いける? ミィ」
「やるしかないの……失敗は家庭崩壊なの」
もう間もなくエルアナが飛び出してくる。
ミーランとフレイシアの緊張は否応なく高まる。
――そして、その時がきた。
「止まるの、エル! 『束縛の枷』!」
ミーランはエルアナの両手両足に鎖で繋がった魔道具の枷をピンポイントで出現させ――拘束した。
しかし手足を縛られただけでは、宙を舞っているエルアナを地面に下ろすことは出来ない。
「ごめんエル……『吹き下ろす風』!」
フレイシアの風魔法だ。
上空から吹き下ろす突風によって、軽くなっているエルアナを地面に叩きつけた。
――アガァァ!?
そして間髪入れずにステリアがエルアナを羽交い締めにし――
「『放電』……」
――アガガガガガガガガガガガガガガガァ!!!!
その身に纏った《雷獣の衣》から放電を起こし、エルアナを痺れさせ――完全に行動力を奪った。
「いまよフレア! 必ずエルを連れ戻しなさい!」
「うん!」
長いようで短い攻防の末、ようやくフレイシアはエルアナに触れた。
「捕まえたよエル……『飽和する者達』……」
フレイシアの特異魔法『調和魔法』。
嘗ては強い煩悩によって引き起こされたトランス状態でのみ使えた《調和の資質》を、フレイシアは遂に己のものにしていた。
そしてこの『飽和する者達』は、触れたものの魔力に瞬時に干渉し、己の魔力と飽和させる。
――たとえ狂人であろうとも。
「そうか……精霊と反発してるんだ……」
嘗ての巻角族は狂人と化した。
共存していたはずの精霊を無理に己に取り込んだことで――その力を暴走させた。
暴走の原因は精霊との拒否反応。
親和性の低い二つの力が反発することで、膨大なエネルギーが生み出されていた。
反発しているが故、己を見失い、いたずらに力を撒き散らすことしか出来なかったのだ。
――もし、精霊と宿主の親和性を高めることが出来れば。
そして今、この場にはそれを成し得ることが出来る人物がいる。
フレイシア・ノーリン・ハート。
人との絆を重んじる彼女は、それを成し得る強い想いと、力がある。
「エル、もう少し待っててね……ふぅ…………『歪みの飽和』」
――フレイシアとエルアナを、優しい光が包み込む。
その優しく暖かい光は、複雑に絡み合ったエルアナと精霊の歪な繋がりを修復していく。
――アガアアァ!? ガアアアァ……アアァ…………。
始めこそ苦しんでいた様子のエルアナだったが、次第に落ち着きを取り戻していった。
刺々しかったエルアナの魔力が飽和し、柔らかみを取り戻した。
修復が完了した後、エルアナは気を失ってしまった。
――後は目をさますのを待つだけだ。
「はぁ……終わったよ…………」
「フレアちゃん! エルは!? エルは大丈夫なんですか?!」
牽制する役割を果たした後、ベアータはただ見守り、祈ることしかできなかった。
一刻も早く結果が知りたかった。
「ベアお姉ちゃん……ふぅ……大丈夫。エルはもう、大丈夫だよ」
「うっ……うぅ……よがっだぁ~……よがった~……うあああぁ~……」
安心して泣きじゃくるベアータに、魔装を解除したステリアとカレットが身を寄せる。
「ふふ、良かったわね、ベアータ」
「うぅぅ……! 良かったね~! ベアちゃ~ん!!」
「ありがどう……ございばしだあぁ~!!」
エルアナの頭を膝に乗せて寝かせているフレイシアには、ミーランが声をかける。
「シア……グレートなの」
「うん、皆のおかげだよ!」
家族全員の命と、その未来を賭けた戦いに勝った一同は、それぞれをねぎらった。
◆◇◆
「うっ……ん~……はぁ……」
――しばらく後、眠っていたエルアナが目を覚ました。
「――あ! みんな~! エルが目を覚ましたよ~ッ!」
「んん~……シア……お姉ちゃん……?」
少しぐずりながらまぶたを開けたエルアナと、フレイシアは目をあわせた。
「――ッ!? エル……その目……」
「……え?」
エルアナは普段の甘えん坊なお姫様にもどっていた、しかし。
――右目だけが、紫色のままになっていた。
「大丈夫なの、エル! まだディアブロが……」
慌てて駆け寄ってきたベアータだったが、エルアナの右目を見て不安がよぎった。
『大丈夫だよマンマ。エルも、僕もね』
――それは知らない声だった。
ここに居る誰も、その声を聞いた覚えはなかった。
そして、その声の主の姿は見えない。
「なに……いまの……どこから……」
そう呟いたのは誰だったのだろうか。
だがそれは一同の同じ意見だった。
『もう……ここだよ、ここ!』
その声は、仰向けに寝転ぶエルアナの腹部に、地面から登ってきた。
――黒い蠍。
それが声の正体であり、親和性が上がり、エレメンターに覚醒したエルアナのエレメントであった。
「あなたが……エルの……?」
『そうだよエル。僕は君のエレメントさ』
先ほどまで反発していたとは思えないほどに、エルアナとエレメントの心は通じている。
「さっきはごめんね……辛かったよね……」
『まあねぇ。でも、もういいさ。……いまはちゃんと、繋がってる』
「うん……うん……」
『それよりエル。僕の名前をつけてよ!』
「う~ん…………モナ……。モナだよ! 君の名前はモナ!」
「モナか……いいね! ありがとうエル! これからよろしくっ!」
「よろしくねっ、モナ!」
――ここに一人、新たなエレメンターが産まれた。
◆◇◆
――賭けには勝った。
ひとまずは安心である。
将来何らかの切っ掛けでエルアナが暴走してしまうことを防ぐために、ベアータはエルアナの恐怖心を煽り、ディアブロの力を暴走させた。
そして、フレイシアの魔法を用いて、暴走したエルアナに、ディアブロの力を制御させたのだ。
それによってエルアナは正気を取り戻し、精霊との繋がりも深くなった。
ひと心地付いて落ち着いた頃。
フレイシアから事情の説明を受けたエルアナは、皆に頭を下げていた。
「ごめんなさい! エルが力を使いこなせなかったから……」
「違うよ! エルのせいじゃないよ! 一番つらかったのはエルだったはずだよ……」
「シアお姉ちゃん……」
「そうよエル……さっきはひどいこと言ってゴメンね……」
「マンマ……」
「あなたがどれだけ二人と一緒に居たいか知っていたのにあんなこと……」
「マンマ……エルは大丈夫だよ、だからそんな顔しないで!」
「エル……!」
「マンマッ!」
エルアナの心を傷つけてしまったベアータは自分のことのように辛かったのだ。
愛する娘を望んで傷つけたいものか。
愛する娘の夢を壊したいものか。
狂人の血を色濃く受け継いでさえいなければ、こんなことはせずに済んだのにと、ベアータは愛娘であるエルアナを抱きしめて、枯れるほどに涙を流していた。
「良かったねエル」
「これで一緒に旅が出来るの」
「シアお姉ちゃん、ミィお姉ちゃん。ず~っと一緒だよ!」
◆◇◆
今から二年後、彼女たちは旅に出る。
未だ森の外を知らない彼女たちは、まだ見ぬ世界に思いを馳せていた。
戦闘シーンは難しいですね、手こずりました……。
ここまで読んで下さってありがとうございました。




