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第X話 理想の女神
女神なんて結局のところ、人気商売だ。
人々の営みの中で、ふとした瞬間に抱く喜怒哀楽。
それぞれ理由は違えど、心を動かさずに生きる人はいない。
人の気持ちが動いた時、その何かを司る女神に信仰が集まる。
より多くの心を動かした女神が、さらに有名になり、もっと多くの人々の心を動かし、世界に活力を与えていく。
こうして今日も世界は周っている。
――スイッチ・オン。
「はいどーも。みんなのいいねとスパチャをひとり占め! 銭ヶ鋤あつめです!」
マイクはバッチリ。画角も完璧。理想の女神の姿そのもの。
「今日もねー、みんなに話したいこといっぱいあるんだー」
喜んだこと。怒ったこと。哀しかったこと。楽しかったこと。ときには共感を得られるように感情を込めて、ときには情景たっぷりに話す。
銭ヶ鋤あつめは完成された女神でなければならない。
今の世界を少しでも永く、続かせられるように。全ての人にとって平和な世の中ではないかもしれない。それでも、今日よりも良い明日があると信じて生きられるように。
――何より、配信で天下をとって、自身がFIREするために。




