08話 強襲! 魔法騎士
両手をにぎにぎして、自分の思考が正常に戻っているいることを確認し、あらためて『敵』を見てみる。
確認できるのは、金髪ロングと、ボブカットの赤髪、ポニーテールの青髪の3人。
色やデザインは微妙に違うが、3人共、魔法少女の衣装の上に鎧を着こんだような恰好。全員背丈ほどもある槍のような物を持ち、右に左に蛇行しながら滑るように近づいてくる。
敵は3人……どうする? 戦う? 素人の俺が? じゃあ、逃げるか? どこへ??
俺が迷っているうちに、周囲では魔法少女達が叫び声を上げながら魔法を発動し始めた。
魔法の発動光が煌めき、様々な色の光線や光の矢、光の斬撃などが鎧装備の3人へと降り注いでいく。なかなかに壮観な光景……。
「えっ……マジか!?」
少なくとも10人以上の魔法少女が放った魔法攻撃は、鎧の3人に当たる前にわずかな光彩を残して全て消失した。
鎧の3人の周囲にバリアのようなものがあるのだろう。鎧の3人は全くの無傷で滑るような移動を続けている。
「全然効いてない……」
魔法攻撃を続ける魔法少女達をしり目に、鎧の連中は3方向へと高速で散開する。赤髪と金髪は左右へと滑るように移動していき、青髪は正面からこちらへ向かってくる。
「どうする、どうする、どうする……」
俺が迷っているうちに、魔法少女達は鎧の連中を追うように3方へ別れて走りだす。俺の周囲の魔法少女達は、正面の鎧の青髪へと向かって突っ込んでいく。
魔法少女たちの攻撃は全て防がれているが、何となく俺の地獄の殺戮者なら何とかなりそうな気がする。かといって絶対何とかなる自信がある訳でもないが……。
「うおおおおぉぉぉぉっ!」
どうするか迷っていると、後方から聞き覚えのある声が響いた。
チラリと後方を確認すると、銀髪縦ロールを振り乱して走ってくるのはエステラだ。
例のクスリでラリっているんだろう。スパイク付きの大きな楯を構えたエステラは、容姿に似合わぬ雄々しい叫び声を上げながら、鎧の青髪へ向かって一直線に向かっている。
「っ!」
ラリったまま突っ込んでも、鎧の青髪の餌食になるだけだ。見捨てることもできず、俺は急いで中和剤を購入。走ってきたエステラの前に走り出る。
「ぶべっ!」
タイミングを見計らって脚を引っかけると、エステラは銀色のツインロールの髪を振り乱し、音を立てて頭から地面にダイブした……。魔力で身体強化している魔法少女なら、このくらいじゃ死にはしない、多分。
「じっとしてろよ……」
うつ伏せに転がったエステラの首筋に中和剤を注射。そのままエステラの襟首を持って、ズルズルと引きずりながら残骸の影へと引きずってくる。
鎧の青髪が魔法少女達の攻撃をかいくぐり、滑るように大剣を持った緑髪の魔法少女へと近づいていく。
「うおぉぉ!」
緑髪の魔法少女は叫び声を上げながら大剣を振り下ろそうとするが、鎧の青髪の光を帯びた槍で胸を一突きされ、あっけなく崩れ落ちる。
「ひでぇな、コリャ……」
威勢だけは良かった大剣の魔法少女は、鎧の青髪の一撃で赤い血しぶきと共に肉片となって飛び散っていく。
だが、ラリっている魔法少女達はまったく怯むことなく、さらに怒りと殺意を滾らせ蛮声を張り上げて鎧の青髪へと突っ込んでいく。
鎧の連中が戦い慣れてのは素人の俺でも分かる。ラリってなくても戦えるの分からないのに、とてもじゃないがラリってて勝てる相手じゃない。
というか、ラリってなくても俺達がかなう相手じゃないんじゃないか? 何人かでも正気に戻ってもらわないと……。
周囲を見渡すが、ラリっているのか遠距離攻撃の魔法を持っていたはずの魔法少女さえ、青髪に向かって蛮声を上げながら突撃していく。
あー、思った通り、クソろくでもない簡単な作業だわ……。
「いや、どうすんだよコレ……」
「んっ……あ、あれっ……? 姐さん? あれっ? オレ何で?」
エステラが頭を振りながらゆっくり起き上がる。とりあえず正気に戻ったようだ。
「大丈夫か? 妙なクスリを打たれたようだ」
「っーーー」
エステラは自分の身体に触れて確かめている。
「ク、クスリっスか? そういえば、さっきは何か凄っげえムカついてたんスけど、今は何ともないっス」
「大丈夫そうだな……おい、アレ……」
瓦礫の影に隠れながら鎧の青髪へと視線を向ける。
鎧の青髪は、蛮声を上げる魔法少女達の魔法攻撃をバリアで弾きながら滑るように高速で移動。少し離れた魔法少女へと槍先を向け、槍先から光の槍を射出した。
「っ!?」
直撃した魔法少女の胸に一撃で大穴が開き、血と臓物をまき散らしながら四散。
「うわぁっ……!」
エステラが声を上げてへたり込む間にも、鎧の青髪は脚を止めることなく滑るように移動しながら攻撃を続ける。
叫び声を上げながら突っ込んでいく魔法少女達を、鎧の青髪は左に右に滑るようにスライドしながらの高速移動で巧みにかわしながら確実に1人ずつ仕留めていく。
「ヤ、ヤバイっスよ、なんスかアレ!? メチャクチャじゃないっスか!」
エステラが身体をガクガクと震えせながら呟く。そうメチャクチャだ。経験というか練度というか、強さが根本的に違うように見える。こりゃ逃げるのが正解だろうが……。
「逃げる? 逃げられるのか?」
あの滑るような移動、俺達が走るより圧倒的に早い。見つかったら遠距離でもあの光の槍みたいなのでやられる。どうする? 考えろ、考えろ!
周囲の状況を確認する。正面に青髪、赤髪と金髪は視界外。
最初の攻撃とそれに続く魔法少女達との戦闘で、周辺一帯は瓦礫の山に変えられているが、その向こうには、少し距離があるがまだ建物が残っている区域がある。
視線が通らない、あの区域まで行ければワンチャン逃げられる……か? 連中が最初に使ったビームみたいなのの直撃を食らわなければ何とかなる……だろう。
「エステラ、アッチに逃げるぞ」
「で、でも、まだエマが……」
ガクガクと震えながらもエマの心配をするエステラは、俺なんかよりずっと良い人間なのかもしれないと頭の隅で思いながら、ハッキリ現実を告げる。
「エマは最初の攻撃でやられた。俺は逃げる。エステラはどうする?」
「お、オレも姐さんと一緒に行くっス」
エステラは少し逡巡した後、真剣な表情で肯いた。今はラリった魔法少女達が突撃して青髪の注意を引いているが、迷ってる時間はないだろう。
「アイツがこっちに来る前に、あの建物が残ってるところへ逃げ込む」
「了解っス」
「その盾は消しとけ、目立つし邪魔だろ」
強化されたこの身体でも、エステラの大きな盾は重そうだし、何より走るのに邪魔になりそうだ。俺は俺で、それなりに重量があり、かさばる地獄の殺戮者を送喚するか迷ったが、戦闘になる可能性を考えそのまま保持。
大盾を送喚したエステラと共に、鎧の青髪の様子を見ながら離脱のタイミングを計る。
「行くぞ!」
ラリった魔法少女達が声を上げて鎧の青髪に突撃するのを確認し、建物が残っている区域へ向けて全力でダッシュ!
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