表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深沙の想い白骸に連ねて往く西遊記!  作者: 小日向星海
第十八章 金角と銀角
315/319

【三百十五 玉面公主、襲来する】

 玉面公主を見た沙悟浄は戦慄した。


 玉面の名を持つだけあり、玉面公主は美しい容姿をしていると思われたが、呪詛返しのためか肌は荒れ、髪の色はくすみ、みすぼらしい様相である。


「呪詛を返されて、妖力を奪い返されそのような身になりながらこちらにくるとは。執念だな」


 扇で口元を隠しながら呟いた太上老君は、玉面公主から立ち上る黒い煙に気づいた。


 それはついこの間崑崙山を恐怖に陥れ、仙人たちの移住を余儀なくさせたものと同じものだと、太上老君をはじめ、玄奘と沙悟浄も気づいた。


「まさか、瘴気か?なぜ……」


 太上老君は眉間に皺を寄せ忌々しげにつぶやいた。


 一方で、沙悟浄は玉面公主の襲来に内心慌てていた。


(お師匠さまを隠さなければ……)


 孫悟空たちはまだ修復から戻っていない。


 もしかしたら呪詛返しで奪われた力を取り戻すために、玉果である玄奘に襲いかかるかもしれない。


 だが玄奘は沙悟浄の不安など考えつかないようで、現れた玉面公主と九麻夫人の対面に固唾を飲んでいる。


 幸いなことに玉面公主は玉果である玄奘には目もくれず、九麻夫人にのみ恨みを込めた鋭い視線を向けている。


 まるでそこから火が噴き出るかのような、苛烈な視線だ。


「ご快復されたようで何よりですわ、干姐姐おねえさま


「おかげさまで。あなたのお花の贈り物のおかげかもしれないわね。ありがとう、妹妹メイメイ


 義姉妹の契りを交わした仲だというのに、二人の言葉のやりとりは冷え切ったものだ。


 沙悟浄はさりげなく玄奘の前に出て、玉面公主の視界に玄奘が入らないようにした。


玉面ぎょくめんおばちゃん、おばちゃんがお母さまを呪っていたなんて、そんなの嘘だよね?!」


「そうだよ!玉面おばちゃんは優しいおばちゃんだもん!美味しいお菓子をいつもくれたし、修行だってつけてくれたもん!」


 金炉精と銀炉精の声に玉面公主はギロリと二人を振り返った。


 枯れかけの柳のような長い髪の間からのぞく瞳からは、彼らに向ける親愛の情などかけらも感じられない。


「……るさい……うるさいうるさい!この玉面公主様を……この美しい九尾であるワタクシを、おばちゃんと呼ぶなアァアァアアア!!」」


 玉面公主はそう叫び、扇を振るった。


 赤と青の炎の絵が描かれているその扇を振るうと、渦巻く二色の炎が出現して二人に襲いかかる。


「わあああっ!」


 金炉精と銀炉精は慌てて散り散りに炎の渦から逃げ惑うが、追尾の機能があるらしいうねる炎は、二人を螺旋状に渦巻きながら追いかけていく。


「以前から気に食わなかったんだ!チビどもめ、このワタクシをおばちゃんなどと……!ワタクシはおばちゃんではないと、何度言えば!!!」


「狐阿、銀炉を頼む!」


「はい、姉様!」


 九麻夫人は金炉精に向かっていた炎を拳で打ち消し、狐阿七大王は銀炉精に迫る炎を剣で両断して消し去った。


「た、たすかったぁ〜」


 逃げ惑っていた金炉精と銀炉精は走り疲れたのか、その場にへたり込んでホッと息をついた。


 金炉精らの無事にホッと胸を撫で下ろし、九麻夫人はキッと玉面公主を睨みつける。


「子どもたちに手をあげることは、いくら妹妹でも許さない!」


 そして両腕に狐火を纏わせ、玉面公主に飛びかかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ