見た目の好み(9歳)
リーシアが城内を歩いていると、フィグとパステルが向かい合って何かを考え込んでいた。
ファルスタッドとリーシアの思いが通じ合ったことによる、恩赦、のようなもので、パステルの封印は先日、ようやく解かれた。
「何してるんです?」
「ぅおわっ!!!」
後ろから声をかけるリーシアに、派手に驚いてのけ反ったのはフィグである。
ファルスタッドが明確な理由なくリーシアを傍に置いたのが気にくわなかった彼ではあるが、ファルスタッドの夢の女……黒狩りの理由となるほどの執着の相手が、リーシアだったと知れば、あっけなくリーシアを受け入れた。
「お前、今、気配したか!?」
「別に隠してませんでしたけど。……アナタ、元護衛なんですよね? クビになってよかったですね」
「喧嘩売ってんのか! あぁ!?」
とはいえ、元々の性格もあって、リーシアに突っかかってくるのは相変わらずだ。
もっとも、ファルスタッドの前で同じことをすると、無言で魔力玉が飛んでくるので、その回数自体は減っている。
「ただの人間の女の気配も掴めないんじゃ、役立たずでは?」
「お前が弱すぎる所為で、存在感ごと薄いんじゃねーの!?」
「分かりました。では、私の気配を掴めるように、アナタの魔力を3分の2程、ハルに封印してもらいますね」
そう告げて、リーシアが歩き出そうとしたのを、フィグが必死で止める……前に、パステルが声をあげた。
「王妃はどう思う?」
現実には、まだ王妃ではないのだが、と、いうか、リーシア的には結婚する気もなく、ずっと恋人扱いでいいのだが、城内の人間は、リーシアのことを王妃と呼ぶ事が多い。
名前を呼ぶと、ファルスタッドが嫉妬するので。
なお、フィグが従前読んでいた『クソガキ』という呼称をつかえば、もれなく死刑判決が下る。
「どう、とは?」
「フィグと賭けてたの。陛下が、王妃の年齢を何歳で止めるか」
「……アナタ発案でしょう」
「よく分かったね」
無邪気にファルスタッドの怒りを買おうとするのが、実に彼女らしい。
「私は12歳で、フィグが17歳。……王妃は?」
「……答える前に、アナタが賭けた年齢の意図を聞いても?」
「えー、納得しちゃったら、真似しない?」
「絶対しません」
パステルの言葉に、リーシアの手が髪に伸びている。
「初潮くれば、もうよくない?」
「……そうですか」
それ以上は、何も言わないことにした。ファルスタッドの前で、同じことを言えばいい。
「王妃はー?」
「……ちなみに、お気づきだと思いますが。膨大な魔力の所為で、私の成長は平均より遅めです」
「え。じゃぁ、20にする」
フィグがリーシアの言葉に反応して、賭け先を変更した。
コイツも殴られればいいと思う。
「もうフィグはいいよ! 王妃は?!」
「……26で」
「で、答え合わせに来たのか?」
ファルスタッドは、自らの前に並んだ3人にため息をついた。
配下2人だけなら、武力制裁を加えたものの。リーシアが混ざっているので、そういうわけにもいかない。
リーシアを呼び寄せて膝へ座らせながら考える。
ちなみに、パステルの賭けた年齢に関しては、あとで彼女を解体して封印することが決定している。
「俺はリーシャの好きな年齢でいいが」
「それじゃぁ、賭けにならないです!」
「……なら、俺も26だ」
「えー!! 贔屓はんたーい!!」
ファルスタッドの言葉に異議を唱えたパステルの頭が弾けた。
どうせ数秒で復活するので、周りの人間は我関せずを貫く。
「そもそも、リーシャほど魔力が高ければ、見た目の変化はカナリ緩やかだ。だったら、26という年齢にこだわりがあるからな」
「まぁ、前世で出会った年齢ですから」
「はぁ!? それじゃぁ、カンニング?!」
叫んだフィグが、魔力の風で壁に叩きつけられた。こちらは死ぬと自動で生き返らないので、加減がしてある。
「リーシャは自分の見た目が成長してもいいのか? 違和感があるだろう?」
「まぁ、ないとは言いませんが……。アナタにつり合いがとれる見た目では居たいので」
「それは、見た目の年齢的が? それとも、美貌が?」
「……暗に、イケメン自慢してます? それ」
ジロリと睨まれて、ファルスタッドは苦笑した。
「どちらにしろ、中身重視なことに変わりはないがな」
「この歪んだ恋愛観で顔面まで求めたら、生涯孤独まっしぐらですからね。それはそれでも、構わないのですが」
フィ「ちなみに作者って何歳だっけ?」
作者「今から、フィグの登場場面、全部削除してきますねー」




