月の都 後編
あれは…女の子?
天高く聳え立つビル群に少女が1人佇んでいる。
少女の手には紅い絵具が付いた筆と紅、蒼、翠の3色パレットが握られている。
しばらくして少女はしなやかに筆を振るい飛沫が次第にビルの外壁を埋め尽くす。
「俺たちは何を見せられているんだ…?」
少女が振り向く。
「あなたには蒼が似合う」
「そっちのあなたも蒼がいい?」
少女は新しい筆を取り出し筆を青く染めていく。
「蒼が示すは月の色」
「常闇穿つは月の色」
蒼の上に蒼を乗せていき、やがて蒼は輝きを増す。
「知識の盟約!月の色!!」
少女は勢いよく俺たちに向かって筆を振るった。
その瞬間深い眠りから覚めたようにパッと目が開く。
「俺たちは…なにを…」
辺りを見渡すとそこはさっきと変わらないいつもの研究室だった。
「なんだ…夢か?っカンラ!大丈夫か!!」
隣には机にうつ伏せになり寝ているカンラがいた。
「ん…んん?にゃにゃきりさんおはよーございますぅ…スヤァ…。」
「無事だったかっておい!二度寝すな!」
「二度寝なんてしてませんよぉ…スヤァ…。」
ちょっとイラっときたのでほっぺたを抓る。
「イテテッ!わっわかりましたって起きますぅ」
カンラも普段通り元気そうでひとまず安心というところか。
「なぁカンラ」
「どうしました?」
「お前も見たのか?」
「べっ別にやましい物なんて見てませんけど!?」
「は?はぁ?!いやそういうことを聞いてるんじゃなくて、あの女の子を見たかどうか!」
「っ先輩も見ました!?あの変な夢!?」
どうやらカンラもあの映像を見たようだ。
「ああ…なんか急に蒼色に染められちまった。」
「私もです!『あなたも蒼がいい?』て聞かれて『どうしようかなー』て考えてたら勝手に蒼色になっちゃいました!!なんてヒドイ!」
いや…そこかよ…!
てことは俺と同じで本人の意思で色が決められたわけじゃないのか…第一『似合う』てどういう決め方なんだよ…
「俺もそんな内容の夢だったから同じ夢を見てたってことで間違いはなさそうだな。」
「変なこと言ってませんでした?『蒼が示すは月の色』とか、先輩全部覚えてます?」
「なんとなくだけど覚えてる気がする
『蒼が示すは月の色』
『常闇穿つは月の色』
とかそんなのだっけ?最後はー」
---「『知識の盟約、月の色』だよ」
突然、耳元で少女が囁くかのような感覚がした。
---「フフフッ面白いもの見ちゃったなーうんうんわかるその気持ち…蒼が似合うそうかーそうなのかー」
何者かに見られている!
焦りと共に自然と恐怖を覚える。
---「焦る気持ち…即ち恐怖ゥ!」
心の底まで見透かされてるってのか。
側にいたカンラもあまりの恐怖に言葉を失う。
こんなことで震えてちゃダメだよな、リーダーらしくドーンと構えてないと!だから決意したんだ!
恐怖を押し殺しなんとか平常心を保った俺は見えない少女に話しかける。
「さっきから誰だ今すぐ出てこい!!」
少しキツめの口調になっちまったがまぁいいだろう。
---「フフフッなるほど蒼が似合うだけあるねーキミ!いいよ?今すぐ行くから待っててよ?」
ただならぬ殺気に満ちた声に身構える。
ーッ!?
今までカンラと2人だけだった空間に謎の気配を感じる。
後ろッ!?
---「ざーんねん!よこだよー」
嘘ッ…いや…!俺は俺を信じるッ!
「とどけ!!」
全身の力が右手を伝う。
バキッ!
---「うがぁッ!…ゼェ…ゼェ……何がどうなってる!?ボクが恐怖を支配した筈だ!!」
俺の右手は謎の声の主に見事ヒットしたらしく目の前には少女?が倒れていた。
「さぁな、よくわかんねぇがお前が言ってるほど俺は弱くねぇってわけだ!」
---「『人間』風情が知った口を……そうだ……フフフッ」
何が様子が変だ、少女はカンラを見つめて不敵な笑みを浮かべる。
---「そうだねーそこのお友達は大事な子かなー?アハハハハ!大事なものは殺して『喰って』奪ってアゲルヨ!!」
クソッこのままじゃカンラが危ない!
奴の手には鋭い刃物が握られている、その光景は一瞬で俺に恐怖を植え付けた。
「サヨナラバイバイ!アハハハハ!!」
どうしていつもいつも…
--『俺なんかより望の方がリーダーらしいし今回の決定は最適解だと思う』
--『望はもっと自分を褒めていい、お前がリーダーだからみんな頑張れるんだ』
--『後輩の二殴甘楽ちゃんだファミリーがまた1人増えた!よかったな望!』
あの頃の記憶…リンネ…俺はもう…
--『次の望のアシスタントは俺じゃなくカンラに任せることにした、独断ですまないがよろしくたのむ』
--『あっあのこんな私ですが望先輩のアシスタントとして精一杯頑張ります!』
--『わっ私はリーダーの決心に従いますよ!』
不思議な感覚だ…リンネ…わかったよ…
カンラを護りたい…あいつは俺の大事な後輩
俺はリーダーとして先輩として希望として今できることをやってやる!!
解き放つッ-------「『Resonance』!!」
ガキィイイイン!!
---「弾かれた?!…それになんだその姿はッ!?」
「………ッ?望…せん…ぱい?」
「おいてめぇいい加減にしろよ…大事な後輩に……手ぇ出すんじゃねーよ!!」
---「大事な後輩ぃ?うんうんますます興味が湧いてきたからぁ?ここでバッドエンドだよぉ!」
これは…またこの力を使えるとはな、だけど今回は前みたいに別の意識があるわけじゃないのか…?
-「いいえ意識は確かに2つ存在しています」
「お前は…あの時の!」
-「お久しぶりですね、先ほどの疑問にお応えします、今回はあなたと私の意識の結びつきが強いためより強力な共鳴を可能としている状況でございます」
-「あなたの意識の80%はあのカンラという後輩を護りたいという決意で固められています。なので私も「あの娘を護りたい」そう決意させていただきました」
-「その意識の合致こそが共鳴の力に直接影響するというお話です」
なるほど理解した…力が不思議と湧き出る感覚はそういう原理だったてわけか
「ちょっといいか?名前は忘れたがお前と俺どっちが先にヤツを倒せるか勝負しねぇか?」
-「存在が一つなのですからそれでは勝敗はつきません、でもあなたの言うヤツはあまり好きではありませんので協力しましょう」
「よしっそうと決まれば!」
「先輩!私のことは…いいです!逃げてください!」
カンラも心配性だなぁ、だけど俺はヤツをぶっ飛ばす!
「カンラ…わりぃけど俺の決意を見守っていてくれ」
-「やはり面白いですねあなたは」
と言ったはいいがこの研究室で前みたいに暴れたらヤバいな…
「おいてめぇ!研究室をめちゃめちゃにしてもらっちゃ困る、少し場所を移さしてもらってもかまわねぇか?」
---「うーん別にいいけどさぁ?外は外で……『ヤバヤバ』になってるよ?」
!?
この部屋は窓一つない完全に外から遮断された空間…悪い予感がする。
研究室を出て外の状況を確認したいところだがカンラを置いてはいけない!
クソッ!詰みゲーかよ!
---「大事な後輩ちゃん置いていけないもんねーアハハアハハハハ!!」
研究室そっちのけで戦うしかないってのか!
みんなすまねぇでもやるしかねぇ!
---「みんなみーんな壊してアゲルヨ!」
-ッ!?
『幽世展開!アニュクスよ敵を穿て!』
キィィィィィィィィン!!!!!!
甲高い音と共に物凄い衝撃が周囲に響き渡り俺の目の前を蒼い光がとてつもないスピードで横切る。
---「なに!?グッ…カハァッ…ああああああああああああああああああああああ!!」
ドカーーーーーーーーン!!!!!!
横切った光があの少女を貫き爆発し、爆炎から1人の女性がこちらへ駆け寄ってくる。
『ヤツらはこんなんじゃヘタれない!さぁ2人とも今のうちにこの中へ!』
と彼女が指差す場所には渦潮のような紺色の渦があった。
彼女の指示に従い俺たちは恐る恐る近づく。
『さぁ早く!君たちが怖いのも重々承知の願いだ!』
彼女の必死さには嘘偽りの欠片も感じなかったが正直こんなもんは見たことねぇし怖ぇーよ!!
「カンラ!せーのでいくぞ!」
「はっはい!」
「「せーーーーーのっ!!」」
ザバーーーーーン!!
『幽世封鎖!よし…2人とも入ったな…さてと!』
---「グヌフフフフフ!アハハハハァ!!ニガシハシナイ!ニガシハシナイゾオオオ!!」
っ!?
先ほどの爆発に巻き込まれたはずの少女が立ち上がり血相を変えて激怒している。
『もう起きたか…これ以上の長居はさすがにまずいね…』
---「コロスコロス!コロシテヤルゥアハハハハハハハハハハァ!!!!!」
ちっ研究室は半壊ってところか…仕方ない【資料】の保護を最優先しよう。
『アニュクス!その者を縛れ!』
四方八方から鎖が放たれる。
ガシャガシャガシャッ!
---「ナ…カラダ…ウゴカナイ!ウゴケ!ウゴケエエエエエエエ!!」
『起点設置…幽世展開!対象物を転送!お前たちの大っ嫌いな大事なものは保護させてもらった!』
---「グヌゥゥウ!!…キサマアアアアア!!オボエテロオオオオオオオ!!!」
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「うーなんだかクラクラする吐きそう…て…ここ…どこだ?さっきまで研究室にいた…ってことはテレポートってやつか!?」
「私もですぅー死んじゃいそう…テレポートなんて二度とごめんです」
俺も吐きそうで辛いがカンラも相当辛そうだ。
それにしても平衡感覚が掴めない…この感覚は乗り物酔いに近い…
あと状況も掴めない…俺たちはどうもテレポート?によって見知らぬ場所にきちまったみたいだ…
『あっははえーとこれはあの有名なテレポートてやつとは少し違うかな!』
声のする方を向くと先ほど助けてくれた彼女の姿がそこにはあった。
サラサラした青い髪に、特徴的な角、民族衣装のような奇抜なファッション…
『正確には目に見えない空間を利用した高速移動っかな?』
目に見えない空間?高速移動?全てが意味不明だがよくわからないサリアの力を使ってる俺も意味不明か…
「種明かしされてもよくわかんねぇ…すまない!ついでにもう一つ聞きたいんだ、あんたについてと此処について」
「ちょっと先輩!初対面の人にあんたってそんな!」
『あーいやそんなの全然構わないよ!こっちだってはなっから敬語じゃなかったわけだし!えーと私の名前?と此処についてだっけ?』
彼女はフレンドリーな人柄らしい、俺と似た点があって少し好感が持てる。
『こほん!ではでは自己紹介といこう!』
『私の名前は[リヴィ・ノーム]魔族の住う此処[月の都ルインサード]の王女よ!!』
筆者激推しのリヴィちゃん登場回でございます!
皆様の応援を糧にこれからも頑張っていきますのでよろしくお願いします!




