夕暮れの高台に風―が吹くとでも思ってたか?
朝、学校に楓と登校した。せざるを得なかった。
登校途中、何故俺のところに来るのかを聞いてみた。
「う~んと・・・」
少し考える素振りを見せると、
「渉君を、食べたい、から・・・?」
やかましいわ。
何となく、誤魔化された気がする。いや、誤魔化したのではなかった。
「渉君の、首筋に・・・興ふ・・・ロマンを感じるの。」
おい、今「興奮」って言いかけただろ。
カニバリズム、その単語を連想させる。食人、共食い・・・でもなんかエロい。
きゃっ!渉君食べられちゃうっ!
という、馬鹿なことを考えてないで教室に向かう。
最悪なことに、楓は俺のクラスと同じ。しかも俺の席の前の席。
教室の扉を開け、教室に入る。
「お!おはよう、渉。今日は俺の股にぶら下がっている相棒が朝からEXCITINGしてWONDERFULな寝起きだったぜ。」
「おはよう、よし、そのお前の主砲はEXCITINGしたからこれでもう使い物にはならないな。」
「ふ、甘い・・・練乳のように甘い!俺の主砲は三連装だ!三発はイケる!いや、寧ろ何回でもイケる!」
「おお、そうかお前の相棒は三連装か。鮫でも二連装なのにな。俺は単装砲の平均だからなぁ。」
「え、何その陸に打ち上げられた魚を見るような目は!俺は哀れなのか!?」
「哀れなり」
「凛道さんまで!?」
俺の悪友 柱 快 が会話に参戦した。
例によってこいつも変態である。名前は漢字二文字でとても先生に優しい名前になっている。
本人曰く、紳士と書いて変態と読むらしい。
このように、突っ込むのがめんどくさくなっている俺がいる。
もう、突っ込むのやめよう。
そんな、朝の過激な会話が繰り広げられた。
もちろん、クラスの皆からはもう気にする素振りさえ見せてもらえない。
なんとも、悲しい学園生活である。
* * *
放課後、俺はいつもの場所に向かう。
因みに、昼休みは朝より激戦になった。
ガーターフェチの俺、首筋フェチの楓、ロリコンの快dこの三人の話はもつれにもつれた。が、終盤戦に差し掛かると「ロリにガーターってよくね?」みたいな話が出てきて、俺と快は謎の同盟を組んだ。
そして、俺&快VS楓になったがやはり話の決着はつかなかった。
「はあーやっぱりここはいいなぁ、ここは」
沈みゆく陽は、金色の海に飲み込まれていく。
吹き抜ける風は体に溜まっている疲れを吹き飛ばすほど、爽快なものであった。
ここは、俺の住む町「陽菜高」市の外れと言ってもそう遠くはない山の展望台。
「ふぅうー・・・」
深く呼吸をし、叫ぶ。
「俺はー平和な学園生活が欲しいぃーーー!!!」
全力で叫ぶ。
俺はこの展望台に通って、稀に叫ぶ。
どうしようもな思いを吐き出すためだ。
幸い、この夕暮れ時には誰もいない。ただし、平日に限る。
「あぁ、すっきりした~」
輝く夕日に叫ぶからより気持ちがいい。
そしてそのまま何もすることなく夕日を眺めていた。
「そろそろ帰るか」
誰にも聞こえないような小声で呟く。
相変わらず、ここの夕日は綺麗だ。
青々とした木々に囲まれ、澄んだ空気の所為なのか。
やりどころのない気持ちが晴れるのは気持ちいい。
そんなこんなで、すっきりした俺は帰り道を歩もうと、振り返ると―
「やや!見ちゃいました!楓さん、見ちゃいましたよ!」
「おい、ストーカー」
「楓です。」
「おい、覗き魔」
「楓です。」
「おい、変態」
「Oh,YES!」
力強く拳を握り、親指を立てる楓。
展望台に設置されたベンチに自然と座っていた。
「何故ここにいる?」
「渉君について来たから?」
「何故、疑問形・・・」
「ここの、景色って綺麗だよね~」
楓は、ベンチから立ち上がりこちらに近づいて来た。
「あぁ、そうだな。というかいつから居たんだ?」
「最初っから~」
「Oh・・・」
俺の叫びは聞かれていたということか。
しっかし、本当に全く気配を感じなかった。
まさか、スネークの娘!?いや待て、スネークさんって結婚できるのか?
「ありがとうね」
「え?」
突然、思いもしない言葉が楓から聞こえた。
「渉君は、いつも私の相手をしてくれる。嫌な顔せず対応してくれる。」
嫌な顔は滅茶苦茶してるが、今は雰囲気を壊すので言わないことにしよう。
「だから、だから・・・ううん、何でもない。本当にありがとね」
「お、おう」
その真の無邪気な笑顔は、黄昏の夕日に照らされ赤みを帯びていた。銀色の髪は風に吹かれ、たなびき儚く可憐であった。
そんな笑顔に、俺は動揺した。率直な感想は可愛い。マジでこれだけなら可愛いのにあの中身だからなあ・・・。
冷静になれ、俺。ここはクールボーイ・アユム、いい感じの雰囲気を出さねば。
「こっちこそ、毎日飽きずに話しかけてくれて、その、ありがと」
「やや、照れてる?ねえねえ、照れてる?」
「やかましいわ! 帰るわ!」
楓はニヤニヤしながら煽ってくる。
何だコイツの煽りは。人がせっかく感謝の意を伝えているというのに。
「あ、バイバイ~」
「あぁ、バイビー」
手を振る楓、それに応えるように俺も手を振る。
俺は展望台の階段を降り始めた。
その帰り道は、いくつもの木々の影が重なりとても暗かった。
「あー最後にー」
「ん?なんだー?」
「首筋フェチは譲らないー!!」」
最後に聞こえた音は何かが落ちてぶつかる音であった。
そう、俺が階段を踏み外したことは言うまでもない。




