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俺はもしかしたら妹が好きかもしれない  作者: 大崎真


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28/28

28、愛され方の種類

「女の人って何を考えてるのかマジで分からん」


向かいに座っている成海に言うと、俺は腕を組んでうなだれた。


あれから、俺と成海はフードコートを出ると、レストラン街の《ポムの樹》に入ったのだった。というか、成海に「ここで食べるよ!」と半強制的に押し込まれたのだった。

お昼をまだ食べていなかった成海は、迷った末にプレミアムビーフシチューオムライスを注文していた。


ちなみに、俺のことが心配で友達とはフードコートで別れたらしい。成海には借りができてしまった。

テーブルに置かれたオムライスにパクつきながら、成海は俺の返答に首を傾げた。


「あんなに怒らせるなんて、一体なにをしたのさ?」

「実は俺のことが好きだったらしい。でも、こっちは友達だと思ってたから。それで……怒らせたらしい」

「お兄ちゃんは鈍感だからなぁ……」

「俺って鈍感か?」

「成海の気持ちにも気付かなかったもん」

「君らが上手に隠しすぎるんだろ。アニメみたいに、手が触れたら真っ赤になって慌てるとか、もうちょっと分かりやすい愛情表現にしてくれないと」

「現実の女子でそんな人あんまりいないよ?」

「こっちはメンタリストじゃないんだからマジで分からんよ。そもそも」


セフレという言葉を瞬時に飲み込み、


「友達でって言ってきたのは向こうからだし」


と、俺は言葉を吐き出した。


「お兄ちゃんに気がないのが分かってたからじゃない?」

「そんなんじゃない。最初は全然、好意はない感じだった。これはマジで自信ある」

「じゃあ、最初は友達だと思ってたけど、だんだん好きになってくれたんでしょ。気付かなかったの?」

「やっぱり気付かなかった……」


俺はうなだれた。


「お兄ちゃんは恋愛感情にうといからなぁ~」


小馬鹿にしてきた成海に、俺は慌てて反撃した。


「いやいやいやいや、違う違う」

「女心に鈍感過ぎるよ」

「い━━や、そんなことはない。マジで違う。心外だ」

「酔っぱらいは酔っぱらってないって言うよねぇ~」

「いいから俺の話を聞けっ」


成海は「なんなのさ~」とオムライスにパクつきながら適当に返してきた。


「言っとくけど、向こうから恋愛はしたくないし友達でって言ってきたんだぞ。それなのに好きになるとか……そんなバカなってなるだろ」

「だって、仕方ないよ。人を好きになるのは理屈じゃないもん」


――その通りだ。

なぜそんな当たり前のことを理解できていなかったのだろう。こうなることも当然、想定できたはずなのに。


「今まで、それらしいことはなかったの?」


そういえば――スケジュールをこっちに合わせてくれるようになった。

上機嫌だったのも、今思えば甘えてくれていたのかもしれない。

恋の話をしてきたこともあった。

アイスを用意してくれていたのも、ついでのように言っていたが、もしかしたら、俺と一緒にいたかったのかもしれない。

今日のこれも、ひょっとしたらデートのつもりで誘っていたのかもしれない。


押し黙った俺に、成海は呟いた。


「……あったんじゃん」

「結果で分かったことだ。そういえば……って符合が合っただけだから。やっぱり当時の自分に戻ったところで気付くのは無理」

「それを世の中では鈍感って言うんだよ」

「じゃあ、もう無理。恋愛、マジでムズすぎる。というか、今回はレアケースだった。俺が鈍感なんじゃない」

「そうかなぁ?」

「この結末は避けようもなかった。俺と同じ状況になったら、世の中の男子、全員、水をぶっかけられてたと思うぞ」

「そうかなぁ? かなり珍しいシーンだと思うけど」

「なんか悪いことしたな……。傷つけるつもりなんかなかったし……。……いやでも、そんなに俺が悪いかなぁ……?」


腕組みをして首を傾げた俺に、成海は頬を膨らませた。


「なにをのんきに首を傾げてんのさ! 危機管理がなってないよ! まともな思考の人だったから水をかけて終わってくれたけど、刺されてたかもしれないんだよ!? はっきり言って、別れ話をしてるようにしか見えなかったよ! あんなにも怒らせるなんて、どう考えても、お兄ちゃんが思わせ振りなことをしてたとしか思えないよ!」


人差し指でビシッと指を指され、俺の顔は一気に劇画タッチに早変わりした。


「なんだと……!?」


女性というのは、なぜ、こうも鋭い奴ばかりなのか。

思わせ振りもなにも、思いっきりやることをやってましたとも、ええ。


悟られないよう、わざとシリアスな顔つきでゆっくりと腕組みをした俺に、成海はあっさり見破ったようで、ぷんすかぷんぷんと頬を膨らませた。


「真面目なキャラのくせに、慣れない女遊びなんかするから、こんな目に遭うんだよ! 反省しろぉー!o(`Д´*)o」


俺はテーブルに両手をついてこうべれた。


「……おっしゃる通りです……。すいませんでした……。慣れない女遊びなんかするもんじゃないですね……」

「変な人だったら、お兄ちゃんの周りに危害を加えてたかもしれないんだよ!? よく考えたら、成海が危ないじゃん! ふざけるなー! 女遊びも大概たいがいにしろー!ι(`ロ´)ノ」

「……おっしゃる通りです……。すいませんでした……。しかし、聞いてください。『好き』とか『愛してる』とか思わせ振りな台詞は一切申しておりません。誤解を与えないよう、きちんと友達の距離は保っておりました」

「お兄ちゃんは友達のつもりでも、向こうはどう考えてもそうじゃなかったでしょーがー!( `Д´)/」

「……おっしゃる通りです……。すいませんでした……。こんなことになるとは、これっぽっちも想像してなかったもんで……」

「想像しろー!ヽ( `Д´)ノ」

「……『北の国から』の菅原文太すがわらぶんた……」


ぼそりと呟いた俺に、成海は更に可愛く、ぷんすかぷんぷん!o(*`ω´*)oと怒ってみせた。


「お兄ちゃんのモテ方は沼らせるみたいな強烈なやつだから危ないよ!」

「……どういうことだ?」

「学園アイドルのキャーキャーみたいな軽い感じの好かれ方じゃなくて、激重の本気な愛され方のやつだよ。いつからだったのさ?」

「初めて会ったのが……二ヶ月くらい前。お小遣いをあげるって言われた時も、ちゃんと断ったよ」

みつがれてるじゃん! たった二ヶ月で自覚なく沼らせるなんて、一番、毒があるタイプの男じゃん!」

「……すいません……」

「なんか、ゆいのこと思い出した」

「ゆい……? 誰……?」

「中学の時の友達のゆい。お兄ちゃんにカノジョがいたから告白を断った友達のことだよ」

「ああ、そんなこともあったなぁ……」

「ゆいに伝えて断ったけど、それでも卒業するまで、ゆいはお兄ちゃんのことをずっと好きだって言ってたよ。なかなか切り替えできない感じだった」

「そうなの?」

「お兄ちゃんの愛され方は中毒性があって怖いよ。学園アイドルのキャーキャーみたいなモテ方は可愛いもんだけど、お兄ちゃんのモテ方はカルト的で危険な感じがする。女性を翻弄するみたいな、狂わせるみたいな毒のあるモテ方してる」

「愛され方にもそんな種類が……俺にそんな見えない力が……自分が恐ろしい……」


俺は自分の両手の平を震わせながら見つめると、


「試しにあの美人のお姉さんを口説いてみよう」


と、冗談のつもりで立ち上がろうとしたら、成海に頭を無理やり押さえ付けられて座らされた。


「そういう人が勘違いして調子に乗って、将来、セクハラで訴えられて、会社をクビになって、慰謝料を払いながら、やっと我に返るんだよ!o(`^´*)」

「成海、人を気分よくさせてから、いきなり一太刀ひとたちでバッサーッ切るのやめよう。お兄ちゃんが可哀想だろ」

「すぐに調子に乗るからじゃん!ι(`ロ´)ノ」

「……すいません……」


またしょんぼりしてみせると、成海は深い溜め息を吐いた。


「ギャップがあるから中毒性のあるモテ方するのかなぁ……?」

「ギャップ? 俺にギャップなんかあるか?」

「お兄ちゃんって……華がある雰囲気じゃなくて静かなオーラがある感じだから、成海、初めて会った時、『ちょっと怖い人だなぁ~』って戸惑ってたんだよね。でも、喋ったら穏やかな人だったから、意外すぎてまた戸惑った。ギャップがあるから中毒性があるのかなぁ?」


静かなオーラと言われ、俺はふと璃子の台詞を思い出した。


「成海、その静かなオーラとは雄の空気というやつか?」

「雄の空気? なにそれ?」

「俺って獰猛な豹みたいな感じか?」


両手の指先を曲げて、がるると襲うような仕草をすると、


「う~ん、雰囲気はそうだけど、成海と喋ってる時はわんころみたい」


予想外な答えに、俺は思わず、ハハッと声を出して笑ってしまった。


「確かに、俺は成海の犬みたいだな。成海には勝てないもんな」

「笑顔もわんころみたい」

「そうか?」

「成海、怒ってたのに……。なんでも許しちゃう気持ちになっちゃうなぁ……。お兄ちゃんの笑顔はずるいなぁ……」


俺の顔を見て、しみじみとそう言った成海は、ふてくされた顔をしていても、しょんぼりしているように見えた。


「お兄ちゃんから見たら、成海はまだまだ子供だよね……」


そう呟くと、深い溜め息を吐いている。


「お兄ちゃんは大人で……いつまでも成海の手の届かない人だなぁ……」


言いながら、ますますしょんぼりし出した成海に、俺はなぜか、急にめちゃくちゃ罪悪感が湧いてきた。


成海は妹で、別にカノジョでもなんでもないし、浮気をしたわけでもないのに、悲しい思いをさせてしまったなぁ……と、とんでもなく申し訳ない気持ちが湧いてきた。柄にもなく、好奇心でやんちゃなことはするもんじゃないなぁと素直に深く反省した。


「そんなことはないよ。成海はもう高一なんだし、子供というより女性って感じだよ」


すると、目に見えて、成海の顔は一気にぱぁっと明るくなった。


「ほんとっ!?」

「うん、さすがに子供には見えないよ」

「ほんとっ!?」

「うん」


すると、成海は嬉しそうにキラキラおめめで訴えかけてきた。


「じゃあ、成海はどうっ?」

「え?」

「成海、またアタックしてもいい?」

「ええっ?」

「もう子供だと思ってないんでしょ? じゃあ、成海でも抱けるってことだよね?」

「ええっ!? いや、ちょっと待って」

「いつまで待てばいいの?」

「……う~ん……」

「なんでダメなの? 成海、女性って感じなんでしょ? もう大丈夫じゃない? 成海たち、試しに付き合ってみようよっ、お兄ちゃん!」

「……う~ん……」


俺は腕組みをして頭を垂れた。

読んでくださって、ありがとうございました。

次回に続きます。

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