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俺はもしかしたら妹が好きかもしれない  作者: 大崎真


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25/28

25、見えないものを身体で感じる

二度目にやってきた璃子のマンションを見て、俺はその名称とは明らかに異なる造りだったことに改めて気付いた。


最初に来た時は余裕がなかったので分からなかったが、建物は二階建てで、備え付けの階段は鉄製のため、歩く度にカンカンと辺りに冷たく音が響いた。

室内は水道管とガス管が剥き出しだ。どう考えても、昭和に建てられたものに違いない。


防音設備はほぼないに等しいだろう。隣に声が筒抜けだったことを想像すると、もう手遅れだと分かってはいるが、激しいセックスをしてしまったことを今更ながらに後悔した。


「ここってさ、マンションって言ってるけど、どう考えてもアパート……」

「マンションです」

「…………」

「住んでる私がマンションって言ったらマンションなんです。分かりましたか?」

「……はい、ここはマンションです」


観念して復唱したら、璃子は爆笑した。



その日の夜、俺はわざとゆっくり動くセックスをした。璃子に声を出させないよう、隣に気を遣って静かにやった。声を出そうとすると止まり、またゆっくり動くを繰り返した。


すると、璃子は言った。激しいセックスとは違った、小爆発のような深い快感が何度も繰り返し襲ってきた、と。俺も、いつもとは違い、穏やかな快感が長く深く続いた感じだった。


思ったことは、俺は今まで激しいセックスを濃厚なセックスだと勘違いしていたようだ。激しいセックスはあくまで激しいセックスだった。

濃厚なセックスとは、お互いを、ゆっくりと長く深く感じるもののような気がした。


愛にも様々なカタチがあると聞く。激しい情熱的なものから、穏やかで深いものまで。知らなかったが、セックスにも様々なカタチがあるらしい。


人を愛するということはまだ分からないが、セックスについては、ほんの少しだけ分かったような気がする。

セックスとは、ただの子孫繁栄のための作業ではないようだ。俺が変なのかもしれないが、エロいものだから、恥ずかしいものであり、やっていることを隠さなければならないという感覚を持つものでもない気がする。


今はただの性欲処理だが、好きな人とするセックスなら、神々しいというか、自然界にとって最も自然で尊い行いのような気がする。

そして、愛という見えないそれを、実際に身体で感じられるもののような気がした。






璃子とセフレになって数日が過ぎた。

彼女は自由奔放な性格だった。


『今週のシフトは目一杯に入れたから無理ー』と返信がきたかと思えば、『飲み会やめることにしたから、今日ならいけるけどー』とか、急な予定変更はしょっちゅうだった。


最初は合わせようと思ったが、三回目の予定変更からはだんだん億劫になってきて、この人に合わせるのは俺には無理だと悟った。


俺が大丈夫な日の朝に『今日は?』と送って、璃子が今日の予定をよこしてきて、それを見て、俺が『無理』か『いける』の一言だけを送るやり取りになった。

LINEを見たら連絡事項だけのビジネスライクなのに、やってることはそうではない。やり取りとやっていることのチグハグさが、なんとも不思議だった。


当然ながら、週三で会うこともあれば、突然、十日間、会わないこともあった。

親しくなったかと思えば、すぐにするりとすり抜けていく。どこか掴み所のない女性だった。


かといって、会わない間を淋しいと思ったことは一度もない。璃子に対して、俺は恋愛感情はゼロだった。

お互いに干渉し合わない関係は、俺にはかなり向いていた。人付き合いが苦手な俺には、こういう関係は気楽だった。


俺はどこまでも人を愛するということを分かっていなかった。恋愛の良さも分かっていなかった。

正直、自分の感情を振り回される恋愛なんて疲れるだけなんじゃないかと思い始めた。マイペースな自分には、恋愛とは煩わしいもののような気がした。


俺にとって恋愛とは、メリットがあってもデメリットを考えると、やる気が削がれるものだった。

自分よりも相手を思いやることや、それをすることによって幸福感が得られることを、俺は妹以外の女性に未だ感じられずにいた。






「初めて会った夜みたいに乱暴にしないの?」


ある日の夕方のことだった。

いつものように布団にくるまったまま聞いてきた璃子に、俺は驚いた。着ようとしていた長袖シャツの手が思わず止まった。


「あんな自分勝手なエッチがいいのか? 愛情の欠片かけらもなかったのに」

「いいよー」

「……マジで? なんで?」

「気を遣ってくれるのも嬉しいんだけど、自分勝手で、乱暴で、雑なくらいが私にはそそるんですー」

「ひぇ~~、本物のドMだな。でも、やらない。俺もやりたいところだけど、やらない。好きでゆっくりやってたんじゃないよ。隣に声が聞こえるからやってなかったんだよ。璃子じゃなくて、隣に気を遣ってたんだよ」

「我慢するから」


掛け布団を着物のように羽織って隠し、ベッドの端に座る俺と向かい合わせになると、璃子はしっかりと俺の目を見て訴えかけてきた。どうやら、かなりやりたいらしい。


「そんなに? 我慢できる?」

「できる!」

「あそ。じゃあ、遠慮なく次回からはそれで。後からやっぱり無理とか言ってきても知らん」

「はい!」


満面の笑みを称える璃子に、俺は思わず笑ってしまった。


「変な男に遊ばれそう」

「もう遊ばれてる」


俺を指差してきた璃子に、「確かに」と俺は激しく同意した。






次に逢った日の夜だった。

あんなことを言っていたのに、それでも璃子は声を出した。


「約束しただろ。我慢しろよ」


俺がたしなめると、最初のうちこそ(こら)えていたが、やっぱりすぐに声をあげた。

わざと止まって焦らそうかと思ったが、もう俺自身が止まれなかった。仕方なく、俺は璃子の口を手で塞いで黙らせた。

しばらくして、璃子は意外なことを口にした。


「あのさ、ちゃんと我慢してたんだけど、我慢してたら余計に深く感じちゃって、どうしても我慢できなくなっちゃったんだよねー」

「……そうなの?」

「出さない方が感じるもんだから、もうお手上げって感じで仕方なかった」

「そうだったのか。知らなかった……。じゃあ、仕方ないか……」


エッチってまだまだ奥深いなぁと俺はしみじみ思った。


「あのさ、私はゆっくりなのも激しいのも同じくらい好きだなー。あ、そうそう、そういえば、あの時になんであの体勢にしたの? 私に押し倒されてされるのが嫌だったの? だから、またすぐ逆になったの?」

「……今日は我慢できない感じだったから、これはヤバいと思って」

「あ、そうなんだー。じゃあさー、なんであの時はー」


ねぇねぇといろいろ聞かれ、


(なんか、エッチの後にこんなことを言われたら、将棋の感想戦みたいだなぁ……)


と、俺は思った。






璃子と出会って二ヶ月が過ぎた。

昼間に待ち合わせたことは、ただの一度もなかった。土日はフルで入っているらしく、いつも夕方に会うくらいだった。


最初の頃は、俺が『無理』と送るとそのまま既読で終わっていたが、最近では、『早上がりにできたから19時に終わるよー』と来るので『じゃあ、いける』と返すと、『了解!』のスタンプが返ってくるようになった。


最初は気ままな猫みたいだったのが、だんだんわんころみたいになってきたので面白い人だなぁと思ってしまった。






アラームの音で目を覚ました。まだ朝(もや)が立ち込める早朝は、窓の外も薄暗がりだった。

隣の璃子を起こさないように、そっとベッドから出ると、俺は寝ぼけ眼で欠伸あくびをしながら、洗面所に向かった。


顔を洗うと、小さなリビングテーブルにパソコンを置いて立ち上げる。

ベッドに背中を向けて、急いで課題をしていたら、突然、背後から声がした。


「なにしてるの?」

「うぉっ、ビビった~」

「ふふっ」


布団にくるまったまま、璃子は楽しそうに笑った。


「起こした?」

「ううん、起きてた。勉強してる背中がカッコいいなぁ~って思って、さっきから見てた」

「全然、気付かなかったわ」


画面を見ながら答えた俺に、突然、璃子は素っ裸のまま後ろから抱きついてきた。


「もう~、邪魔すんな。提出期限、今日までなんだよ」

「ふふっ、この状態でもできるでしょ?」

「できるけど重たい~、やりづらい~」

「ふふっ」

「生きづらい~」

「ふふふっ」


要望に応じて乱暴なエッチを昨夜もしたからか、璃子はかなり上機嫌だった。

読んでくださって、ありがとうございました。

遅くなって、すいませんでした。

次回に続きます。

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