第60話 紹介マイスター
「ここがわたしの新しい職場よ」
レイカさんはダンジョン前申請所に隣接された探索用武具受け渡し場――
装備調整室こと通称【工房】へと俺達を招く。
「おお……」
「すごい……」
ミズキとコノハ二人が驚くのも無理はない。
所変われば品変わる。
古今東西、重量感溢れる様々な武具が所狭しと並べられていたアオバダンジョンとは違い、ここにあるのはディスプレイ表示された様々なタッチモニターのみ。
モニターにある端末で操作し検索、オーダーできるシステムの様だ。
現物を見て装備するタイプなのではなく、あくまで注文後、奥の更衣室で装備の微調整を行うタイプなのだろう。
ファンタジーの武器屋チックなアオバダンジョンとは違い、色々な面で洗練されており非常にスタイリッシュな感じだ。
やはり探索者が多いところは行政も金を掛けるのだろう。
アオバダンジョンの平均探索者が300人前後なのに対し、確かここタガジョウダンジョンの探索者は1000人を超える。
単純に考えて工房側に掛かる負担は三倍、実際の手間はそれ以上な筈。
武具を展示するのに掛かる労力を考えればこっちの方が効率的だ。
あと……レイカさんの前ではあまり大きな声では言えないが――
ここら辺は工房主である室長の趣味の差もある。
現にこちらの店員さんはゴスロリじゃなく職人気質なツナギ姿の男性が多かった。
……何故か胸元をはだけているのが少し気にかかるが。
親父から預かった樫名刀『吹雪』と『華霞』があるので俺に武器は必要ない。
なのに武具にワクワクしてしまうのは哀しい男のサガってやつだろう。
おのぼりさんよろしく俺は周囲を見渡す。
見慣れない数々の武具のディスプレイ。
その中には驚くべきことに銃器の姿もあった。
今の二ホンでは探索業に銃を使うのは違法ではない。
免許制になるがきちんとした講習を受ければ誰でも扱える。
かつての俺の仲間も二丁拳銃を操るガンナー型戦士だった。
銃器の弱点は数多いが……一番はご想像通り弾切れ。
長期探索では個人が所有する銃弾はあっという間に浪費してしまう。
更に挙げれば攻撃に掛かるコストが割高なのと近接戦闘に弱いという事。
スタンピードの時の様に突進してくる敵に対する制圧力は脆弱というあたりか。
しかしそれらの問題を除けば――
遠距離から魔法を凌駕する攻撃を一方的に行えるのだ。
弱い筈がない。
試し打ちで性に合わなかったので俺は止めたが、二人のサブウェポンとして銃器はありなのかもしれない。
そんな事を考えてると、入室した俺達を見て奥から誰かが駆け足で来た。
身長は178の俺を大幅に超える190近く。
ピチピチのタキシード姿で、はだけたシャツからは鍛えられた鋼の肉体がちらほら垣間見える。
野獣の様な顔つきだが、濃いアイシャドウとルージュが印象的だ。
さらに動くたびにくねくねする謎の動き。
もしかしなくてもこの人……
「あらん。
見慣れないけど貴女のお友達なのかしら、レイカちゃん」
やっぱりそっち(オネエ)系ですかい!
それにしても魔女を相手にちゃん付けとは。
顔色をさっと蒼褪める俺とは違い、レイカさんは冷静に応じる。
「ええ――この三人が例の攻略組です。
今日からこちらに潜っていただけるそうで」
――あれ?
レイカさんが爆発しない?
女だからと舐められるのが誰よりも嫌いなのに……
というか、あの魔女が敬語?
ならこの人はレイカさんよりも強いか、あるいは――
「初めましてェ、皆さん。
アタシはこのタガジョウダンジョン工房の室長、工藤アツシ。
新しくここへ赴任してきたレイカちゃんの上司をしてるわん。
有望な新人である貴方達だったら――
気安くアーちゃん、と呼んでも構わないわよ?
っていうか呼んでちょうだい♪」
やはりレイカさんの上司でございましたか。
それにしても――また濃いキャラの人が出てきたな。
工房関連者はあれですかね。
性格破綻者しかなれないとか、そういう規約でもあるんですか?
二人を見た後、何故か熱い情熱的な眼差しで見つめてくる工藤さんの視線に――
思わずお尻がむず痒くなり無意識に手で隠す俺。
っていうか真剣に貞操の危機を感じるぞ、くそ(涙)




