第18話 4年後
ボロボロで天井も所々穴が空いている廃墟にレオナは立っていた。
周りには死人が2人、だがレオナは武器を構えていなかった。
「ミサ……頼む」
そう言って目をつぶるレオナ、その瞬間銃声が2発鳴り響き死人の呻き声は消えた。
ジルスやハリスが死んだマリストネの任務から4年、レオナは17になり国を出ていた。
容姿は相も変わらず女の様、身長もあまり伸びず160手前と悲しいものだった。
国を出た……この表現は少し間違っているかもしれない、厳密に言うと国は崩壊した……と言った方が正しかった。
終わりはあまりにも呆気なく国に死人が侵入したと言うありきたりな理由だった。
幸いにもその日レオナはミサと共に任務中、あの悲劇の中には居なかったが帰る所を失った。
元より家族など居なかったレオナに取っては国などどうでも良かったがミサは両親を失いかなりその事を引きずっていた。
それから二年前経った今はマシになったが当時はかなり荒れていた。
死人を見つけるや否や銃を乱射する、それで何度死にかけた事か……だが今となってはどうでも良かった、済んだ事なのだから。
現在は村を転々としながら食料を補給しマリストネの国王を殺した3人を探していた。
ライナス、ディルス……そしてセレナの3人を。
この4年で掴んだヒントは各国の政治に耐えられなくなった市民が団結し結成された反乱軍のメンバーと言う事だけ、それ以外は全く手掛かり無しだった。
「この辺りはまだ危険だな、ミサ、行くぞ」
「分かった」
銃を構えて廃墟からでると予想通り銃声を聞いた死人が数体集まっていた。
「あまり銃を使うな、近接で殺るぞ」
そう言って刃渡り数10センチはあるアーミーナイフを取り出すレオナ、刀はかなり昔に折れてしまっていた。
少しリーチは短くなったがナイフはナイフで動きやすい、大して支障は無かった。
慣れた手つきで近くに居た数体を倒して通り道を作るとミサを先に行かせその後レオナも一気に駆け抜けた。
森へと逃げ込み少し開けた場所に腰を下ろす……相変わらずサバイバルな世界だった。
「それにしても中々手掛かりが掴めないな……」
「隊長……じゃなくてレオナは何でそこまで反乱軍に執着するの?」
不思議そうに首を傾げるミサ、詳しい事を未だに話してないだけにミサからして見れば目的の分からない途方も無い旅と変わらなかった。
「そろそろ教えても良いか……」
よく良く考えれば隠す必要も無い、それに1人で抱えるにはあまりにも事が大きすぎた。
「俺の昔の仲間、セレナって奴が居るんだがそいつが居る可能性があるんだよ」
「反乱軍に?でもその子を見つけてどうするの?」
痛い所を突かれた、そこの部分を全くレオナは考えて居なかった。
ただひとつセレナと再開する、その目標だけの為に今まで手掛かりを探していた……その後の事は全く考えても居なかった。
「その顔は考えて居ない」
「ご名答、全くの無計画ですよ、まあ出会ってから考えるのも悪くないだろ?」
「私はレオナに着いてく、決めるのはレオナ」
そう言ってカバンから食料を取り出して渡して来るミサ、それを受け取りレオナは笑いかけた。
「俺の為に悪いな」
「いいよ、別に行く宛もないし」
パサパサしたパンを頬張りながら独り言の声量で言ったミサの言葉をレオナは聞き流した。
「少し周囲の安全を確認してくる」
そう言ってレオナは立ち上がるとナイフを取り出し森の中へと入っていった。
日は徐々に沈んでいる、トラップでも仕掛けない限り夜を越すのは難しそうだった。
風が吹くと死人の腐った匂いが漂う、それに加え微かに聞こえる呻き声、やはり森には入るべきでは無かった。
だが今更後悔してももう手遅れ、レオナは近くにあった大小様々な枝を数本集めると足早に元いた場所に戻った。
「急いでどうかしたのレオナ?」
「いや、この辺り予想以上に死人が多そうだからな」
首を傾げるミサに息を少し切らしながらレオナは言った。
カバンからロープと空き缶を取り出し黙々と木に括りつけて行く、ミサはそれをただ眺めているだけだった。
出来れば手伝って欲しかったがミサは想像を絶する程の不器用、簡単な作業もかなり時間がかかる為にそれも無理な話だった。
ある程度トラップを仕掛け終わりミサを見ると偶然なのかずっと見ていたのか目が合った。
ミサはぎこちない笑顔で笑いかけてくる、レオナはそれを見てミサから見えない角度で笑った。
「焚き火をしたいが奴ら光でも寄ってくるからな……」
「うん、冬とかだったら死んでたね」
「だな、それより先に寝ていいぞ、俺は先に見張る」
レオナがそう言うとミサは頷いてすぐ様その場に横になった。
少しは遠慮と言うものを知って欲しいものだ……だがそんなミサを見ているのが面白かった。
銃を肩に担いで木に凭れ掛かりながら上を見上げる、こんな世界だと言うのにも関わらず星は綺麗だった。
異世界に来る前の世界でも星は綺麗だったがこの世界の星は比べ物にならない程に綺麗だった。
星を見ると死人のことも少し忘れる事が出来る貴重な時間、今日は雲もなく青黒い空に光る星がよく映えていた。
「平穏はいつ訪れるんだろうな……」
ミサに語りかける様に呟くレオナ、4年間外で生き抜いたが結局残ったのはレオナとミサの2人だけだった。
4年間で出会った仲間はおよそ20人程、だが皆死んだ。
中には子供も居た、だが守れなかった……自分の命だけで精一杯だった。
こんなにも死人が蔓延る世界で生きるのが厳しいとは思っても居なかった、映画で見ていた時は頭で勝手に想像していたが実際はそんな生温いものでは無い、本当に地獄に居るかの様だった。
少し気を緩めてたその瞬間ロープに死人が引っかかったのかカラカラと缶が当たり合う音が聞こえた。
「ゆっくり休ませろよ……」
このまま放置していれば逆に死人を呼び寄せる可能性がある、レオナはすぐさま立ち上がりナイフを構えると音がした方を見た。
薄暗くて良く見えないがずっと音がなっていると言うことは少なからず人間では無いはず、人ならば敵、どちらにせよ殺す事に間違いは無かった。
気配を悟られない様にロープの外側からゆっくりと近づきナイフを構える、標的を見つけると一気に距離を詰めナイフを頭目掛けて突き刺した。
ナイフは『ガッ』と言う音を立てて弾かれた。
何が起こったのか理解出来なかった、確かに頭を刺した筈、だがナイフは弾かれた。
呻き声からして死人なのは間違いない、レオナは目を凝らし良く死人の姿を確認すると死人は軍服を着てヘルメットを被り肩から銃を掛けていた。
「これは思わぬプレゼントだな」
まさか銃を運んできてくれるとは思いもしなかった。
死人の世界で生き残るのに必要な物資、それは薬、食料、武器。
武器なら何でもいいと言う訳でもない、確かに銃は音が出る上に弾数が限られている……だが対人では抑止力となり死人も複数体倒せる、この世界では必要不可欠な存在だった。
ナイフを構え直し今度はヘルメットに覆われていない部分を突き刺す、今度は深く頭に突き刺さり死人はその場に倒れた。
「慣れって怖いもんだな……」
倒れてもう動かない死人の死体を見ながらボソッと呟く、倒れた際に外れたヘルメットの裏には死人の頭の皮膚がベットリとついている、常人なら吐いている所だろう。
だがレオナはなんとも思わない、ただ殺すべき者を殺した、それしか思っていなかった。
「ミサ、銃が手に入ったぞ」
死人から銃を奪い取るとミサに見える様掲げレオナは罠の内側へと入って行った。




