第17話 忘れてはいけない思い
「スゲェ不幸だな俺達……」
薄暗い裏道で座ったまま笑い、壁にもたれ掛かり言うハリス、足が瓦礫に挟まれていた。
「待ってろ、絶対に退かす」
不幸中の幸いと言うべきか砲弾の音が気を引いてくれていて周りには今の所死人は居なかった。
だが来る可能性は高い……急ぐ必要があった。
ミサに辺りの警戒を頼み必死に瓦礫を動かそうとレオナは頑張る、しかし瓦礫は微動だにしなかった。
稀に微妙に動くがそれもハリスに苦痛を与えているだけだった。
「俺を捨ててけ」
「悪いがそれは出来ない」
ハリスの言葉に即答する、これ以上仲間は失いたくなかった。
例え1、2週間の短い付き合いでも仲間は仲間、ましてや自分は隊長、部下を見殺しにはできなかった。
近くに落ちていた木を隙間に挟みテコの原理で持ち上げようとする、しかし全体重を掛けようがびくともしなかった。
木すら折れないほど軽いレオナの体重……13歳の身体をここまで恨んだのは初めてだった。
「おい、置いてけって、銃はあるし……上手く行けば追い掛けれるかもしれないだろ?」
そうやって笑顔を見せるハリス、追いつける訳が無かった。
万が一抜けたとしても足は折れている、幾ら数多の任務で生き延びたハリスと言えど足の自由が効かなければ生き残れる筈も無かった。
「隊長!死人多数接近、捌ききれる数じゃないです!」
あまり感情の起伏が激しくないミサが叫ぶようにレオナに死人の情報を伝える、気持ちは焦る一方だった。
どうすれば助けれる……どうすれば皆で帰れるのか……幾ら考えようが作戦は無かった。
「レオナ、お前はその年齢でよく頑張った方だ、アイツだけでも無事に国へと帰してやれ」
死人の居る方を向きほとんど諦めた様な表情で言うハリス、レオナは何も言わなかった。
俯いてずっと黙っているレオナ、ミサが死人を撃つ銃声だけが聞こえてきた。
「はやく行け……」
ハリスの言葉をレオナは聞きたくなかった、無視をしてその場に立ち尽くしたままだった。
「早く行けって……」
「だが……」
「早く行けって言ってんだ!ミサまで殺す気か!!」
めいいっぱいレオナに怒鳴るハリス、気が付けばミサが近くまで後退してきて居た。
「隊長無理です、逃げましょう!」
「っ……すまないハリス……」
すぐさま荷物を持つレオナ、マガジンを二本ハリスの傍に置くと急いで走った。
「ありがとな……」
ハリスの声が微かに聞こえ、その後銃声が鳴り響く、レオナは後ろを見れなかった……正確にはみたくなかった。
そのままミサとレオナは特にこれと言った危険も無く外に出れた、そしてそこにはアランドールと敵国の筈のクリストラの兵士達が無数に居た。
絶えず砲弾を撃ち続ける兵士達、その中にアルトラ大佐が居るのが見えた。
アルトラもレオナに気づき近づいてくる、怒りしか無かった。
「良く生きてたな」
そう言い近づくアルトラ、その瞬間レオナは背伸びをしながら胸ぐらをつかんだ。
「何故撃った!!!何故砲弾を撃ったんだ!!!」
突然の事に驚く様子もないアルトラ、周りの兵士がレオナを引きはがすとアルトラは掴まれた部分を直しながら言った。
「戦争を終わらす為だ、それには多少の犠牲は必要、君の隊の2人もそのうちに入ってしまったと言うだけの事だ」
悪びれる様子もなく淡々と言い続けるアルトラ、苛立ちを通り越してもうどうでも良くなっていた。
兵士達は砲弾を打つ手を辞め撤退の準備をしている、レオナはボロボロのマリストネ城壁を見つめていた。
「隊長……私が能力を使えたら……」
泣きそうな声で申し訳なさそうに言ってくるミサ、確かにそうだがそれは仕方の無いことだった。
「自分を責めるな、誰も悪くない」
今思えばジルスとハリスは身を持って成長させてくれたのかも知れない、この先幾多の任務を乗り越えないといけない、その度に仲間が死ぬかもしれない、毎回ここまで悲しんでいたら身が持たないだろう。
だからと言って仲間の事を忘れてはいけない……レオナはそっと首に付けていたタグの裏に傷を2つ付けた。




