第15話 守れなかった後悔
「食えるもの何もねぇな……」
死人の体液が付いた果物や魚、どの道この炎天下では魚や果物は腐っているがそれを死人の体液でより一層ダメにしていた。
「隊長、やはり民家で集める方が効率良いかと」
先程からジルスはそう言うが民家に行けば生存者に出会う可能性があった、武器がある状態なら生存者を引き入れるのだが今は自分の身も守れるか怪しい状態、他人の事など構ってられなかった。
周りに気を配りながら食べれる果物が無いかを探すがやはりどれも暑さと死人のせいで駄目になっている……どうやら民家に探しに行く必要があった。
「ジルス、民家を捜索するぞ」
「やっとその気になってくれましたか隊長」
「この際だ……仕方ない」
そう言い銃を構えると近くに居た死人を殴り倒しなるべく人の居なさそうな民家を探した。
それにしても暑いーーーー
35度は軽く超えてるだろう、汗が目に入り前が見えないと言うことが度々起きてかなり危なかった。
暑さのせいで大量も消耗される、この分だとそのうち熱中症になる様な気がしていた。
「隊長、ここなどはどうでしょうか」
そう言ってアパートの様な建物の前で立ち止まるジルス、正直言ってやばい匂いしかし無かった。
海外などでよく見受けられるパターンの中に階段や部屋のドアがあるタイプのアパート、こう言う場所には決まって死人がうじゃうじゃ居ると言うものだった。
しかも石造りと来た、逃げる時に壁を壊せない、あまり入りたくはないがもうすぐ日没、迷っている時間は無かった。
扉を開けて中に入るとレオナは辺りを確認した。
「ジルス、時間もない、手分けして探そう」
「しかし危険では……」
そう言うジルスの意見を押切りレオナは1人で2階へと上がった、時間の事も考えたらそれが最善とレオナは思い込んでいた。
扉を叩き中で反応があれば入らない、無ければ入っては食料を探すの繰り返し、全六部屋中残り二部屋を残して集まった食材は缶詰2つだけだった。
「まぁこれも仕方ないか……」
そう言い扉をノックする、1分ほど耳を澄ましてその場に待機するが何の反応も無い……扉を開けて部屋に入った。
部屋の中は他の部屋とは違い全く荒れていない、不自然だった。
留守にしていたのであれば鍵は掛かっているはず、つまり誰か居る筈だった。
銃ではなくナイフを構え慎重に一室、一室を開けていく、そして最後の一部屋を開けようとした時物音が聞こえた。
ナイフの柄の部分で扉をノックする、すると凄い勢いで死人が扉を突き破ってきた。
「やばい、まずい!」
ぶつかられた反動でナイフを落とし死人に抑え込まれる、なんとか噛まれないようにガードしているが力が物凄く強かった。
馬乗り状態から脱しようと踠くが死人の常人以上の体重に加え13歳と言う非力なレオナの力、踠くだけ無駄だった。
ナイフに届きそうで届かない、そうこうしているうちに死人の顔がすぐ側まで来ていた。
大声で叫びジルスを呼ぶかーーー
しかしそれでは他の死人が来てしまう可能性がある……どうにかして自力で脱するしかなかった。
手にナイフの感覚があり取れたと思った瞬間、そのナイフは非常にも死人の足で飛ばされた、そしてその瞬間レオナは諦めかけた。
その時ハリスの言葉と自分が隊長になった時誓った事を思い出した。
『無傷で帰って来いよ』ハリスのその言葉と『絶対に誰も死なさない』レオナの誓い、自分が死んでしまっては意味が無かった。
それにまだこの世界で確かめたい事がいっぱいある……こんな所で死んでいる訳には行かなかった。
「死んでたまるかよぉぉぉ!!」
雄叫びのような声を上げて思い切り死人を蹴りあげるレオナ、すると死人は元々バランスの悪かったレオナの上で蹴られた事によりバランスを崩してその場に倒れた。
僅かなチャンスをレオナは逃さなかった、直ぐに態勢を死人は立て直したがレオナはそれ以上の速さで死人の頭を突き刺した。
「なんとか……だな」
ナイフを抜いて部屋にあったベットに腰掛けるレオナ、ふと紙が床に落ちているのに気がついた。
紙には『どうか私に慈悲を』とだけ書かれていた。
そうかーーーー
死人は元は人間、春樹の頃ゾンビ映画やら色々と見ていてた時はまだ分かっていたがこの世界に来てレオナになってからと言うもの死人は別の生き物と考えていた。
「どうか彼に慈悲を……」
そう言い祈りを捧げるとレオナは台所へと行き食料を集めた。
大量収穫、食料が缶詰5個に水が四本、かなりの大収穫だった。
それらをカバンに詰めながら満足気な表情をし部屋の外に出る、その時通路に居た者を見てレオナの表情が一変した。
所々から血を流しているジルス、破れた服から見える傷は噛み傷だった。
「ジ、ジルス!?どうしたんだ!!」
死人のことなど考えずに大声で駆け寄るレオナ、ジルスは微笑みながらその場に立っていた。
「隊長、しくじりましたよ……」
そう言いながら武器や食料をレオナに渡すジルス、その中に一つ驚く物があった。
この世界では珍しいチョコレートのお菓子だった。
レオナの唯一の大好物とも言えるお菓子、それを手に取り見ているとジルスが蚊の鳴くような声で言った。
「隊長……それ好きって聞いたものですから……まさか死人に囲まれるのは想定外でしたけどね……」
「お前……まさか?」
「はい……」
一見堅苦しく命令には忠実、しかし一度提案した作戦は絶対に遂行する真面目と言う言葉が似合う男ジルス、彼にもこんな1面があった事に驚く反面そのせいでこんな事になってしまったのが悔やんでも悔やみきれなかった。
「隊長……楽にしてください……」
そう言って1発だけ入ったK・Jと言うイニシャルが彫られた銃を手渡してくるジルス、その銃をレオナは受け取った。
「ジルス、何か言い残す事は」
「妹、ケイナと言うんです、妹の事をよろしく頼みます……」
メガネを外してレオナに手渡すジルス、恐らく形見代わりだろう。
「ジルス特殊兵、マリストネの任務途中勇敢な死を遂げる……彼に慈悲を」
ジルスの目から涙が流れる、それを見てレオナはゆっくりと引き金を引いた。
『ありがとう』そうジルスが言った後に辺りには銃声が鳴り響きレオナはジルスに布を被せ直ぐにその場を後にした。
「何が隊長だ……仲間も守れねぇ奴が……」
そう言いアパートを後にするレオナの目には涙が溜まっていた。




