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わが家はローグライク風ランダム生成ダンジョン! ~ 俺の部屋だけ固定セーフティールームで、ヒロイン達と同棲することになりました ~  作者: 初美陽一
第四章 ランダム生成ダンジョン生活 ★変なアイテムや魔法のスクロール使ってみた回★

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第36話 『メタシオータのスクロール』を使ってみた! ◆後編◆

 ハークの部屋から出てきたのは、一人の少年だった。明らかに青年とは呼べない、十歳前後と思《おぼ》しき少年である。


 身長は小柄なラムやクロエと比べれば大差ないほどだが、明らかに元より低くなっており、肩幅も少年らしい線の細さが窺えた。

 ぶかぶかの寝間着と、かぶっているナ(・)イ(・)ト(・)キ(・)ャ(・)ッ(・)プ(・)は、確かにどこかで見たものだ。


 緊張気味なのか、無造作に伸びた銀髪から垣間見える目も、何となく不安そうで――そこもまたいつもとは違うが、その少年の正体は推測できる。


 若(・)返(・)り(・)、少(・)年(・)化(・)し(・)た(・)ハ(・)ー(・)ク(・)だ――そんな彼が、リーリエを見つめて言った。


「……あっ、リーリエお姉ちゃん。今日も起こしに――」


「――ぐぇっふォァーッ!」


「きゃーーーーっ!!? リーリエさんがクールキャラ(?)の全てを投げ捨てるかの如き、えげつない勢いの吐血をー!? だだ大丈夫ですか!?」


 慌てながらもツッコミは忘れないラムと、少年化したハークが驚く(状態異常:やや引き気味)。そんな中で、リーリエが口を押さえつつ言った。


「ひ、久しぶりに見た幼いハークが可愛すぎて、クリティカルヒットしてしまったわ……ハークソムリエの見解としては、間違いなく十歳の頃のハーク……!」


「そういえばハーク師匠とは、ランダム生成ダンジョンが出来る前からの付き合いでしたっけ……リーリエさんエルフだから、見た目も変わらなくてすぐ気付かれたんですね。というか昔はお姉ちゃんと呼ばれてたんですね羨ましい」


「まあね……〝ハークの幼馴染〟にクラスチェンジしたのはハークが十五歳の頃で、段階を踏む私はその頃から呼び捨てを求めたけど……一次職〝ハークが憧れるお隣のお姉さん〟時代を思い出す、耐えがたい一撃だわ……!」


「その一次職とやらもリーリエさんが言ってるだけっぽいですし、内容の真偽《しんぎ》も知ったこっちゃねぇですけど……でも分かりますよ、元の師匠も素敵ですけど、このギャップの破壊力は……や、やばいですね……!?」


 なかなか遠慮なくツッコむラム、と……次に少年ハーク(仮称)に声をかけたのは、彼の義妹であるクロエだった。


「……ね、ねえねえハーク兄……ハークくん、わたしのこと、わかる~……?」


「え? と……妹のクロエに似てる、ような……でも、少し成長してる?」


「……クロエお姉ちゃんって呼んでくれる?」


「え。……く、クロエお姉ちゃん?」


「……♡ く、くっはぁ~……♡」


 何やらご満悦で身悶えているクロエに、ラムが果敢にツッコみにいく。


「楽しんでやがりますねぇ……ってそれより! 大丈夫なんですか、こんなの……年齢操作なんて、このまま戻らなかったら大変で――」


「だ、大丈夫ぅ……魔法の影響だし、こういうのは状態異常みたいなもんで、暫《しばら》くしたら治るから……むしろ今、色々しないともったいないしぃ……」


「なるほど、じゃあ大丈夫ですね。ハーク師匠には申し訳ないですが、思う存分に若かりし頃の師匠を堪能しましょう……!」


「さすが日を追うごとにランダム生成ダンジョンに馴染《なじ》んでいく女……ラムちゃんに敬意を……」


 変なところで意気投合した二人……だが少年ハークは、最後にラムへ声をかけた。


「……え、えっと。それで……お姉さんは、だれですか?」


「えっ? 何言ってるんですかハーク師匠、アタシですよ、ラムで……あっ」


 そこで少女剣士は気付いてしまった。ラムがハークと出会ったのは、つい最近の話である。ハークの記憶も十歳時点に戻っているなら、ラ(・)ム(・)に(・)関(・)す(・)る(・)記(・)憶(・)は(・)な(・)い(・)はずだ。


 師弟となって、同居して、パーティーを組む仲間として、育《はぐく》んできた思い出――それらがすっかり抜け落ちている現状に、一抹の哀愁《あいしゅう》がよぎる。


 それでもラム=ソルディアは、ふっ、と儚げな笑みを浮かべ……今だけとはいえ年上の余裕を見せ、ハークへと穏やかに告げた。



「アタシの名前はラム……ラムお姉ちゃんですよ、ハークくん。

 覚えておいてくださいね――あなたの未来のお嫁さんです♡」



「やっやりやがった! やりやがったこの野郎ッッ!!」(※普段ダウナー気味なクロエちゃんです♡)


「オイ縄ァ持ってこい縄! 縛り上げて処すぞコラ!!」(※クールな幼馴染エルフのリーリエさんです♡)


「まあまあ落ち着いてくださいよクロエちゃんリーリエさん、ちょっとしたジョークですよジョーク、まさか刷《す》り込《こ》みなんて狙ってませんよガハハ」(※16歳の少女剣士ラムちゃんです♡)


 なかなか〝状態異常:キャラブレ〟の騒がしい面々だが、現状では初対面のラムが放った自己紹介に、少年ハークは表情を曇らせている。


「えっ……未来のお嫁さん、って。それはちょっと……」


「あ、初対面でビックリさせちゃいましたよね。いえいえ冗談ですよ冗談。……ただ将来のため、ほんのちょっぴり頭の片隅にでも置いてもらえれば――」


「だって、おれ、二年前――ウッ」


「え? ……きゃっ!?」


 少年ハークが、何か言い切る前に――突如、ボンッ、と彼から煙が上がった。

 煙幕のようなそ(・)れ(・)が晴れた時、改めて彼が姿を見せる。


「……ん、んん。ふわぁ~……あれ、三人とも、どうしたんだ?」

「「「…………」」」


 十歳の少年ハークではなく、十八歳の青年ハークだ。身長も肩幅も頼もしく成長した彼に、ラムがおずおずと語りかける。


「あ、あの、ハーク師匠、大丈夫です? 体にどこか、違和感とか……ていうかさっきまでのこと、覚えてます?」


「ん? いや、別に体は……むしろ調子いいくらいだけど。さっきまで、って言われても……なんかぼんやりと、妙な夢を見てたような……?」


「そ、そうですかっ。なるほど、そんな感じで……なにより体調がおかしくないなら、それが一番ですっ」


 なかなか楽しんでいた気もするラムだが、ほっ、と安心する気持ちも本物らしい。ちなみにその後ろで、クロエとリーリエがこっそり会話していた。


「……〝メタシオータ〟、〝メタシオータ〟……覚えておこうね、まあその魔法の研究っていうか、学術的興味の……一環でね? そう、魔女としてね~?」


「協力するわクロエさん。ひとまず危険度が低ければ致命的ではなさそう、と分かったし、これからは他のスクロールも拾うようにしましょう……そう、ランダム生成ダンジョン生活のために、あくまでそのためにね?」


 何やらヒソヒソと、不穏な話をしている気がする。

 一方、一安心したラムだが、それはそれとして気にかかることもあるようだ。


(……〝二年前に〟? さっきのハーク師匠が十歳というリーリエさんの言葉を信じるなら、八歳の頃……確かご実家がランダム生成ダンジョンになった頃、ですね。う~ん、実家がダンジョンになっちゃったから、結婚は難しいとかかなぁ。……いえだってアタシが好みじゃないとかだったら、もう立ち直れないですし――)


「? どうかしたのか、ラ(・)ム(・)お(・)姉(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)?」


「あっいえ、特に何でも……ピョエッ。……は、ハーク師匠、今……!?」


「……あれ、変な呼び方しちゃったな。まだ寝ぼけてるのかな、俺」


(っ。今、クロエちゃんとリーリエさんの気持ちが理解《わかった》ッ……お姉ちゃん呼びは……破壊力が、危険度Aッ……!)


「あれ、ラム……大丈夫か? おーい、ラム~?」


 ふらり、その場に倒れそうになるラムを抱き留《と》め、呼ばわるハークだったが、少女剣士の表情はどこか満足そうなものだったという。

 ……何はともあれ、まあまあカオスな状況は治まった後、方針として定まったことが一つある。


 今後は〝魔法のスクロール〟も――積(・)極(・)的(・)に(・)拾(・)っ(・)て(・)い(・)く(・)ことが決定した――!


 ※ハークは終始「?」と首を傾《かし》げていました。

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