宿屋に
そして、私たちはその日宿屋に泊まった。
宿屋は真っ白で、どこか中世的な小さなお城みたいなデザインだった。
ゼファー曰く、このゲームの中はハイテクな部分とアナログな部分が織り混ざっているのだと言う。
彼は、宿屋のキャッシュペイにログをかざすと、スマートに私の分までお会計してくれた。
「部屋…
分ける?」
「分けます!
2部屋で!」
私は即答する。
「はいはい…」
そして、302と303の部屋の鍵を受け取った。
『お食事は105の食堂ルームがございます!
開店時間は、7:00〜20:00までです!
1日3回のお食事が可能ですね。
もちろん、パスしていただいても構いませんけど、食事権は繰り越されませんので、ご注意ください。
お風呂・トイレはお部屋にございます。』
宿屋のNPCが説明する。
「ありがとうございます。」
私はNPCにお礼をいって、3階に上がった。
「もう18時か。
少し落ち着いたら、食堂に向かおう。
ログにメッセするよ。」
「はい。」
そして、私は302に入った。
中は洋風のベージュを基調とした部屋だった。
オシャレな細工が施されたベッドに、バルコニーに続く窓からは島全体が見渡せた。
アルカ島は中心部の外側には広大な海が広がっているらしく、島の終わりには滝のように海が流れ落ち、それが水蒸気となってまた天に登っているらしい。
「素敵…」
私はバルコニーに続く窓から、しばらく外を見ていた。
しかし、ハッとする。
そうだ、ゼファーと約束していたんだった!
私は急いでシャワーを済ませ、魔導ドライヤーで髪を乾かした。
「ふぅ、さっぱりした。」
「マリス?」
ドアがノックされた。
「はぁい!」
私は急いでドアを開けた。
「なんだ、バスタオル一枚かと思ったのに。」
「変態っ!」
「男はみーんな、変態って、知らないのか?」
「し、し、知りません!」
「教えようか?」
ゼファーが私の腰に手を回す。
「け、結構です!」
私はバルコニーの入り口まで下がった。
「冗談だよ…
半分…
行こう。」
半分!?
半分って言った!?
「冗談だよ、8割…」
「…行きましょう…」
少し離れて、私たちは食堂に向かった。
食堂はプレイヤーでざわめいていた。
「きゃー!
終焉の攻略者・ゼファーよ!」
「いやーん、かっこいい!」
「隣の女誰よ!」
「可愛いじゃん。」
「可愛いく無いわよ!」
すぐに、ゼファーに黄色い視線と声が集まった。
同時に私にも非難の視線と声が。
こ、怖い…
また、いじめられる…?
私がキュッと胸に手を当てて、俯いていると、ゼファーが私を覆い隠すように前に立った。
「僕の可愛い仲間、マリスです。
彼女を傷つける事は僕を傷つける事と同義なので、言動には気をつけてね?
僕はプレイヤーでも容赦しないよ。」
シーン…となる食堂…
しかし、それからは私に対する非難の声は無くなった。
この人と居れば…
大丈夫…?
でも、それは同時に私を不安にさせた。
この人から見捨てられたら…
見捨てられないようにしなきゃ…!
ここまで読んで下さって誠にありがとうございます…!
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