第五部 第十四話 ~実況していたら、役割だった~
ノアスパイ疑惑確定
ノアが最初に違和感を覚えたのは、
自分の話ではなく、「兄の話」だった。
「佐伯さんって、大変だったんでしょう?」
ランチの席で、そう言われた。
「何が?」
聞き返すと、相手は言葉を濁す。
「いえ、その……家族の事情とか」
(……またそれか)
ノアは笑って流したが、内心では引っかかっていた。
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別の日。
「弟さんの結婚、ああいう形だったんですよね?」
「兄が、いろいろ背負ってるって」
ノアは、口を閉じた。
否定しようとして、やめた。
(……説明、長くなる)
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その夜。
フラット。
兄は、だぼだぼのパーカーで
キーボードを叩いている。
カタカタカタカタ。
(……通常運転)
ノアはソファに座り、天井を見た。
(……あれ?)
(……俺)
(……兄さんの状況、
父上にそのまま話してない?)
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思い返す。
・ 昼休みで人に囲まれていた話
・迷子になって保護された話
・ 夜会で線を引いた話
・ネトゲでヒーラーしてる話
全部、”事実”だ。
誇張も、悪意も、ない。
でも。
(……全部材料じゃん)
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翌日。
エドワードの前。
ノアは、少し言葉を選んだ。
「……兄さんは、
特に変わりありません」
(……よし)
「ただ」
(……やめろ)
「昼休みは人が集まりやすくて」
(……言ってる)
「安心されてて」
(……止まれ)
エドワードは、紅茶を置いた。
「続けろ」
(……ダメだ)
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ノアは観念した。
「兄さん、線引いてます」
「踏み込みません」
「でも拒絶しません」
「結果、噂が整理されてます」
一拍。
「……全部、自然発生です」
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エドワードは、しばらく黙ってから言った。
「十分だ」
「……え?」
「もう、動かさなくていい」
ノアは、頭を抱えた。
「俺、まだ喋ってますけど」
「だからだ」
エドワードは、淡々と言った。
「お前が止まれないことも
含めて、もう十分だ」
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その夜。
フラット。
ノアは、意を決して言った。
「兄さん」
「はい」
「俺さ」
一拍。
「父上に、
めちゃくちゃ実況してた」
兄は、少し考えてから答えた。
「……怒ると思いましたか」
「……ちょっと」
「……いいえ」
「……なんで」
「……困ったら、止めてください」
ノアは、思わず笑った。
「それ、スパイに言う?」
「……家族でしょうか」
(……あ)
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ノアは、ようやく理解した。
(……俺)
(……スパイじゃない)
(……近すぎただけだ)
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翌朝。
エドワードから、一文だけ届く。
> あとは
> 自然に任せる
ノアは、スマホを伏せた。
(……実況、終わったな)
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その頃。
悠馬は、昼休みに
コーヒーを飲んでいた。
砂糖、
三杯。
「佐伯さん、落ち着きますね」
「……そうでしょうか」
それだけ。
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”ノアは自覚した。”
”自覚したが、止まれなかった。”
”そして、それで十分だった。”
物語は、
誰かが操ったのではなく、
”近くにいた人が少しずつ話した結果、
前に進んでいただけだった”
AIアシスト作品です。
対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。
前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。
一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。




