幕間 ~帰国直後、現実はまだ来ない~
なんか全然コイバナにならない
帰国した。
ロンドンの空気は、フランスより少し重く、
少し静かで、少しだけ――慣れている。
(……帰った)
佐伯悠馬は、自宅のドアを閉め、その場で立ち尽くした。
スーツケースは、まだ開けていない。
(……今日は)
(今日は、何も起きない日だ)
そう、”強く念じる”。
上着を脱ぎ、靴を脱ぎ、
とりあえずソファに倒れ込む。
天井を見る。
(……何も、考えない)
スマホを、そっと裏返す。
(……連絡、来ない)
(……よし)
テレビをつける。
音量は小さく。
内容は、どうでもいいニュース。
(……理解しなくていい)
キッチンに行き、冷蔵庫を開ける。
「……ないな」
何もない。
当然だ。
長期出張明けだ。
だが、外に出る気はない。
(……今日は、人に会わない)
棚を漁り、適当に見つけた
インスタント食品を手に取る。
「……これでいい」
湯を沸かす。
待つ。
――この
「何も求められない時間」が、
久しぶりすぎる。
ソファに戻り、フードを片手に、また天井を見る。
(……有能嫁)
(……考えない)
(……今日は、考えない)
スマホが、震えた。
(……見ない)
裏返したまま、
放置。
五秒。
十秒。
(……見ない)
十五秒。
……三十秒。
(……誰だ)
裏返す。
表示された名前。
――ノア。
「……無視」
即、画面を伏せる。
(……今日は、現実逃避)
テレビの音を、少しだけ上げる。
内容は、料理番組。
(……平和だ)
その時。
ピロン。
メッセージ通知。
> 無事着いた?
> 父上、今めちゃくちゃ機嫌いいよ
「……やめろ」
声に出た。
(……今、それ言うな)
悠馬は、ゆっくりとスマホを置き、深呼吸する。
「……今日は、何も、起きない日」
もう一度、強く念じる。
その瞬間。
ピロン。
別の通知。
カレンダー。
――”来週:ハミルトン邸・夕食”
「……早い」
早すぎる。
(……でも)
悠馬は、小さくため息をついた。
「……今日は、まだ、今日だ」
現実逃避は、一日くらい許される「はず」。
ソファに沈み込み、目を閉じる。
「……有能嫁は、明日考える」
そう言って、完全に目を閉じた。
その頃。
ハミルトン邸では、
誰かが静かに次の段取りを組んでいた。
だがそれは、”明日の話”。
今日は、悠馬が何も考えない日だ。
――たぶん。
AIアシスト作品です。
対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。
前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。
一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。




