幕間 ~帰国直前、エドワードは紅茶を飲んでいる~
ここらで再度。雑な人物紹介
佐伯悠馬:仕事は神、恋愛は初期設定未実装。胃が弱い。
ノア:弟。兄の人生の実況解説者。
エド叔父:人生をイベント扱いする人。
帰国前日。
悠馬は、
ホテルの部屋でスーツケースを閉めていた。
(……終わった)
フランス出張、二度目。
長かった。
削られた。
でも、なんとか立っている。
「……帰れる」
その言葉を口にした瞬間、スマホが震えた。
(……来たな)
表示された名前を見て、悠馬は深く息を吸う。
――エド叔父。
出ない、という選択肢は、最初から存在しない。
「……はい」
『悠馬』
いつも通りの声。穏やかで、落ち着いていて、
”何も起きていないような声”。
それが一番怖い。
『帰りの便は、明日だったな』
「……はい」
『長い出張だった』
「……そうですね」
一拍。
『よく耐えたな』
(……耐えた、って言ったな)
褒められている。
しかし、
それは試験官のそれだ。
『今回の件だが』
(来る)
悠馬は、身構えた。
『成果は十分だ』
「……ありがとうございます」
(……帰れる?解放される?)
『ノアからも、報告は受けている』
(……全部筒抜けだ)
『最初は、しどろもどろだったが』
(やめてくれ)
『途中からは、ちゃんと話せていた』
(……見てたのか)
『最後にまた少し崩れたそうだが』
(そこまで!?)
悠馬は、思わず天井を見た。
(……実況か?)
『だが』
エド叔父は、楽しそうですらある声で続けた。
『あれでいい』
「……え?」
思わず聞き返す。
『完璧にできるようになったら、意味がない』
(……は?)
『大事なのは』
一拍。
『”自分で線を引けるかどうかだ”』
「……」
『君は、途中で逃げなかった』
『だが、最後はちゃんと終わらせた』
(……それ、評価対象だったのか)
『上出来だ』
完全に、試験の講評だった。
悠馬は、言葉を探した。
「……叔父上」
『なんだ』
「……これは、いったい
何のレッスンだったんでしょうか」
少しの沈黙。
――初めての、はっきりした沈黙。
そして。
『……さて』
紅茶を置く音が、
電話越しに聞こえた気がした。
『何だと思う』
(……聞くな)
「……女性慣れ、ですか」
『半分、正解だ』
(半分!?)
『もう半分は』
一拍。
『“選ばれる立場”の自覚だ』
悠馬は、言葉を失った。
(……それ、聞いてない)
『仕事でも、私生活でも』
『君は、
もう「選ぶ側」ではなく』
『”選ばれる側だ”』
(……やめろ)
『だから』
声が、いつもより少しだけ柔らかくなる。
『帰ったら、忙しくなるぞ』
「……はい?」
『色々とな』
(色々、って言葉が一番怖い)
『安心しろ』
最後に、穏やかな声。
『今度は、フランスほど乱暴にはやらん』
(……今まで、乱暴だった自覚はあるんだな)
『では』
『無事に帰ってこい』
通話が、切れた。
しばらく、
悠馬は
スマホを握ったまま動かなかった。
(……忙しくなる)
(……色々)
(……帰ったら)
ベッドに腰を下ろし、額を押さえる。
「……覚悟、足りてるかな……」
その時、ノアからメッセージが届く。
> 父上から電話?
> 声、元気だった?
「……元気だった」
返信すると、すぐに返ってきた。
> それ、一番まずいやつじゃない?
「……うん」
短く返して、スーツケースに視線を戻す。
(……帰国は、ゴールじゃない)
(……スタートだ)
フランス出張、終了。
だが、
『有能嫁計画・本格始動』は
すでに
カウントダウンに入っていた。
AIアシスト作品です。
対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。
前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。
一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。




