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佐伯悠馬の恋愛事情  作者: 雪森蓮


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第二部 第十四話 ~帰国前夜:ちゃんと話せるようになった結果~

イレギュラー対応には弱い悠馬君です。

帰国前夜。


ホテルのラウンジは、いつもより静かだった。

出張は、ほぼ終わっている。あとは帰るだけ。


(……終わったな)


佐伯悠馬は、グラスに入った水を一口飲んだ。


アルコールは、取らない。

判断力を落とす理由は、

もう十分すぎるほど知っている。


そこへ。


「佐伯さん」


聞き覚えのある声。


振り向くと、この数日で何度か顔を合わせた

取引先の女性が立っていた。


刺客ではない。

教育でもない。

仕事の相手だ。


――分かっている。


「お帰り、明日ですよね」


「はい」


落ち着いて答えられる。


(……ちゃんと話せてる)


「少し、座ってもいいですか?」


断れない。

でも、断る理由もない。


「どうぞ」


自然に言えた。


これが、数日前の自分だったら。


(……進歩してるな)


会話は、本当に普通だった。


今回の仕事のまとめ。

今後の進め方。

次に会う可能性。


言葉を選びすぎず、でも不用意に踏み込まない。


(……これが“まともな会話”か)


その瞬間だった。


「佐伯さんは」


彼女が、少し間を置いて言う。


「……誰かに大切にされるの、慣れていないんですね」


――来た。


脳が、一瞬遅れる。


(……え?)


言葉の意味を、理解するまでに

一拍。


「……そう、見えますか」


声が、わずかに揺れる。


(……ここからが本番か)


「はい」


彼女は、視線を逸らさずに言った。


「人の話はちゃんと聞くのに」


「自分のことになると、一歩引く」


(……当たってる)


「それ、癖ですよね」


(……やめてくれ)


ここから。


悠馬は、分かっていた。


”今までのレッスンなら、ここで距離を取れる。”


だが。


(……帰国前夜だ)


(これが、最後かもしれない)


その“最後”という言葉が、判断を鈍らせた。


「……慣れていない、というより」


言葉が、詰まる。


(……あ)


自分でも分かる。


――”しどろもどろだ”。


「……必要以上に、期待されることに、慣れすぎていて」


(何を言っている)


「……それに、応え続けるのが普通になっていて」


(やめろ)


「……自分がどうしたいか、後回しにして……」


完全に、内面の話になっている。


彼女は、驚かなかった。


ただ、静かに聞いている。


「……ごめんなさい」


悠馬は、途中で止めた。


「今のは、仕事の話じゃないですね」


(……言えた)


一応、線は引いた。


しかし。


引いた線が、揺れているのも分かっている。


「いいえ」


彼女は、優しく言った。


「佐伯さんの“人”の話です」


その言葉で、悠馬の頭が、完全に真っ白になった。


(……あ)


眉間に、確実にしわが寄る。


考える。

選ぶ。

判断する。


――できない。


「……すみません」


結局、立ち上がった。


「今日は、ここまでで」


逃げた。


だが、以前とは違う。

走っていない。

無言でもない。

ちゃんと、終わらせている。


部屋に戻り、ベッドに腰を下ろす。


「……成長したと思ったんだけどな」


独り言。


その時、ノアからメッセージが来た。


> まだ起きてる?

> 荷物の確認しとく?


短い文。


守ろうとしない。

踏み込まない。


(……助かる)


「……ああ」


返信して、天井を見る。


(……レッスンの成果は、確かにある)


(でも……)


(まだ、”こういうところで詰まる”)


それが、分かっただけでも収穫だ。


そして、分かっている。


(……帰ったら)


(有能嫁計画、本格始動だ)


眉間のしわを、指で押さえながら

悠馬は思った。


(……覚悟しろよ、自分)


フランス出張は、もうすぐ終わる。


でも、

『本番はここからだ』



AIアシスト作品です。

対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。

前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。

一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。


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