幕間 ~ 姉妹の会話~
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凛と蘭は双子。悠馬の2歳年下の妹たちです。アメリカでエド叔父の奥さん(ジェシカさん)の仕事を一緒にやっています。別に怪しい仕事ではないです。
その頃、アメリカ。
ホテルの一室で、
凛はノートパソコンを閉じたところだった。
時差の関係で、少し遅い時間。
(……やっと終わった)
スマホが震える。
画面に表示された名前に、
凛は一瞬だけ眉を上げた。
――蘭。
「もしもし?」
『今いい?』
「珍しいね。どうしたの?」
電話の向こうで、一拍、間があった。
『……あのさ』
凛は、その“間”で察した。
(あ、これ、普通の報告じゃない)
「うん」
『結婚した』
「……は?」
声が、一段低くなる。
「……誰と?」
『ノア』
さらに一拍。
「…………は?」
凛は、ソファに座り直した。
「ちょっと待って。今なんて?」
『ノアと結婚した』
言い直される。
「……いつ?」
『昨日』
「……相談は?」
『された』
「……君から?」
『叔父様から』
凛は、ゆっくりと息を吐いた。
(……ああ、あの人か)
「……で?」
『契約結婚』
「でしょうね」
『条件は悪くない』
「でしょうね」
テンポが、あまりにも自然だった。
「……で、悠馬は?」
その名前を出した瞬間、
電話の向こうで、蘭が小さく笑った。
『聞いてない』
「……だろうね」
『たぶん、あとから知る』
「……だろうね」
二人は、同時に黙った。
凛は、少しだけ視線を落とす。
「……荒れるよ、あの人」
『うん』
「胃、死ぬよ」
『もう死んでると思う』
「だよね」
しばらくして、凛が聞いた。
「……で、どう思ってる?」
『今のところ、問題ない』
「ノアは?」
『真面目』
「知ってる」
『優しい』
「知ってる」
『仕事もできる』
「知ってる」
『馬鹿だけど顔はいい』
「知ってる」
凛は、小さく笑った。
「……案外、うまくいくかもね」
『そうだね』
『ただ……』
「ただ?」
『叔父様が、これで満足するとは思えない』
凛は、即答した。
「しないね」
『だよね』
「次は、間違いなく――」
「『――悠馬兄』」
声が重なる。
二人は、しばらく無言になった。
「……フランス、また行くらしいよ」
凛が言う。
『聞いた』
「長期」
『聞いた』
「レセプション付き」
『……聞いた』
その沈黙は、祈りに近かった。
「……助ける?」
凛が聞く。
『どうやって?』
「……だよね」
二人とも、現実を分かっている。
あの家で、一度動き出した計画は、
止まらない。
『せめて』
蘭が言った。
『折れないといい』
「……うん」
「折れないし、逃げない」
凛は、確信をもって言った。
「だからこそ、一番危ない」
電話の向こうで、
蘭が小さく息を吐いた。
『……ごめんね』
「何が?」
『巻き込んで』
凛は、少しだけ笑った。
「今さらでしょ」
「それに」
一瞬、言葉を選んでから続ける。
「……あの人、誰か一人で
抱え込むよりは、まだマシかも」
『……そうだね』
電話が切れる。
凛は、
しばらくスマホを見つめてから、
小さく呟いた。
「……がんばれ、兄」
その頃。
ロンドンで、悠馬はまだ知らない。
自分の知らないところで、
”人生の周辺情報だけが
きれいに共有されている”
ということを。
そして。
次のフランスが、
前回より
”はるかに地獄になる”
ということも。
AIアシスト作品です。
対人耐性0、恋愛耐性0、人との距離感が終わっている悠馬君のコイバナ?になるんだろうか?な、話です。一応コメディです。たぶん。
前回の「佐伯悠馬は胃が痛い」を読んでいなくてもわかるように頑張ってみました。
一言でもいいので感想をくださるとうれしいです。




