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超次元勇士ゾーンG(グレート)ロボ  作者: 道化師
第三章次元獣総進撃編 ―前編―
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五月の風と身体測定と成長

GW(ゴールデンウィーク)の余韻が完全に消え、五月の風は初夏の薫りを纏い始めていた。タケル、ケン、モンタの三人は、相変わらず騒がしくも穏やかな日常を謳歌していた。学校がある日以外で休日を秘密基地(ゾーン・ハイド・ベース)で次元獣の解析データを見直したり、タケルの家でゲームに興じたり。三人にとって、そんな何気ない一分一秒が、なによりの休息だった。

ゴールデンウィークの余韻が完全に消え、五月の風は初夏の薫りを纏い始めていた。タケル、ケン、モンタの三人は、相変わらず騒がしくも穏やかな日常を謳歌していた。放課後には秘密基地(ゾーン・ハイド・ベース)で次元獣の解析データを見直したり、タケルの家でカードゲームに興じたり。彼らにとって、そんな何気ない一分一秒が、戦いの後の何よりの休息だった。


一週間後――。

 

平穏な日常に教室の掲示板に、大々的に〈身体測定・体力テスト週間〉の告知が貼り出されていた。


「身体測定かぁ〜…背、伸びてるといいんだけどなぁー」


両手を頭後ろに回し、タケルが期待を込めた言葉を呟く。ケンは冷静に、体力テストの項目である反復横跳びの効率的なステップを頭の中でシミュレーションしている。しかし、モンタだけはどこか落ち着かない様子で、何度も自分の足踏みを確認していた。


「モンタ、そんなにソワソワしてどうしたの?」


ケンの問いに、モンタはニヤリと不敵に笑う。


「フッフッフ、今年の僕は一味違う! GW(ゴールデンウィーク)中に食いまくった肉のパワーが、筋肉に変わってるはずだ!」


モンタが突然、そんな言葉を言い出し始め、タケルとケンはお互い顔を見合わせる。そんな三人の日常に、さらなるイベントが舞い込んだのは、ちょうど身体測定の真っ只中のことだった。


――場所は学校の特別棟、保健室前の廊下。


ちょうど六年生の身体測定が終わり、次の番である五年生たちが廊下で待機していた。そこへ、測定を終えたばかりの愛先輩が、体操服の身だしなみを整えながら通りがかったのだ。


「あ、愛先輩!」


モンタが真っ先に気づき、明るく声をかける。廊下の角を曲がって現れた愛先輩は三人の姿を見つけると、ふわりと柔らかな微笑みを向けて歩調を緩める。


「あ、タケルくんたち。これから身体測定なの?」


「うん、今ちょうど来たところです。愛先輩、今年はどうでしたか?身体測定の結果」


ケンがいつもの冷静さを保ちつつ尋ねると、愛先輩は少しだけ頬を染め、自分の体操服の胸元あたりをそっと押さえた。


「ん〜〜…身長もそうだけど、なんだか、また胸が少し成長したかも。たまに出掛ける時に着る服が少し窮屈に感じる事がたまにあるんだよね〜」


その瞬間、廊下の時間が止まった。


いや、正確には、モンタの脳内の歯車が物理的に砕け散るような音がした。


(えっ……!? い、いま、なんて…!?)


モンタの瞳孔が限界まで開き、全身の筋肉が岩のように硬直する。彼の耳には、愛先輩の無防備な呟きが、この世の真理、あるいは聖なる福音のように響き渡っていた。


モンタが喉を鳴らし、あわや――という刹那。


「「……ッ!!」」


タケルとケンが、咄嗟の反射神経で動く。


「モンタァッ!!」

「ストップ!!」


タケルが後ろからモンタの腰を力任せに抱え上げ、ケンがその手でモンタの口を鼻ごと覆い隠すように力一杯塞ぎ込む。


「んんっ!? んぐっ、んんーーっ!?!?」


モンタは必死に足をもがくが、二人の鉄壁のガードは崩れない。


「愛先輩、すみません! コイツ、今日ちょっと熱があってな…!」


「そ、そうなんです! ちょっと休息が必要なんで、僕らはここでいったん、失礼します!」


二人はモンタをまるで巨大な洗濯物のように抱え上げ、そのまま廊下の角を曲がって全力で駆け出した。

それを見た、愛先輩は目を丸くし、不思議そうに小首を傾げた。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


曲がり角の陰に突っ込んだ瞬間、ケンは容赦なくモンタを壁際に押し付け、口を離した。


「モンタ、あそこで何を言おうとしたの!?」

「いや、お前の事はだから、どうせくだらねぇ、質問だろうけどな」


モンタは肩で息をしながら、しかし目はまだ虚空を見つめている。


「くっ…!二人とも、愛先輩からせっかく、千載一遇のチャンスを聞けたのに…!」

「夢を見るな!あと、それ、逆に愛先輩にドン引きされるのがオチだからね」


ケンが冷ややかな視線を送りながら言うも、モンタはそれでも抗議しようと口を開くも、タケルに首根っこを掴まれて動きを封じらてしまう。


「はいはい、終了。ほら、もうすぐ五年生の番が来るよ。身体測定の最中に校内を走り回って、先生に怒られたら体力テストどころじゃないからね」


「……わかったよ〜。でも、せっかくの先輩の()()()()が……」


モンタがぶつぶつと文句を垂れ流していると、遠くから保健の先生の呼ぶ声が聞こえてきた。


「次は五年生、入ってくださーい!」


三人は顔を見合わせる。モンタはまだ愛先輩の残像を追っているようだが、ケンが容赦なく背中を押した。


「ほら、モンタ、行くよ。反復横跳びで記録を出して、愛先輩にいい報告を話してみたら。さりげなく、ね」

「な、なるほど。わかったよ、ケン君!」


モンタは単細胞らしく、すぐに調子を取り戻した。先ほどまでのセクシャルな衝動はどこへやら、モンタは今や体力テストの記録更新に闘志を燃やす、アスリートの表情になっていた。


特別棟の測定室に入ると、そこには独特の消毒液と、緊張感の混じった空気が漂っていた。先生の指示に従い、順序良く計測が行われていく。


――身長、体重、視力、聴力。


淡々と進む作業の中で、三人はそれぞれ心の中で自身の成長を確かめていた。


「……142センチか。去年より2センチ伸びたな」


タケルが測定器から降りて、満足げに微笑む。穏やかだが、確実に時間は進んでいる。自分たちの体が、幼少期から少しずつ“少年のそれ”へと変わっていく感覚を、三人はそれぞれに噛み締めていた。


続いてはケン。無駄のない動きで測定をこなし、数値を確認すると、「ふむ、計算通りだ」と小さく頷いた。彼の体は、秘密基地でのロボット修理や、重い機材を運ぶ日常の中で、自然と少しずつ着実に鍛えられていた。


そして、モンタの番。


「さて……肉のパワーの成果を!」


モンタは勢いよく測定器の前に立つ。


「はい、そこまで。えーと〜…身長は140センチだね」


先生が結果を告げた瞬間、モンタは「……え?」と絶句した。


「いや、ちょっと待って! 筋肉が重力に耐えかねて縮んだか!? おかしい、あと5センチは伸びてると、思ってたんだけど!?」

「モンタ、それただの姿勢の問題だよ。背筋を伸ばしなさい」


ケンがモンタの肩に手をおき呆れ顔で突っ込む。コメディのようなモンタの抗議も虚しく、モンタは肩を落として測定器から離れた。その後ろから、先生が淡々と次の項目を告げる。


「次は体力テストの準備をしろ。まずは反復横跳びからだ」


測定室から校庭へ向かう途中、三人は再び愛先輩が去ったあの廊下を通り抜ける。そこには、先ほどまでの甘い余韻など微塵もなく、ただ五月の爽やかな風が通り抜けていた。

昇降口で靴を履き替え校庭の方へと出ると、すでに多くの生徒たちが反復横跳びのラインに立っていた。

ケンは頭の中でシミュレーションしていた完璧なリズムで跳び始め、タケルは自分のペースで確実に回数を重ねていく。

そしてモンタ。「肉のパワー!」と大声で叫びながら、ラインを跳んだ。その動きはまるで弾むボールのように力強く、しかし最後には力尽きてラインの上に大の字になった。


「はぁ……はぁ……、やった……。今年は、去年より……プラス10回だ……」


地面に這いつくばりながら誇らしげに言うモンタに、タケルとケンは顔を見合わせて笑うしかなかった。


「お疲れ、モンタ。……でも、愛先輩の"成長"の話、もう忘れちゃった?」


タケルがそう意地悪く聞くと、モンタ

は跳ねるように起き上がった。


「忘れるわけないよ! ……でも、今はとりあえず、この記録を先輩に報告する口実を見つけることにするよ」

「……結局そこかよ」


ケンの呆れを混ぜた笑い声が、初夏の青空に吸い込まれていく。


校舎の窓からは、他のクラスの生徒たちの楽しそうな声が聞こえてくる。身体測定という、ある意味で自分の成長という名の"変化"を突きつけられるこの日。それは、次元獣との激闘の戦いに比べれば、あまりにも平和で、あまりにも愛おしく、また一つ大人になった気がした。


愛先輩の何とまでは言わないが成長に驚いたのと同じように、タケル、ケン、モンタそれぞれの三人にも自身には目には見えない速度で確実に前へと少しずつ、進んでいる。


「次は握力測定か。僕のパワーの真骨頂を見せてやる!」

「はいはい、頑張って」


タケルとケンに促され、モンタは再びグラウンドの奥へと走り出した。

五月の風は心地よく、彼らの背中をいつまでも優しく押していた。

今日という一日が終われば、明日また、新しい日常が始まる。

そんな何気ない、けれど輝くような毎日が、三人にとっての何よりの宝物であることを校庭の隅で、空を見上げたタケルはふと、そんなことを思っていた。






 




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