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超次元勇士ゾーンG(グレート)ロボ  作者: 道化師
ティル・ナ・ノーグ編
36/36

死闘の決着!と水平線のエピローグ

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「押し戻せ……押し戻せぇぇえぇーッ!!」


タケルの絶叫が、火花散るコクピット内に響く。

画面のモニターには、青と紫の光子が激突し、乱反射する暴力的なまでの輝きに埋め尽くされていた。

ゾーンGロボの全エネルギーの半分を注ぎ込んだ"ゾーンG(グレート)ビーム"。


対する次元獣の双眸から放たれる"紫の破壊光線"。


二つの巨大なエネルギーは空中で拮抗し、逃げ場を失った衝撃波が島の大地を激しく揺さぶり続けていた。


「タケル! 出力、120%へオーバーブースト! 回路が焼き切れても構わない、全エネルギーを額に集中させて!!」

「んなもんッ、言われなくてもやってるぜ! 根性見せやがれ、ゾーンG(グレート)ロボォォォオッ!!」


タケルがレバーを限界の先まで叩き込む。


ゾーンG(グレート)ロボの全身の装甲隙間から、青白いプラズマが放電となって噴き出す。その執念が、ついに均衡を打ち破った。


――ゴォオォオォオオォォオォンッ!!


青い光の奔流が、じりじりと紫の光線を押し返し始める。一度傾いた天秤は、加速的にゾーンG(グレート)ロボへと傾いていく。


「いッッけぇぇぇぇええぇぇッ!!!」


――ドォオォォオオォォオオォォンッ!!!


ついにゾーンG(グレート)ビームが次元獣の光線を完全に飲み込み、その巨体を真っ向から貫いた。

凄まじい爆発と共に、次元獣の身体が宙に浮き、背後の山々をなぎ倒しながら仰向けに転倒する。爆煙が夜空高く舞い上がり、静寂が一瞬だけ島に戻った。


「や、やった……の?」


モンタが息を呑み、モニターを見つめる。

だが、ケンの表情は晴れない。コンソールのエネルギー残量表示が、非情にも《“残り45%”》を示して赤く点滅していたからだ。


「……いや、まだだ。来るよ!!」


ケンの警告通り、爆煙の中から蠢く影が再び立ち上がるのを三人は目撃する。

次第に爆煙が消えていき、そこにいたのは次元獣の腹部をゾーンG(グレート)ビームによって焼け爛れ、一部の皮膚は炭化して剥がれ落ちている姿だった。

…だが、次元獣の紫の双眸は、傷つく前よりもさらに深く、凶悪な輝きを宿していた。


「え、エネルギー残量40%……半分以上、か」


タケルがモニターの警告灯を睨みつける。

もう一度ビームを撃つ余裕はない。次に外せば、こちらが詰みだ。


「……ケン、モンタ、次で決めるぞ。出し惜しみは無しだ!」

「わかってる!」

「う、うん…! 」


タケルの手が、今まで触れなかった最後のリミッターへと伸びる。


「よーし、来いッ! もう一本の、バトルアァァァックス!!」


ガシャリ、とバックパックが再び唸りを上げる。

スライド展開したハッチから、二本目のバトルアックスが夜空高くへと射出された。

ゾーンG(グレート)ロボが空いている左腕を力強く伸ばす。


――ガシィィィィィィンッ!!


右手に一本、左手に一本。


月明かりの下、二振りの巨大な斧を構えたゾーンG(グレート)ロボは、まさに戦場を支配する"鬼神"が如くの威圧感を放っていた。


「行くぜ……! 俺たちの、すべてを込めた一撃必殺だッ!!」


ゾーンG(グレート)ロボの脚部スラスターが、残された全エネルギーを燃焼させて爆発。

白銀の巨体が、夜を裂く流星となって次元獣へと肉薄する。


「グオ"ォ"オォ"オ"ォ"オ"ーッ!!」


次元獣が最後の反撃を試み、その爪を振り下ろそうとした瞬間――。


「いまだ!」

「「「ダブル・ギガント・クロスッ!!!!!」」」


タケルの合図と共に三人息を合わせて声を上げると同時に二振りのアックスが、空中で完璧なX字クロスを描いた。


――ザシュゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!


「グオォォォォォォ……ォ……ッ……!!!」


次元獣の胸元に巨大なクロス字を描くように切り裂き、それをくらった次元獣は断末魔の叫びをあげる。


――そして、紫の双眸の次元獣再生を許される間もなく、X(クロス)字の亀裂から眩い紫色の光に包まれ、内側から崩壊していく。

やがて、漆黒の肉体は数多の光の粒子へと変換され、夜の海風にさらわれて跡形もなく消え去っていった。


「ふ~〜…ようやく、倒したか…」


タケルがポツリと独り言を漏らす。


モニターに映る爆発の余波が消え、夜の静寂が島を包み込むのを確認すると、三人は一気にシートへ背中を預けた。張り詰めていた緊張の糸が解け、激しい脱力感が襲う。


「熱源反応、完全に消失、間違いないよ」


ケンの言葉に、モンタが「や、やったー!」と笑顔で上げた。しかし、余韻に浸っている時間はなかった。


「感傷に浸るのは後。ベースの自動帰還シグナル、セット完了っと」


ケンの鮮やかな指捌きにより、機体の制御がAIへと移行される。


――シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!!


背中部と脚部のスラスターが同時に火を噴き、ゾーンGグレートロボは白銀の残光を残して急上昇。夜空を青白く切り裂き、大気を震わせながら雲の彼方のその海の向こう側――三人の秘密基地ゾーン・ハイド・ベースの所へと向い、去って行った。


そんなまだ、コックピット内いるタケル、ケン、モンタの三人はと言うと――。


「……さて、僕たちも戻ろうか」


ケンが《ゾーンブレス》を操作し、転送座標をホテルの裏庭へと固定する。


「おう。二人に心配かけた分、しっかり顔見せねぇとな!」

「うん、早く戻ろう!」

「なら、準備はいいね?座標固定、転送!」

ケンの掛け声と同時に三人の手首の《ゾーンブレス》が共鳴を始める。

タケル、ケン、モンタの三人の身体が粒子状に輝き、次の瞬間――コックピットから三人の姿が消失した。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


ロボットの機影が完全に見えなくなると同時に一瞬の浮遊感の後、三人の視界は火花散るコクピットから、月明かりに照らされたホテルの裏庭へ転送された。


「…ふう、戻ってこれたぜ」


タケルが砂混じりの地面を蹴り、大きく伸びをする。月明かりの下、先ほどまで握っていた操縦レバーの感触がまだ掌に残っているようだった。

しかし、一息つく間もなくケンが声を潜めて制した。

「シーッ!静かに。あそこを見て」


ケンの指差す先、ホテルのロビーから屋外へと避難してきた宿泊客たちの喧騒があった。ざわめきと不安が入り混じる中、ひときわ必死な面持ちで辺りを見回している二人の女性の姿を、三人は見つけた。

愛先輩と母親の翠さんだ。二人は互いに手を握りしめ、まるで迷子を探す親のように、何度も何度も人混みの中へ視線を投げている。


「……やっぱり、俺らを探してるな」


タケルがホテルの壁からひょいと顔を出し、すぐに引っ込める。


「当然だよぉ。僕らはずっと次元獣と戦ってたんだから」


モンタが眉を下げて震える。


「さて、問題はどう合流するかだ。このままここから飛び出せば、"今までどこにいたの!"と問い詰められる。まさか"巨大ロボットに乗って、次元獣と戦ってました"なんて、言えるはずもない」


ケンが冷静にメガネを押し上げた。三人は壁に背中を預け、輪になって小声で緊急会議を始める。


「反対側の通用口から回って、正面玄関から来たフリをするのはどうだ?」


タケルの提案に、ケンは即座に首を振った。


「それは無理だよ。ここから反対側に回るには、一度開けた場所を通らなきゃならない。それに、ホテルの正面は今、避難誘導で従業員が固まってる。今の僕たちの汚れた格好で正面から入れば、逆に目立ちすぎる」


「じゃ、じゃあ……裏庭の物置に隠れてたら、怖くて動けなくなっちゃってました作戦は!?」

「アホか!」


モンタが必死に提案するもタケルにツッコまれた。


「そ、そうかなぁ……? 」

「僕もタケルと同じでそれはそれで不自然だね。流石に」


ケンも冷徹なトーンで応える。


「じゃあどうするんだよ?」

「まぁまぁ落ち着けよ、タケル。僕のプランBを聞いてくれ。……ここは一つ、()()()()()()()()()()()()()()()()という設定でどうだろう?」

「……。ケン、お前は俺やモンタより、頭がいいが…たまに天才的なバカな事を言うよな」


タケルの目が点になる。 


「何言ってるんだい、これでも考えているだ。三人同時に個室に入っていたわけではなく、混乱で自動ドアのロックが誤作動したことにすれば……」

「そんなハイテクなトイレ、この島にはねーよ! それに三人でトイレに閉じこめられてましたって、絵面が最悪すぎるだろ!」

「えっと、じゃ、じゃあ! "次元獣に連れ去られて、記憶を消された"ってのは!?」


モンタが半ば投げやりに叫ぶ。


「……モンタ。お前は少し黙って、自分の体型を見てろ。次元獣が拉致するならもっと……いや、なんでもない」

「ひどいよタケル君!」


三人が壁の影で、ああでもないこうでもないと、次元獣との決戦以上に必死な顔で“言い訳会議”を繰り広げていた。


――その時だった。


「――ん? 誰かそこにいるのか?」


背後から、太くて低い、いかにも真面目そうな声が響いた。


三人の心臓が跳ね上がる。


「げッ!」

「しまっ……!」


振り返ると、そこには懐中電灯を片手にした恰幅の良い警備員が三人立っていた。彼は逃げ遅れた宿泊客がいないか、くまなく見回りをしていた最中だったのだ。


「君たち、こんなところで何を……。怪我はないか!? 大丈夫か!?」

「あ、いや、えっと……!」


ケンが珍しく言葉を詰まらせる。


「よし、分かった! 怖かったんだな、おじさん達が来たからにはもう、大丈夫だ。今すぐ皆が避難してる所へ連れて行ってあげるから、安心しなさい!」 


三人の警備員さんは親切心120%の笑顔で、三人の腕をガシッと掴んだ。


「あ、ちょっと! 待ってください! 俺たち、自分たちで歩けるって……!」


タケルの抗議も虚しく、屈強な三人の警備員さんに引きずられるようにして、三人は明るいロビー前の避難所へと連行されていく。


「おーい! ここに子供たちが三人いたぞー!」


警備員さんが野太い声で叫んだ瞬間、人混みの中から、雷に打たれたような速さでこちらへ駆け込んで来る愛先輩と母親の翠さん。


「タケルくん!ケンくん!モンタくん!」


愛先輩が、今にも泣き出しそうな顔で三人のもとに駆け寄ってくる。

その後ろから、翠さんが三人の肩や背中をペタペタと触って怪我がないか確認し始めた。


「良かった!三人とも、無事みたいね!」


三人の警備員は「いやぁ〜、逃げ遅れている人はいないか見回りをしていた所偶然、裏庭で見つけたんですよ!」と、親切心120%の余計な追い打ちをかけて立ち去っていった。


「あ、あはは……。いや、あの、翠ちゃん。その…実は」


タケルがチラリとケンを見る。ケンはメガネの位置をズレないよう固定し、一世一代の"嘘"を理路整然と語り始めた。


「……ええ。実はですね、翠さん」


ケンはあえて少し声を落とし、冷静沈着なエリート小学生の顔を作った。


「パニックが起きた瞬間、僕たちは最短ルートで避難しようと、ロビーとは反対側の非常口へ向かったんです。ですが、そこで強い揺れのせいか……扉が開かなくなってしまいまして。やむを得ず、裏庭の物置の陰で様子を伺っていたんです。あの状況でむやみに動くのは命の危険があると僕がそう判断しました」


ケンの淀みない説明に、タケルが「そうそう!」と大きく頷き、モンタも「もう、怖くて一歩も動けなかったんだよぉ……」と、名優顔負けの演技で震えてみせる。


「……裏庭に? それじゃあなた達、ずっとそこにいたの?」


愛先輩が少し不思議そうに首を傾げた。その純粋な瞳が痛い。


「はい。むしろあの裏庭は周囲に他に高い建物がなかったので、落下物の心配が少なかったんです。……ご心配をおかけして、本当に申し訳ありません」


ケンが深く頭を下げると、タケルとモンタも慌てて一緒に頭を下げた。

翠さんはしばらく三人の顔をじっと見つめていたが、やがて「はぁ……」と大きなため息をつき、三人の頭を順番に軽く小突いた。


「もう! 無事だったからよかったけど、あんた達がいなくなったら私、ご両親の方達に合わせる顔がないわよ、まったく。けど三人とも無事で本当によかったわ」

「本当に三人とも無事で良かったよ」


愛先輩もようやく安堵の笑みを浮かべ、三人の無事を心から喜んでくれた。

その夜、ホテルの窓から見える島は、先ほどの死闘が嘘のように静まり返っていた。タケルたちは密かに目配せをし、守り抜いたリゾートアイランド〘ティル・ナ・ノーグ〙を三人とも安堵と守りぬいた確かな満足感が内心、胸を温めた。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

――翌朝。


昨夜の騒動が嘘のように、南国の太陽は再び海をキラキラと黄金色に輝かせていた。

島の一部には損壊が見られたものの、奇跡的に死者はゼロ。島民も観光客も、誰もが命があった事を喜びながら、帰路につく船へと乗り込んでいく。


「さぁ、皆、忘れ物はないわね?」


翠さんの号令で、タケル、ケン、モンタ、そして愛先輩は大型フェリーのデッキへと向かう。


「 待ってくださーい!」


背後から賑やかな声が響いた。


遅れて港に駆け込んできたのは、アイドルグループ〘カオスレゾナンス〙の三人――美璃、律、陽葵だ。その後ろを、機材を抱えたプロデューサーやマネージャー、大勢のスタッフ一団が続く。


「あら、美璃ちゃんたちも無事だったのね!」


翠さんが手を振ると、美璃が元気に振り返した。


「はい! あっ、昨日は災難でしたね。大丈夫でしたか?」

「私たちは翠さんたちとは別のホテルに泊まってましたので」

「本当、大変な目に遭ったわね。でも、こうしてまた顔を合わせられて安心したわ」

美璃と律が心配して尋ねるも、翠さんが優しく微笑むと、私服姿の三人はそれぞれの表情を見せます。クールな律は「一時はどうなるかと思いましたが……」と胸をなで下ろし、陽葵は「美味しいジュースを飲む前だったので、間に合って良かったぁ〜」と、のんびりした様子で場を和ませました。

しかし、センターの美璃だけは違います。彼女の視線がタケルを捉えた瞬間、タケルは反射的に顔を歪めました。


「……げっ」

「なによその反応はッ!!」


美璃の地獄耳がそれを聞き逃すはずもありません。美璃はプンプンと肩を怒らせ、タケルの目の前まで詰め寄ります。


「こっちはね、避難しながらも怪獣に踏み潰されてないか、本気の本気で心配してたんだからね! 少しはありがたいと思いなさいよ!」


「だぁーもう!わかったわかった、わかったから! 一々声がデカいんだよ!」


タケルが耳を塞いで後ずさりする様子を見て、ケンは呆れたようにメガネを拭き、モンタは「あはは、美璃ちゃん、怒るともっとパワフルだねぇ……」と苦笑い。そんな彼らのやり取りを、愛先輩と翠さんは、昨夜の恐怖を忘れたかのように穏やかな笑みを浮かべて見つめていました。


やがて、先に乗り込んでいたプロデューサーや大勢のスタッフ一団が、船のタラップから「乗るぞー!」と声を上げます。


「それじゃ、行くわよ」

「ええ」

「はいは〜い♪」


美璃たちが先に乗船し、続いてタケルたち一行も、揺れる船体へと足を踏み入れました。


ボーーーーーーーッ!!


大型フェリーが出航と共に力強い汽笛が島に響き渡り、大型フェリーはゆっくりと岸壁を離れていく。

デッキから遠ざかるリゾートアイランド〘ティル・ナ・ノーグ〙を眺めると、あちこちに残った戦いの傷跡が、昨夜の出来事が夢ではなかったことを物語っていました。

タケル、ケン、モンタの三人は、手すりに寄りかかりながら、並走するカモメと青い海を見つめます。


「……水族館に、遊園地に、美味しいご馳走。そして最後は久しぶりの次元獣との戦闘、か」


ケンがふっと自嘲気味に笑い、手首の《ゾーンブレス》にそっと触れました。


「次はもっと、平穏なバカンスを計画してほしいものだね」

「僕はリゾート限定のビュッフェまた、食べたいかなー」


モンタの食いしん坊な発言に、タケルはニカッと笑い、太陽の光を跳ね返す水平線を見据えました。


どこまでも続く穏やかな青――その景色を脳裏に焼き付けるように。

ふと、振り返れば、遠ざかるリゾートアイランド〘ティル・ナ・ノーグ〙の島影が、陽炎のように淡く揺れている。


「……とんだ、リゾートだったぜ」


タケルが不敵に笑ってこぼしたその言葉は、心地よい潮風にさらわれ、きらめく波間に溶けていった――。


―ティル・ナ・ノーグ編―(完)




 



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