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魔王とドールの地下生活⑧ 少しの進展

今回はちょっと長めのような気がします。

 「フズリナ様、追加の木材です」


 よし、そこに置いておいてくれ。


 「フズリナ様、追加の釘もここに置いておきます」


 分かった。あとは大丈夫だ。


 現在、希代の魔王フズリナは、以前俺が見事に開けた室内農園の穴をふさいでいた。

 決して、忘れていたわけではない。流れ込んできていたマナは操って外に押し戻しておいた。人間にはできん業よ、ハーッハッハ!


 「フズリナ様、懸念事項があります」


 なんだ?


 「木材その他建材が残り半分程度になりました」


 マジで? まあそりゃ無限だとは思っとらんが……ドア作れるぐらいはあるのか?


 「それくらいはあります。しかし、これ以上何かが壊れ続けたら、普通に底をつきますよ」


 別に切れたら切れたでなにか困ることはないが……これから何かが起きないとも限らんからな。しかし、木材を手に入れる当てがないのも事実。


 であるならば、やはり、お前の力が必要になる。


 「と、言いますと?」


 マナの探知だ。例えば、温泉を作ったときのようにな。


 「しかし、フズリナ様ができるのならば、私が習得する意味はあるのでしょうか」


 そもそも、結界を破るためには必要な段階よ。マナの流れを知る必要がある。


 そして、そもそも俺のマナの探知はそれほど精度がいいわけでもない。無理やりマナを従え、操っているのだからな。遠ければ遠いほど、マナは言うことを聞かなくなる。だからこそ、お前の力が必要だ。


マナ探知の精度が上がれば、地下のどこに何があるか把握できるようにもなるだろう。地下にある有用な資源を探し当てることもできる。


 「なるほど。では、早速、レキシカボタニアの読み進めに戻ります」


 ああ、待て。


 「どうかいたしましたか」


 お前、なんであの時温泉に入っていたのだ……?


 「きゃー、フズリナ様のえっちー(棒)」


 精密機械にえっちもなにもあるかよ。あと初めて会った時もそう言っていたな貴様。


 「フズリナ様は、精密機械に劣情を抱かないタイプの方ですか」


 うーん、劣情とかそういう問題じゃないような……。


 「高性能ハイスペックですので、入浴その他によって汚れを落とすことができます。かつて奥様とはよく一緒にお風呂に入ったものです。あの時に発した言葉は、その時奥様に『殿方には上目遣いでこう言ってやれば、イチコロよ♡』と教えてもらったものです」


 うーん、その奥様とやらは、一体……。


 「レキシカボタニアの読み進めに戻ってもよろしいでしょうか?」


 ああ、邪魔をしてすまなかったな。後は片づけておくから、存分に知識を入れると良い。


 「恐れ入ります。では」


 ふう……壁の穴を直す魔王とは、なんとも言えんものよな……。封印される前は、こんなものは、魔法一つで直せたものだが……。

 ドールにばかり任せてもおれん。後でこの地下室の近くの地形を、マナ探知で少しでも詳しく把握しよう。


 魔王、後片付け中……


 では、マナによる探知を始めるとしよう。


 場所は骨主人たちの部屋を間借りさせてもらう。地下室の中でここが一番、マナが安定しているためだ。


 すう――はあ――……

 では、マナによる探知……開始ッ!


 ……うーむ、全方向のマナ探知はやはり安定しないな。探知箇所を狭い一直線に限定して、探知範囲を円形に回して、レーダーのように探知をするか。


 まず俺の正面の一直線上のマナを、できる限り支配する。

 ……これでも数十メートル程度か。水脈の時とは違い、正確に全体を把握しようと精度を上げると距離が落ちるな。


 このマナ支配を少しずつ横に移動させ、俺を中心に円を描くように探知をする。


 結局、俺を中心に平面的に探知を行っても何も新しいものはなかった。立体的に縦横斜めの探知を行うが、それでも何も見つからなかった。

 新しい発見は、俺を封印している結界は、外部へのマナによる探知をも阻害しているという事だ。少なくとも、あの結界はマナを完全に遮断しているということが分かった。


 あとは何もなし。やはり俺では限界がある。力を取り戻せばまだ可能性はあるかもしれないが、望みは薄いのだろう。結界が残っているため、俺の力の回復も抑えられているかもしれない。

 残っていたなけなしの魔力ですら、魔法を使った後回復していないのだから。

 しかし、練習などによってマナ支配の精度が上がる可能性はある。諦めず、探求していかねば。


 魔王、悩み中……


 ふうー……。

 悩むときは、風呂に限る。

 魔王、入浴中。

 昨日ドールの一件で流せなかった汗を、今日十分に流す。


 しかし、風呂とは素晴らしいものだ。湯気と共に、汗と老廃物質と疲労が浄化されているように感じる。フッフッフ、笑みがこぼれてくるわ。

 いろんな意味で、実にちょうどいい場所に、地下室があったものだ。


 ……しかし、少しだけ妙だな。この温泉から、少しの悪寒を感じるような。温泉で悪寒というのも変な話だが……俺が悪寒を感じるということは、この温泉は、何らかのマナを含んでいるということだ。このマナは、おそらく水生生物性のマナだ。それはつまり、何かしらの生物がこの温泉の源泉に生息しているということになる。


 俺は手で少し水をすくってみた。

 よく、本当によく見てみれば、極小のプランクトンがちらほら水の中に見受けられる。魚は流れ込んできていないが、源泉にはプランクトンのほかに、植物も生息するものと見ていいだろう。


 その源泉の正確な距離は掴めない。それほどまでに遠い。感覚的に、おそらく百メートル以上の壁の向こうだろう。

 遠くとも、精度の悪い俺のマナ感知でも見つかるほどの源泉。源泉はそれなりに巨大か、豊富なマナを含んでいることになる。


 俺がこの温泉を作るときに感知したのは、源泉のほんの手前側の水中のマナだ。その奥がどうなっているか、今の俺ではつかめない。


 しかし……一つ策がある。やってみるか。


 俺は自分の髪の毛をひとつ抜いて、それにマナを纏わせた。それを湯口に放り込む。

 マナを操り、髪の毛をマナで動かして、水流を遡らせる。魔王となれば、こんな芸当も余裕よ、フワーハッハッハ!

 俺のマナを動かす距離の限界まで来た所で、次に髪の毛を通してのマナ操作に切り替え、水流を遡る。

 さーて、これでどこまで行けるか。マナのせいで地味に頭皮に悪寒があるな。


 どうやら髪の毛が水流を抜け、源泉にたどり着いたようだ。水の抵抗の感覚がなくなり、髪の毛を動かすことが容易になった。


 距離として、水路はおよそ149メートル。

 髪の毛を通してのマナの操作はまだ余裕なようだ。


 次に、髪の毛をできるだけ上の方に動かす。

 水の出入り口から、およそ5メートルのところに水面があった。そのさらに5mほどのところに天井があることも分かった。意外と広い空間であるようだ。


 しかし、周りの様子はいまいちわからない。さすがに髪の毛だけでは俺がやったような周囲の探知はできない。マナの流れは感じないし、風が漂っているわけでもないので、それによって周囲の環境を知ることもできない。


 まずは髪の毛をまっすぐ前方に動かしてみる。

10メートル進んだところでマナ操作の限界の距離に差し掛かった。一度戻し、左右の距離も試してみる。

 右は3メートル、左は7メートル進んだところで壁にあたった。後ろは12メートルで壁にあたった。

人が入るのに十分な空間だ。と言うか、おそらくこれは洞窟だろう。


俺が目覚めた渓谷の上あたりからこの洞窟を目指して掘れば、たどり着けるかもしれない。

 これに関しては、あとでドールに相談してみるとしよう。


 そろそろ体もあったまってきた。もう風呂から上がるか。


 魔王、着替え中……


 風呂から上がると、ドールはダイニングの机で、レキシカボタニアを読み進めているところだった。


 「おかえりなさいませ、フズリナ様。温泉はいかかでしたか」


 温泉と言うものは、なかなかどうして素晴らしい。つくったかいがあったというものだ。

 それに、風呂で収穫もあった。


 「それはなんでしょう?」


 髪の毛にマナを纏わせて、温泉の源泉をたどってみたのだ。俺のマナ操作では、距離に限界があるからな。


 「そうですか」


 すると、源泉はそれなりに広い洞窟にあるらしいことが分かった。

 149メートル壁の向こうだが、たどり着くことができれば、なにか得られるものがあるかもしれない。

 「そうですか」


 しかし、周りの景色などは分からなかった。源泉に生物が生息していることは分かったが。

 目玉でもとって水流を遡らせることができればよかったんだがな。


 「そうですか。フズリナ様は、髪の毛に神経でも通っているんですか?」

 マナを通して疑似的に感覚を再現しているだけだ。

 そうだ、ドールよ。そちらは何か、収穫があったりしないのか?


 「ありました」


 あったのか。


 「本当にそれであったかどうかは分かりませんが……マナの流れらしきものを、感じることができました」


 なんと。それは真か?


 「はい。それを利用して、この地下室周辺の地形を、ある程度予測することができるかもしれません」


 なんと! それは大きな収穫だ、ハーッハッハ!


 「そこで、フズリナ様が来てから行おうと思っていたことがあります。フズリナ様の助言をいただこうと思いました」


 ほう、申してみよ。


 「この地下室を中心に、地中の立体地図の形成を行おうと考えています。このように」


 ドールは手を広げ、体の前に、ホログラムで構成された地下室の立体構造を形成した。


ダイニングを中心に、南側に室内農園、東側に骨主人の部屋。そして室内農園の東に温泉。落盤で塞がれた地上への出入り口は、ダイニングから室内農園への入口の東側、つまりダイニングの南側の壁の、東側にある。


 なかなか器用なことができるものだな。


 「高性能ハイスペックですので。この地下室を中心に、マナの流れを元に地形を形成していきたいと思っています」


 なるほど。それで助言と言うのは、付近の地形についてのものか?


 「はい。マナを操る距離に限界があると聞きましたが、付近の地形ならば、フズリナ様の方が精度が高く探知ができると思いましたので」


 お前が形成した地形の答え合わせをしろと言う事か?


 「はい」


 ならば、地形を一度形成して見せよ。


 「かしこまりました。では……」


 地下室のホログラムの周りに、模様が浮かび上がり始める。そしてまたその外側にもいくつかの模様が形成され、少しずつ全体が小さくなっていき、さらにまた外側に新しい模様が形成される。


 ドールよ、この模様は鉱石のものか?


 「はい。もう間もなく形成が終わりますので、しばらくお待ちください」


 最終的に、ホログラムは地下室を中心とした直径約1メートルの球体の立体映像になった。少し上の方が切れているのは、結界のマナ遮断によるものだろう。

 100分の1程度の縮図だろうか。

 なかなか見事なものだ。


 「形成が終わりました。この地形図の直径は、実際の大きさでは100メートルほどの大きさです」


 俺のレーダー式の探知でも半径数十メートルの探知が限界だというのに、ここまで簡単に全体の把握をやってのけるか。


 「初めてやるものですので、現在試行錯誤中です。この地図は全体を探知して少しずつ解像度を上げる方式ですが、これでは遠い場所の解像度が低くなります。しかしフズリナ様が言ったレーダー式の探知と言うものも、解像度が高くなる代わりに、探知と演算に時間がかかってしまいます。フズリナ様のやり方とは違い、集中して探知するやりかたですが。マナというものは万能のように見えて、その代わりに使い勝手が難しいもののようです」


 その通りだ。人間の中でも、魔法を扱えるものはそこら中にいるわけではなく、限定されていた。

 その上、マナの流れを感じ、可視化されられるものは、さらに限定されていた。

 探知魔法ではなく、マナの流れを直接感じて地形を把握するなど、人間にはそうそうできるものではない。


 「それでは、高性能ぶりがより露呈するわけですね」


 ドール、貴様時々ナルシストっぽくなるよな。

 まあいい。それでは、地形図の補正へ行くか。


 「はい。よろしくお願いいたします」


 確かに、外側の鉱石の描写がかなり曖昧だな。

 一度レーダー式の探知をやってみて、この地形図と重ね合わせてみたらどうだ。解像度がもともと高い部分の情報は切り捨て、曖昧な部分の情報だけ拾って補正をしてみたらどうだ?


 「かしこまりました。やってみます」


 すると、みるみるうちに、地形図の不鮮明だった部分がはっきりと描写された。


 「これで、今後は効率よく地形図を形成することができそうです。レーダー式の探知ならば、さらに広範囲の探知も可能です」


 地形図が一回り小さくなり、十数秒かけて、その外側に新たな部分が追加された。


 「これで、直径が200メートルほどになりました」


 それでも、俺が探知した水源には届かぬか。


 「今はまだ探知できる範囲に限界があります。しかし、実像化が難しい範囲にあるものでも、どこに何があるのかぐらいは分かりそうです」


 ふはは! なんと素晴らしい! では、この近くに巨大水源のようなものはあるか?


 「はい。おそらくフズリナ様が探知したと思われる巨大水源は、このあたりにあるかと予測します」


 温泉の部屋のずっと先の、ホログラムが描写されてない範囲に、大きい青いポイントが表示された。


 「距離は、温泉の部屋から150メートルほどの場所です」


 ならば間違いはない! フワーッハッハッハ! マナの探知だけだが、もうこの段階まで来るとは!


 「さらに離れた場所でも、何がどこにあるか、大まかな位置と情報を確率的に予測することも、おそらくは可能です。現段階ではまだプログラムが実用的な段階まで完成していません」


 フワハハハ! 今はもうその段階で十分よ! 有効活用できなければ、宝の持ち腐れというものだ。

それに、いきなり大きなことを達成したことで、周りの些細なことに気づかないということも起きかねんからな。まずはできる範囲で良い。


 「かしこまりました」


 そも、俺たちの目的は、ボタニア式魔術をお前に会得させることであるからな。ここまでマナの流れを感じ取れるようになったのは都合がいい。

 では、ボタニア式魔術を行う準備に取り掛かるとしよう。


お読みいただきありがとうございます。原作様と違ってこっちは小説なのに投稿頻度が遅すぎるのはいかがなものかと怖がってます。がんばります。


以下余談

YASUDAさんの原作と違って、魔王様が作業する時間が圧倒的に少ないので、ストーリーの進行の仕方と、その他設定を考えるのがまた楽しいです。

こっちの魔道人形は原作様より感情的な場面が多い気がする。

あとこっちの魔王様は原作の魔王様と比べてあんまり笑ってない事に気が付いたので、今後はもっと楽し気にさせたい所存です。


(二次創作の癖にいろいろ語ってごめんなさい)

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