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神隠しで異世界に  作者: もふっとな
第二章
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水晶

夜中。王宮奥の一室にはバルクとルッツとクラヴィクスの姿があった。

バルクは1枚の紙を2人に見せ笑う。


「こっちは漸く尻尾を掴めそうだ。ルッツ、クラヴィクス報告を」

「明後日10時に一緒にいるよう願われた」

「おぉ、色男だな。そのまま一緒にいてやれ」


苦々しそうにバルクを睨んだルッツは、分かってるよ……と不服そうに呟いた。


「ディアナの様子は?」

「詰所から出す訳にはいかないから、あれだけど……まあ、不自由なく過ごせてると思う」

「そりゃ良かった」

「……私は毒を入れた方法を報告しよう」


クラヴィクスが部屋の奥に控えている側近を呼び、目の前で紅茶を淹れさせる。

そのまま簡易キットで調べさせたが、何の毒物も出ない。

そのまま下がらせ、クラヴィクスが紅茶に手を翳す。

するとみるみるうちに黒くなっていき、側近が慌てた様子で近付いてきた。


「君は何の問題もない。君が調べた直後に私が毒を入れただけだ」


クラヴィクスは人差し指の先に魔法で水を作り、その中に同じように魔法で黒い水滴を混ぜていく。

そして遠くにある窓に向けて飛ばした。

水はばしゃん!と弾け、黒い水滴は窓や周辺に散っていく。


「遠くからでは正確に狙えないとしても、このように弾けさせれば辺りに散る。今は水で分かりやすくしたが、見えない毒などどこにでもある。他の紅茶にも入っていたのだろう?」


ルッツが頷き、どこから狙われたんだ?とクラヴィクスに問いかけた。


「廊下だ」


不機嫌そうに言い放ったクラヴィクスの言葉を聞くに、庭が見えるあの廊下から放たれたということだ。


「へぇ……誰に当たるのかも分からなかったってヤツね……」


ルッツはクラヴィクスの答えに、自分の胸の奥で怒りが湧いてくるのを感じる。

その様子を見ながら苦笑いをみせたバルクは、こほんと咳払いをした。


「証拠は揃って来ている。残りは明後日だ。そう言えば由良はどうしてる?大丈夫なのか?」

「クラヴィクスと喧嘩中。今はユリウスと一緒にディアナが無実の証拠を集めてるよ」

「喧嘩ねぇ……」


バルクがニヤニヤとクラヴィクスを見る。


「喧嘩などしていない」

「そうだなー。巻き込みたくないから、わざと仲違いしたように見せただけだもんなー」

「そりゃ、理由も言わず不機嫌そうにされたら、由良は傷ついただろうな。しかしユリウスと一緒となると……妃コースか」


うんうんと頷く2人に、もう何も言うまい……とクラヴィクスは深いため息を吐いた。



***



***


クラヴィクスに会うのはまだ気まずい……と思い、昨日に引き続きユリウスと一緒にディアナについて調べていく。

出てくるのは、ディアナが無実だと思う!という声ばかり。

変わりに出てきたのはマグダレーネについてだった。

庭にある池の近くに座り、2人で話をする。


「辺りを気にしながら歩く。由良がどんな紅茶が好きか聞いて回る………」


ユリウスが整理するように呟いているのに頷きを返していると、ああ!と思い出したように叫ばれた。


「シェフが、変な水晶持ってたって言ってたな」

「変な水晶?」

「そう。青っぽかったけど、一瞬黒く濁ったように見えて……って、どうした?由良?」


ディアナが言っていた水晶はもしかしたら……とユリウスを見る。


「ディアナが言ってた。夜中、水晶を持った人がいたって……客間の映像見てたって……!」


ユリウスの袖を引っ張り伝えると、グッとその手を握られた。


「危険な気がする。直ぐにクラヴィクスの所に行こう」

「でも……」


まだ気まずい……と俯く由良の肩にソッと触れたユリウスは、迷った素振りを見せながら由良に問い掛けた。


「由良はクラヴィクスの所に行くの、何が嫌なんだ?」

「……頭冷やせって」


初め、真意なんて調べようともせずにクラヴィクスに怒っていた。

その時のクラヴィクスの瞳が忘れられない。

嫌われる覚悟でディアナのことを怒ったのに、実際そうなるとしたらと考えると、心臓が痛くなっていく。

胸を押さえユリウスを見ると、ユリウスの瞳が切なそうに揺れた。


「大丈夫。クラヴィクスは怒ってないと思う」

「どうして?」

「……勘!」


ぶっきらぼうに言い放つユリウスが、何だか面白くてクスクスと肩を揺らす。

行こう!と先を行くユリウスに続き、庭を後にしようとしたけれど、足が前に進まない。

ユリウスの名前を呼ぼうとしても、誰かに口を塞がれているような感覚がして声が出せない。

ユリウスが、角を曲がり姿が見えなくなった所で、由良は意識を失ってしまった。




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