マグダレーネの目的
バン!と勢い良く扉が開かれ、クラヴィクスは不機嫌そうに、ルッツはギョッと扉を見た。
「ユリウスどうした?」
息を切らし、今にも泣き出しそうな顔で2人を見たユリウスは、由良が……と小さく呟く。
ガタン!と大きな音を立てながら立ち上がったクラヴィクスは、真剣な瞳でユリウスを見る。
ルッツはユリウスを落ち着かせるように背中に手を置き、先を促す。
「庭で話してて、クラヴィクスの所に行こうって歩き出したんだ。てっきり着いて来るって思ったんだけど、角を曲がっても足音が聞こえなくて……」
「見たら誰もいなかったって?」
「うん。どうしよう……俺、どうすればいい?」
「落ち着けユリウス。…まだ時間はあった筈だけど……」
クラヴィクス達の見立てでは動くのは明日だった筈だ。
なのに何故事を急いたのか。
「ユリウス。君たちはどんな話をしていた?」
「マグダレーネさんについてだよ。どんな行動をしていたかと、あと、水晶について」
「水晶?」
「由良が、ディアナがその水晶を見たって言ってたって……」
それか……と呟いたクラヴィクスは、青ざめた表情をするルッツに視線を向ける。
「ディアナは」
「確認する」
ユリウスから離れ走り出そうとしたルッツだったが、騎士の1人がルッツさん!と走ってきたことで立ち止まる。
「詰所にいたディアナさんが、少し目を離した隙に消えました!」
「っ!」
声を詰まらせたルッツが、唇を噛み締めながら息を整える。
「直ぐに探せ。こちらも探ってみる」
「恐らくマグダレーネが持っている水晶はかなり危険な代物だ。持っている事実がバレたら、見た者を殺すことすら厭わないだろう。探す際は魔法を封じる道具も持っていけ。他に見た者がいるなら結界の強固な部屋に避難させろ」
眉間に皺を寄せ指示を出すクラヴィクスに、騎士はスッと敬礼をし去っていく。
騎士が直ぐ様行動に移す様子や、クラヴィクスの様子。先ほどのルッツの様子を見ていたユリウスは、自身の未熟さを思い知ったようで苦々しそうに床を睨む。
「ユリウス。君の身も危険だが……」
「俺には由良を1人にした責任がある。行かせて下さい。もう、取り乱しません」
「分かった。ただし、前線に出ようとするな」
「はい」
頷いたユリウスを後ろに下げ、クラヴィクスは由良の気を探る魔法を唱える。
途中、騎士が室内に入ってルッツに何やら報告していたが、気にすることなく気配を探っていく。
「……見えた」
由良の気が見え息を吐く。
由良の傍にもう1人いるが、恐らくディアナだろう。
そう告げると、ルッツの表情が少しだけ柔らかくなった。
「で、そっちは」
「ああ、バルクの読み通り、マグダレーネの父親が研究室に置かれてた資料を盗もうとしていたところを、現行犯で捕まえたみたいだ」
元々サプリメント開発なんて興味が無かったのは見え見えだった。
恐らく横取りをし、他国に売りつける算段だったのだろうが、人の見る目があるバルクとクラヴィクスにはお見通しだった。
偽の情報だけでは足りなかったのだろう。
研究室に忍び込み、待機していた騎士に捕まったようだ。
「問題は娘の方か」
父親があれなら娘も……と調べてみると、興味深い情報が出てきた。
王宮に対する嫌悪感。
魔力を欲する理由。
それら全てが、父親より危険だとバルクは読んだらしく、どうせなら親子共々捕まえようとした為に、あの下らなく突っ込み所が多すぎる芝居の幕があけた。
「強い魔力なんてクラヴィクスが欲しいって言ってるもんだしな」
「えっ?魔力が欲しいって、なんで?」
ユリウスの問いに2人は顔を見合わせ、ルッツがその問いに答える。
「マグダレーネは自分の母親と、婚約者を甦らせようとしている」
「えっ?そんなこと出来ないよな!?」
目を丸くさせ驚くユリウスに軽く頷く。
「マグダレーネ自身から聞いたんだ。その為にはクラヴィクスの魔力が必要だってな」
ここまで引き出すの苦労したんだぞ……と笑うルッツに、ユリウスは漸く合点が言ったのか、驚きの声を上げた。
「まさか、その為にマグダレーネさんと仲良く……?」
「裏にありそうな情報を引き出してこいって2人とも煩いんだ」
肩を竦めたルッツに、ユリウスは安堵のため息を吐いた。
「じゃあディアナのこと嫌いになった訳じゃないんだな?」
「はっ?そんなことあるわけ無いだろ!?ただ、今回は周りにいると気が散るというか……」
だからディアナと仲良くしていないようにマグダレーネに見せていた。
その真意が分かったユリウスは、クラヴィクスの瞳の奥にある真意にも気がつきため息を吐く。
「なるほど。あーあ、俺勝てないじゃん………。で、ルッツは裏にある情報分かったの?」
「ある程度は。さて、そろそろ行くか」
ルッツの言葉にクラヴィクスとユリウスは頷き、由良救出の為に動いていった。




