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とある勇者の溺れ待ちをしている人魚

挿絵(By みてみん)

※「とあるハンサムな青年と湖の女神」登場キャラ

とある深い海の底。


一人の人魚が大きなあぶくとともに溜息を吐いた。


「はあ・・・いつになったら勇者様は溺れてくれるのかしら?」


「アンタ、何言ってんの?」


友人が眉をひそめる。


サンゴ礁に腰掛けてゆらゆらと尾を振っている友人に

彼女はやや勢い込んで話をする。


「だってあたしたち人魚と言えば、

溺れた勇者様を助ける役回りでしょ?

なのにいつになっても勇者様は溺れる素振りもない。

これって詐欺だと思わない」


「言っている意味がよく分からないけど」


やや呆れたように嘆息して、

友人が鱗の並んだ尾をパタパタと縦に振る。


「世界を救おうとしている勇者が

溺れても困るでしょ?」


「でもそれじゃあ恋に発展しないじゃない」


「は?」


「だから溺れていた人が人魚に助けられて、

それがきっかけで二人は恋に落ちる。王道じゃない」


「・・・それって勇者じゃなくて王子様じゃない?」


「どっちも似たようなものでしょ?」


半眼になり「全然違うけど」とぼやく友人を無視して

彼女は不満にクルクルと旋回しながら独りごちる。


「ああもう・・・このままじゃあ勇者様と

恋に落ちる前に干からびちゃうわ。もうこうなったら

勇者様を海に叩き落としてやろうかしら」


「止めなさいよ。死んじゃうじゃない」


「死なないわよ。あたしが助けるんだから」


「どっちにしろ止めなさい。

勇者の仲間に報復されるわよ」


「分かってるわよ。言ってみただけ。

だけどこれじゃあ勇者様と会うことさえ――」


さらに愚痴を続けようとしたところで

「おーい」と遠くからタコがこちらに泳いできた。


「大変だ! むこうで誰かがおぼれているみたいだぞ!」


「ええ! もしかして勇者様が!」


パアッと表情を明るくする彼女に、

友人が呆れつつも口早に言う。


「喜んでいる場合じゃないでしょ。

まだ生きているなら助けてあげないと」


「そうね! ああでもでも、こんな普段着で

会いにいったら失礼じゃない!?

ドレスを着たほうがいいかしら!?」


「人命救助にドレスコードなんてないわよ」


「まあいいわ! 待っていてね勇者様!

未来の花嫁がすぐに助けに行ってあげるから!」


そう歓声を上げて

彼女は意気揚々と泳ぎ始めた。



======================



現場についてみると

確かに一つの人影がおぼれていた。


すでに気を失っているのか体を弛緩させて

ゆっくりと海の底へと落下していく影。

その人影は――


緑色の肌に頭から角を生やしていた。


「・・・えっと、勇者様って見たことないけど

こんな姿なのかしら?」


沈んでいく土左衛門(まで死んでないが)を

眺めつつそう呟くと、友人が呆れたように

「そんなわけないでしょ」と肩をすくめた。


「こんな緑肌の人間なんかいないわよ。

これは魔族よ。魔族」


「えええ・・・勇者様じゃないの?」


あからさまに落胆して見せる。

肩を落とす彼女に友人が淡々と尋ねる。


「それで・・・これ助けるの?」


「うーん・・・どうしよっか?

勇者様じゃないなら放っておく?」


「そうね。魔族と関わるなんて面倒そうだし」


「ああでも待って!」


引き返そうとした友人を呼びとめて

彼女は眉間にしわを寄せた。


「この魔族・・・海に落ちたってことは

誰かと争っていたのかも知れないわ」


「・・・まあそうかもね」


「もしかしたら勇者様かも!

ってことは、この魔族と勇者様はお知り合い!?」


「知り合いって言うのかしら?」


「何にせよ勇者様の居場所を知ってるかも!

魔族を助けて勇者様の居所を吐かせようよ!」


「すっごい気乗りしないけど」


「いいからいいから。魔族を

陸まで引っ張るから手伝ってよ」


ニコニコと微笑む彼女に

友人が深々と嘆息した。



==========================



「というわけで魔族を陸まで運んだわ」


「そうね。紐を首に括りつけて引っ張るものだから

鬱血して顔がどす黒く変色しちゃってるけど」


まるで首吊り死体のように青ざめた魔族

(状況だけ鑑みれば似たようなものだが)を

見下ろしつつ、彼女がぐっと拳を握る。


「それじゃあ魔族から勇者様の居場所を聞き出そう」


「どうやって魔族を起こすの?」


友人からの何気ない問い。

それを聞かれ、彼女は拳を握り込んだまま

首をちょこんと傾げる。


「えっと・・・目覚まし時計か何か?」


「寝坊しているわけじゃないんだから」


友人が顔を渋くしつつ、

魔族の口元にそっと手を当てる。


「・・・呼吸をしてないわね。

一般的な対処としては人工呼吸ってことになるけど」


「人工呼吸!?」


彼女はぎょっと目を見開く。


「それって・・・つまりキスするってこと!?

この魔族と!?」


「キスって言うより応急処置よ」


「でもやることはキスと同じでしょ!?」


「まあそうだけど」


「いいいいい、いやよ!」


身震いしながら頭を振る。


「あたしのファーストキスは好きな人の・・・

勇者様のために取っておくんだから!」


「そう言っても、このままじゃこの魔族死ぬわよ」


「うう・・・それはそうだけど・・・」


ちらりと気絶している魔族を見やる。


顔面を鬱血させて、かつ頭部や体がパンパンに

膨れさせている魔族。強い水圧から解放されて

体が内側から膨れているのだ。


ハッキリと――みにくい姿だ。


「・・・あの・・・あたしの代わりに

この魔族に人工呼吸してくれない?」


「私が? 冗談。死んでも御免よ」


「お願い! 勇者様に会うためなの!」


「私は別に会いたくないもの。

勇者に会いたいなら自分で人工呼吸しなさい」


「ううううう・・・ううううう・・・」


頭を抱えて悩む。

悩みに悩み――悩み抜いて――


彼女は決断した。


「・・・そう言えば、

ホホジロザメのホーちゃんが

最近新鮮なお肉を食べてないって

愚痴ってたよね?」


「・・・そうね」


魔族の首に括りつけた紐の端を握り、

彼女は空に浮かんでいる太陽を見つめた。


「もうしばらく待っていてね勇者様。

時間は掛かるかもしれないけど、

必ずあたし・・・貴方に会いに行くから」


彼女はそうキラキラと瞳を輝かせると

魔族を引きずりながらまた海の底へと潜っていった。




オチが弱いかな。


ブックマークと評価一件につき、10+2話書いてみたいと思います。

もう少し延長させてやろうという方、

よければブックマークと評価をいただけるとありがたいです。


ブックマークつけるか迷ったときはつけてみましょう。

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