とある人間と魔族の浦島太郎
むかしむかしあるところに
漁師の人間がいました。
人間は名を浦島太郎と言いました。
ある時、浦島太郎が海辺を歩いていると
少年たちが騒いでいるのを見掛けました。
「うら! うら! うら! うひひひ!」
「ぎゃははは! こいつビビってんぜ」
どうやら棒切れで何かをイジメているようでした。
浦島は少年たちに近づきます。
少年たちがイジメていたのは
一匹の魔族でした。
「これこれ、坊やたち。
そんなことをしてはいけないよ」
浦島が少年たちをそう窘めると
少年たちは浦島にこう言いました。
「あ? なんだおっさん。文句あんのかよ?」
「魔族なんてゴミムシ。生きる価値なんてねえんだ。
イジメたって何の問題もねえだろうが、ああ?」
少年たちの言葉に
浦島は優しく微笑みました。
「確かに君たちの言うことは、
何の疑いようもなく一片の曇りもなく正しい。
しかし例えゴミムシの魔族でも命は命。
悪戯に奪って良いものではありませんよ」
「んだテメエ。ぶっ殺されてえのか?」
凄む少年に浦島は財布を取り出しました。
「・・・これで勘弁してください」
少年が浦島の財布を奪い取り
ニヤニヤしながら去っていきました。
どうやら分かってくれたようです。
「魔族さん。大丈夫ですか?」
命の恩人である浦島に
魔族は涙ながらに感謝します。
「ああ、なんと心優しき人間でしょう。
私は人間の村を皆殺しにしようと
魔王城から来たのですが、貴方の
優しさに改心しました」
「いえいえ、当然のことをしたまでです」
「どうかお礼に魔王城に案内させてください」
こうして浦島は
魔族に案内されて魔王城へと向かいました。
魔族の背中に乗って森を走ること暫く
何とも豪華絢爛でオドロオドロシイ魔王城が
目の前の現れます。
「やあ、お待ちしていました、浦島さん」
浦島を出迎えたのは
魔王城の主である魔王でした。
「私の部下を助けてくれたようで、
城の中にお礼の準備をしております。
どうかお上がりになってください」
浦島は魔王の言葉に甘えることにしました。
城の中には
何とも豪勢な食事が用意されていました。
浦島はとても美味しく食事を頂きました。
さらにおもてなしとして
四天王と十三鬼将軍の舞い踊りが行われ
浦島はとても楽しみました。
そして瞬く間に時間が過ぎていきました。
「やあやあ、本当に楽しませてもらいました。
ではそろそろお暇させていただきます」
「そうですか。それではこの玉手箱を
お土産にお持ちください」
浦島は魔王から玉手箱を頂くと
「ありがとうございます」と頭を下げました。
「しかし頂いてばかりでは申し訳ない。
私からも魔王さんにお礼を差し上げたいのです」
「それはそれは、お気を使わずとも結構ですよ」
「いえいえ、ぜひ受け取ってください」
浦島は一呼吸の間を空けて――
邪悪に微笑みました。
「人間の――正義の鉄槌をな」
この一言を合図に
魔王城に人間の軍勢が現れました。
「な、なんだと!? これは一体!」
「くきゃははっは! バカな魔族どもめ!」
浦島は大いに笑うと
その笑みを裂けるように深くしました。
「初めから魔王城を見つけ出すための芝居だったのよ!
あの魔族をイジメていたガキどもも俺たちの命令で
動いていたのさ!まんまと騙されやがって!このカスが!」
「貴様――この人間がああああああ!」
魔王はプリプリと怒ります。
しかしもはや手遅れ。
瞬く間に魔王城は人間の軍勢に侵攻され――
ついには魔王も人間に打ち滅ぼされました。
「ぐわああああああ! おのれ・・・おのれ
人間めええええええええええええええ!」
「ひゃあっはっはっはっは!テメエの馬鹿さ加減を
地獄で後悔するんだなあああああああ!」
浦島は上機嫌に笑います。
そして魔王は死んでしまいました。
魔王の亡骸を楽しそうに蹴る浦島に
軍の偉い人が近づいて行きます。
「やりましたね、浦島さん」
「軽いもんよ。こんなカスを騙すなんてな。
これで世界を浄化できたってもんだ」
「そうですね。ところで浦島さん。
その箱は何ですか?」
「ん? ああ、これか。魔王が渡してきやがったんだ。
土産だとか抜かしていたな。カスどもの土産だ。
どうせ大したもんじゃねえさ」
浦島はそう笑いながら
魔王から渡された玉手箱を開けました。
すると――
玉手箱からもくもくと白い煙が出てきました。
「ぶわ、これは・・・?」
白い煙を手で払い
玉手箱の中を見ます。
玉手箱の中には――
ドライアイスとアイスクリームが入っていました。
「アイス・・・ですね?」
「・・・ああ」
「あれ・・・これは手紙?」
アイスの上に乗せられていた
一枚の手紙。そこには――
『浦島さん。また魔王城に遊びに
来てくださいね。魔王より』
そう書かれていました。
手紙を読んで浦島は黙ってしまいます。
長い沈黙が続いて
軍の偉い人が浦島に言いました。
「浦島さん・・・俺たち間違ってませんよね?」
「・・・当然だ」
「俺たち・・・世界を守ったんですよね」
「・・・そうとも。俺たちは・・・
世界を守ったんだ・・・
恐ろしい魔族の連中から・・・」
浦島はそう言います。
しかしその浦島の頬には――
一筋の涙が流れていましたとさ。
めでたし、めでたし
教訓:善悪とは何か?
ブックマークと評価一件につき、10+2話書いてみたいと思います。
もう少し延長させてやろうという方、
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