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とある概念が擬人化した少女の悲しい真実

挿絵(By みてみん)

※「とある風となった男と魔族のトライアスロン」登場キャラ

深い森の中を魔族が歩いていると、

ふと目の前に人間の少女が現れた。


「ぐははは。ここで会ったが百年目。

人間め。捻り潰してやるぞ」


いつものように魔族がそう言い放つと、

少女が不満げに顔をしかめた。


「わたしが人間? ふん。

確かにこの姿ではそう見えるでしょうね」


「・・・ん、どういうことだ?」


きょとんと首を傾げる魔族。

疑問符を浮かべる魔族に、

少女が自身の胸をパンと叩く。


「わたしは人間などという下等な生物ではないわ。

いいえ。そもそもわたしは生物ですらないの」


「生物ではない? では貴様は何なんだ?」


「わたしは――擬人化された者よ」


「ぎじん・・・何だって?」


ますます首を傾げる魔族に、

少女が朗々と言う。


「知らないの? 無知ね。

擬人化とは人間でないものが

人間の姿になることよ」


「人間でないものが人間の姿に?」


「そう。犬や猫から始まり、

果ては戦艦や赤血球や白血球までもが

擬人化されている。都道府県だって

戦国武将だってそうなのよ」


「トドウフケンとかセンゴクブショウは

よく分からんが・・・なんとなく

センゴクブショウは擬人化ではなく

女体化ではないのか?」


「どちらにせよ、わたしはそう言う存在なの」


「つまり貴様は人間ではなく別の何かということか。

それで貴様は一体何なんだ?」


「聞いて驚きなさい。わたしは――」


たっぷりの間を空けて

少女が威風堂々と言う。


「『角に足の小指をぶつけちゃった』という

概念が擬人化した存在なの!」


―――-

―――-

―――-

―――-


ながい静寂が流れた。


少女の言葉を慎重に吟味して

魔族がおそるおそる口を開く。


「それは・・・何だ?」


「だから『角に足の小指をぶつけちゃった』という概念よ」


「だからそれは何だ?」


半眼になる魔族に

少女が腕を組んで大きく頷く。


「概念の擬人化は何も珍しくないわ。

昔からあることよ。それこそ神や仏だって

概念を擬人化したものだと言えるでしょ?」


「だとしてもなぜ足の小指?

そんな概念が擬人化したから何なのだ?」


「わたしに言われても困るわ。

ふと気付いた時にはわたしは存在していた。

でも分かるの。わたしがこの世界に

存在するには何か重大な理由があると」


「・・・とにかく貴様は人間ではないのだな」


魔族が溜息を吐いて

くるりと踵を返す。


「人間でないなら用はない。

というわけでさらばだ――うぐ!」


そう歩き出したところで

魔族に激痛が走る。


慌てて少女から離れようとしたため(恐かったから)

つい無造作に脚を投げだし――


木の幹に足の小指をぶつけてしまったのだ。


「ぐわあああああああ! いってえええええ!

くそおおおおお! しまったああああああ!」


ぶつけた小指を手で押さえて絶叫する。

目尻に涙を溜めながら魔族は思う。


(このタイミング・・・まさかこれは

擬人化されたあの女に原因があるのか?)


原因はきっぱりと自身の不注意なのだが

魔族はそう決めつけて少女に振り返った。


そして魔族は――

顔面を蒼白にする少女を見つける。


「そ・・・そんな・・・在り得ないわ」


狼狽を顕わにする少女に

魔族が痛みを堪えながらも首を傾げる。


少女が自身の手のひらに視線を落とし

声を震わせながら独りごちる。


「わたしは・・・『角に足の小指をぶつけちゃった』

という概念の擬人化のはず。わたしがここに

存在している限り、この概念は世界から消滅している。

なのに・・・どうして足の小指をぶつけたの?」


「・・・おい・・・何の話だ?」


「どうして・・・どうしてなのよ」


少女がぶつぶと呟いたその時――


「どうやら気付いてしまったようですね」


どこからか青年の声が聞こえてきた。


魔族が適当に視線を投げると

まるでそちらを見ることが分かっていたかのように

そこに一人の青年が立っていた。


青年がゆっくりと歩いて

狼狽している少女の目の前に立つ。


「まさかこんなにも早く真実に

辿り着いてしまうとは・・・

貴女は僕が考えているよりも優秀で

・・・そして不幸ですね」


「だ・・・誰よアンタは?」


「僕は貴女の疑問に答えるために

現れたのです。突発的な解説役。

その概念の擬人化こそ・・・僕です」


「解説役の・・・擬人化?」


「ですが僕のことはどうでもいい。

問題は貴女です。貴女が疑問に感じていること。

それは悲しいことに・・・事実です」


「・・・それって」


「そう・・・貴女は――

『角に足の小指をぶつけちゃった』という

概念が擬人化された存在ではないのです!」


青年から告げられた衝撃の事実に

少女が息を呑む。


ぐらりと力なく体を揺らして

少女が泣き出しそうな顔で言う。


「そ・・・そんな・・・それなら

わたしは・・・わたしは一体・・・

何だって言うのよ!」


「真実を貴女に告げるのは心苦しい。

しかし僕はやらなければなりません。

なぜならその概念が僕だから」


「前置きはいいわ! 早く教えて!」


「心して聞いてください。貴女は――」


青年が沈痛な表情で

その辛い言葉を吐き出した。


「『自転車こいでたら鼻に虫入ってきた』の

概念が擬人化した存在なのです」


「・・・うそ」


少女ががっくりとその場に膝を付く。

凍えるように震えている少女の指。

そして瞳。少女が頭を抱えて――



「いやああああああああああああああ

ああああああああああああああああああ!」



絶叫した――




ところで小指の痛みが引いたため

魔族はさっさと森の奥へと帰っていった。










布団の中で半分眠りながら考えるからこんなオチになるのです。


ブックマークと評価一件につき、10+2話書いてみたいと思います。

もう少し延長させてやろうという方、

よければブックマークと評価をいただけるとありがたいです。


ブックマークつけるか迷ったときはつけてみましょう。

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