とある7つ集めるとどんな願いも叶うドラゴソボール
「やめろ! やめてくれぇええええ!」
涙ながらに懇願する。
だが殺戮は止まることがない。
否。
こちらの懇願を嘲笑うように――
こちらの苦痛を逆なでするように――
こちらの憎悪を増幅するように――
魔族による殺戮は激しさを増していく。
村人の頭がぱっかりと割れる。
まるでスイカのようだ。
幼いころから苦楽を共にした親友。
それが冗談のように呆気なく息絶える。
「あ・・・ああああああああああああああ!」
赤い炎に焼け落ちていく村。
その光を眼球に写したまま――
俺は涙を浮かべてまた懇願する。
「殺してくれ! 俺を――殺してくれ!」
これほどの苦しみを――
これほどの悲しみを――
味わうのは耐えられない。
だが涙ながらのその懇願もまた――
邪悪な魔族の笑みに一蹴される。
「貴様は殺さん」
死よりも残酷な言葉。
それを吐き捨てて魔族が牙を剥く。
「人間の絶望こそが我らが魔族の糧。
精々この生き地獄の中、我らを楽しませろ」
「ああ・・・あ・・・・あああああああああああああ!」
喉が裂けんばかりに――
心臓が潰れんばかりに――
俺は絶叫した。
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魔族により村を滅ぼされてから3年。
俺はある奇跡を求めて旅をしていた。
七つ玉を揃えることでどのような願いごとも叶うという至宝。
ドラゴソボール。
長い旅の果てに、すでに六つのドラゴソボールは手に入れた。
残るドラゴソボールはひとつだけだ。
「情報によればこの神殿の奥にあるはずだ」
独りごちて神殿の奥へと進んでいく。
魔族がはびこる世界を旅する。
3年前。
ただの村人に過ぎなかった俺には
厳しい道のりであった。
だがその苦労ももう少しで報われる。
村を滅ぼした魔族を滅ぼす。
ドラゴソボールならばそれが可能のはずだ。
「みんな・・・すまない」
ドラゴソボールで村の人間を蘇らせる。
本来ならそれが最も叶えたい願いだ。
だが村を襲った魔族が生きている限り
同じ悲劇は何度でも繰り返される。
村を襲った魔族は強靭であり強大だ。
旅を続けることで成長した俺でも
自力で倒すことは不可能だろう。
ならばドラゴソボールで魔族を滅ぼし、
その後にドラゴソボールで村人を蘇らせる。
それが最も合理的であるはずだ。
「もうあのような悲劇は――繰り返させない」
神殿の中には恐ろしい罠と魔族が無数にあった。
それを命からがら退けていく。
神殿に侵入してより1時間。
3年にも及ぶ長い旅路。
その最後の冒険が終わりを告げて――
神殿の最深部にまで到達した。
だが――
「そ・・・そんな」
俺が愕然とした。
残り一つのドラゴソボール。
それは確かに神殿の最深部にあった。
祭壇に祭られているオレンジ色のボール。
だがそのボールの前に
予想外の影が立っていたのだ。
その影の正体は――
「3年ぶりだな・・・人間」
村を滅ぼした魔族であった。
「ああ・・・なぜ・・・なぜお前がここに」
村を滅ぼした魔族。
3年間と悪夢の中で笑っていた仇。
それを目の前にして俺は狼狽した。
眼球を震えさせる俺に、
魔族がクツクツと肩を揺らす。
「ドラゴソボールを探している男の噂を聞いてな。
その特徴からお前だということが分かった。
ゆえにこのボールの前に張っていたのさ。
お前が必ず現れると思ってな」
「う・・・うう・・・」
「このドラゴソボールで何の願いを叶えるつもりだ?
村人の復活か? それとも俺への復讐か?
まあどちらでも構わん。3年にもよる貴様の悲願。
それが奪われた瞬間のその顔を見ることが俺の目的だからな」
3年前と同じだ。
こちらの絶望を噛みしめるように
魔族がニンマリと笑う。
「貴様を生かしておいて正解だった。
実にいい顔をする。素晴らしいぞ。
だが少々出過ぎたようだな。
ドラゴソボールを頼ろうとする人間を
生かしておくわけにはいかん。
喜べ。貴様はここで――殺してやる」
魔族が肉厚の剣を鞘から引き抜く。
3年前、涙ながらにした懇願。
自分を殺して欲しいという願い。
それが今果たされようとしている。
しかし昔とは違う。
今は希望がある。
ドラゴソボールがある。
死ぬわけにはいかなかった。
「死ねえええええええええ!」
剣を振りかざして迫りくる魔族。
巨体のわりに恐ろしいほどに速い。
やはりまともに戦って勝てる相手ではない。
(それでも――諦められるか!)
俺は意を決すると――
魔族に向けて駆け出した。
「なに!?」
向かってくるとは予想外だったのだろう。
魔族の表情に僅かな驚愕が浮かぶ。
それが隙となった。
魔族の脇に飛び込む。
ワンテンポ遅れて魔族が剣を振り抜いた。
頭部を掠めていく刃。
それに背筋を凍えさせながら――
俺は魔族を横切り――
ドラゴソボールの前に立った。
「ぐ・・・しまった!」
魔族に焦りの色が浮かぶ。
俺は素早く腕を伸ばすと
祭壇に飾られていたドラゴソボールを手に取った。
これでドラゴソボールは七つ。
あらゆる願いが俺のものとなる。
「させるかあああああああああ!」
魔族が剣を振り上げて迫りくる。
願いを言う隙を与えない気だ。
俺は六つのボールを道具袋から取り出すと――
ボールのひとつを頭上高く掲げた。
「ドラゴソボールよ!
俺の願いを叶えたまえええええ!」
そう声を荒げて――
俺は――
「どっせえええええええええええええええ!」
頭上に掲げていたドラゴソボールを
魔族に向けて全力投球した。
「ぶへえええええええええええええ!?」
投げたドラゴソボールが魔族の顔面にめりこむ。
鼻血を噴いて倒れる魔族。
俺は六つのドラゴソボールのひとつをまた手にして――
「どううううううりやあああああああああああああ!」
見本のような投球フォームから
ドラゴソボールをまた投擲した。
「ぶほうううう!」
魔族の眉間に剛速球のドラゴソボールが命中する。
頭蓋が割れる鈍い音を聞きながら
俺は次々とドラゴソボールを投球する。
「でい! やあ! はあ! とうりゃああああ!」
「がぶ! げぼ! げは! いやああああああ!」
魔族が泣き叫ぶ。
だが構わずドラゴソボールを投げ続ける。
最後のドラゴソボールを手にして――
俺はこれまでの旅路に想いを馳せた。
(見ててくれみんな! 監督! ジャーマネ!
俺はこの一球で――甲子園に行く!)
よく分からないことを考えながら
最後のドラゴソボールを投げる。
すでにボロボロとなっていた魔族に
ドラゴソボールが命中。
魔族が後方に吹き飛ばされて
その動きを止めた。
ドラゴソボールにより魔族が死んだのだ。
「・・・やった・・・やったぞ」
全ての願いが叶うドラゴソボール。
その力により――
魔族は死んだのだ。
「ありがとう・・・ドラゴソボール」
俺は遠い目をして
ドラゴソボールの奇跡に感謝した。
掴もうぜ! ドラゴソボール!
ブックマークと評価一件につき、10+2話書いてみたいと思います。
もう少し延長させてやろうという方、
よければブックマークと評価をいただけるとありがたいです。
ブックマークつけるか迷ったときはつけてみましょう。




