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とあるソーシャルディスタンスとリモート戦闘

挿絵(By みてみん)

※「とある天空城に住む天空の姉妹」登場キャラ

見るからに凶悪な魔族に向けて

俺は剣をかかげた。


「お前の悪行もここまでだ! 俺が成敗してやる!」


「ふははは! 人間ごときが大きく出たな。

いいだろう、退屈していたところだ!」


腰に下げていた剣を引き抜いて、

魔族がギラギラと眼光を輝かせる。


「貴様を殺して暇つぶししてやるぞ!

いくぞおおおおおおおお!」


剣を掲げて魔族が駆け出したところで――


「待て! これ以上は近づくな!」


俺はさっと手のひらをかざした。


「なんだ!? 今更怖気づいたか!?」


魔族の問いに俺は頭を振る。


「そうではない」


「ではなんだ?」


「ソーシャルディスタンスだ」


「ソー・・・なんだって?」


「ソーシャルディスタンスだ。

今は密を避けて一定の距離を取ることが

推奨されている。これはお互いのためなんだ」


「・・・むう」


魔族が剣を下して首をひねる。


「しかし近づかなければ戦えん」


「安心しろ。こんな時のために

リモート戦闘がある」


「リモート戦闘とな?」


「互いに離れた場所から行われる戦闘だ。

いくぞ! さあ構えろ!」


慌てて剣を構える魔族。


俺は自身の剣を頭上高く掲げて

裂帛の気合とともにそれを振り下ろした。


「やああ! ズバッシュ! ――はい!」


「はい?」


「何をしている! 俺が攻撃したんだ!

さっさとダメージを受けないか!」


「ダメージを受けろと言われても・・・

どうすればよいのだ」


「これだから素人は・・・

自分の武器で自分を斬れ」


「なんだと!?」


「これはリモート戦闘なんだ!

俺がつけるべきだったダメージを

お前がフォローするんだ!」


「しかし自分でって・・・」


「こういう時にこそ協力が必要なんだ!

さあ早くしろ!」


「ぐ・・・ぎゃああああああ!」


魔物が自分の剣で自分の腹部を斬る。

ダラダラと血を流す魔族に

俺はやや不満に眉をひそめた。


「ぬう・・・俺の攻撃ならばもっと

ダメージを受けるはずなのだがな・・・

まあいいだろ。最初はこんなもんだ」


「ぎぎ・・・おのれ・・・ならば次は俺の番だ!」


魔族が剣を高々と上げて

それを力強く振り下ろした。


「だああああああああああああああああああああ!」


「ミス。次は俺の番だ! たあ――」


「待て待て待て待て待て待て!」


剣を振り下ろそうとしたところで

何やら慌てたように魔族が声を上げた。


「なんだ!? 命乞いか!?」


「いやズルいぞ! なんだミスって!

なんで俺の攻撃だけ当たらないんだ!」


「ミスする時ぐらいあるだろ!

それともなんだ!? お前はミスをしない

完璧な魔族だとでも言うのか!?」


「そうはいわんが・・・どうして俺の時だけ」


「当たり判定は公平にしている!

グチャグチャ文句を言うな!

たあ! ズバッシュ! 会心の一撃!」


「だからズルいぞ!」


「ズルくない! 早く俺のダメージをフォローしろ!」


「ぐぐぐ・・・・ぐわあああああ!」


魔族が自身の体を袈裟切りにする。


目に涙を浮かべつつ魔族が叫ぶ。


「今度こそ俺の番だ! 

どぉっしゃああああああああ!」


「ヘス。とどめだ! 飛翔旋風轟――」


「待てぇえええええええええ!」


「次は何だ!?」


「ヘスって何だ!?」


「ミスの最上級だ!」


「聞いたことないわ!」


「リモート界隈では常識だ!」


「ぐぐ・・・もうやってられるかああああ!」


魔族がこちらに一歩大きく踏み出す。


「な・・・貴様近づくな!

ソーシャルディスタンスだぞ!」


「知ったことか! 横文字ばかり使いおって!」


「止めろ! こっちに来るな!」


狼狽する俺の目の前にまで近づいて

魔族がこちらの腕をガシリと掴む。


「さあこれで逃げられまい!

ふはははは! 貴様は終わりだ――」


「・・・やってしまったな」


ぼそりと言う。


「濃厚接触・・・俺は止めたはずだ。

もうどうなっても知らんぞ」


「・・・何を言って――!?」


こちらの腕を掴んでいた魔族の手が

突如どろりと腐り落ちる。


「があああああああああああ!?

な・・・なんだこれは!?」


「・・・俺は病に侵されているのさ」


「なんだと――ぐ、ぐはああ!」


魔族が血を吐き出して

全身にどす黒い血管を浮かび上がらせる。


苦しみ悶え始めた魔族に俺は淡々と告げる。


「ウィルス感染・・・俺を蝕んでいる奇病。

俺はこの病で――1週間前にすでに亡くなっている」


俺の目から血の涙が流れる。

皮膚がただれ落ちて骨が剥き出しとなる。


真の姿――動く死体(アンデット)

それを前にして魔族が表情を強張らせる。


「こ・・・こんな・・・」


「お互いのためだと言った・・・

ソーシャルディスタンスを説いた・・・

だがお前は俺に近づいた・・・

病を発症した俺に不用意に近づいた・・・

これはお前のミスだ・・・いやヘスだ」


「ぐ・・・が・・・」


ウィルス感染した魔族がばたりと倒れて――

そのまま息絶えた。




守ろう、ソーシャルディスタンス。


ブックマークと評価一件につき、10+2話書いてみたいと思います。

もう少し延長させてやろうという方、

よければブックマークと評価をいただけるとありがたいです。


ブックマークつけるか迷ったときはつけてみましょう。

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