とある命を燃やした先生とその二人の生徒
「先生!」
悲痛な声を上げる二人に、
彼は喉が割けんばかりに叫ぶ。
「来てはなりません! 二人とも!」
彼の声に、駆け出そうとしていた
生徒二人の足が止まった。
ギラリと正面を鋭く見据える。
彼の目の前には強大な力を有した魔族がいた。
彼の力をもってしても到底かなわぬ相手。
ゆえに彼は――
最後の賭けに出ることにしたのだ。
「うおおおお! おのれえええ!
人間め! この手を離さぬか!」
自身の頭を掴んでいる彼の手を
魔族が懸命に引き剥がそうとする。
だが強大な力を持つ魔族をもってしても
彼の手を剥がすことはできないでいた。
それは当然である。
その彼の手には――
彼の全生命力が込められているのだから。
「二人とも! よく聞きなさい!
わたしはこの魔族とともに――自爆します!」
二人の生徒が息の飲むのが分かった。
「自爆だと!? ふざけるな人間が!」
「貴様を倒すことができるのはこの技以外にない!
わたしとともに消え去るがいい!」
魔族の手にさらに力が込められる。
腕が千切れてしまいそうなほどの剛力。
だが彼は決して魔族を離そうとはしなかった。
「先生! 馬鹿な真似は止めてくれよ!」
「先生! 自爆なんてそんなの嫌だよ!」
彼は家庭教師であった。
優れた戦士や魔法使いを育てるのが彼の役目だ。
そしてその彼が育てていたのが
この二人の生徒であった。
ボサボサ頭の戦士を目指している少年。
バンダナを巻いた魔法使いを目指している少年。
二人は才能豊かな逸材だ。
だがまだ未熟である。
ここで魔族に殺させるわけにはいかない。
彼ら二人はきっと――
この世界を救う勇者となるだろう。
「よく聞いてください」
戦士の少年を見やり、
彼は最後の言葉を投げた。
「貴方の潜在能力は私をすでに超えています。
その力をこれからも高め多くの人を救ってください。
そして貴方がいつかこの世界に光をもたらすのですよ」
「……先生」
授業で決して涙を見せない戦士の少年。
その少年の瞳に涙が浮かんでくる。
彼はふっと微笑んで、
今度は魔法使いの少年を見つめた。
「わたしは鍛えた力は人のために使うべきと考えています。
貴方にもいずれその意味が分かる時が来るでしょう。
そしてそれを理解した時、貴方はもっと強くなれるはずです」
授業を真面目に取り組まない気の弱い魔法使いの少年。
その少年の顔はすでに涙でグシャグシャに濡れていた。
悔いなどない。
この二人を救うということは
世界を救うことと同義だ。
そのためならばこの命――
喜んで捨てよう。
「止めろ! 止めろぉおおおおおおお!」
魔族が吠える。
彼は集中力を極限にまで高め――
その命を燃やした。
「自己犠牲呪文!」
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MPが足りません――――
長い間を挟んで、
彼はゆっくりと魔族から手を離した。
冷たい目で彼を見つめている
魔族と二人の生徒。
彼は冷たい風に吹かれながら――
「……笑えよ」
その頬に一筋の涙を流した。
元ネタは秋にアニメ化する大冒険的な奴ですね。
ブックマークと評価一件につき、10+2話書いてみたいと思います。
もう少し延長させてやろうという方、
よければブックマークと評価をいただけるとありがたいです。
ブックマークつけるか迷ったときはつけてみましょう。




