とある人間と魔族の赤ずきんちゃん
あたしは可愛い赤ずきんちゃん。
今日はお母さんの言いつけで、
森の中にいるおばあちゃんのところに
焼き立てでホカホカのパンを届けるの。
「ふはははは! うまそうな人間だ!」
森の中を歩いていたら
とても大きな魔族が姿を現したわ。
あたしは「きゃあ」と驚いて
すぐに握りこぶしを突き出したの。
「ぶぐぉおおおおおふぅうう!」
魔族が吹き飛んだわ。
鼻血が噴き出して
歯もボキボキの折れて
とても痛そう。
涙目の魔族が可哀想で
あたしは楽にして上げようと
魔剣『ゾルフィンガー』を掲げるの。
「いや! 待て! 嘘! 冗談だ!
襲うつもりはない! いやだなあ、赤ずきんさん!」
とても友好的な魔族に
あたしは魔剣を鞘に収めたわ。
魔族がヘラヘラと笑いながら
あたしにこう尋ねるの。
「へへへ、ところで赤ずきんさん。
姉さんはどちらに行かれるおつもりで?」
「おばあちゃんのところよ。
焼きたてのパンを届けてあげるの」
「ほうほう、それは立派なことですな。
さすが赤ずきんさんでっさあ」
魔族のヨイショに
あたしはキラキラと笑うの。
そしてあたしは魔族と別れて
おばあちゃんのところに向かったわ。
================================
「ぐふふふ。ばばあのところにか。
よし。先回りしてばばあを食い、
さらに尋ねてきた赤ずきんを食ってやる」
そうほくそ笑んだ魔族は
駆け足で赤ずきんのおばあさんの家に向かいました。
おばあさんの家にたどり着いた魔族は
家に飛び込んで鋭い牙を開きます。
「ぐはははは! 貴様を食って――」
「えい!」
おばあさんの正拳突きが
魔族の鳩尾に吸い込まれました。
「べぎょはあ!」と奇怪な声を漏らし
魔族は崩れ落ちました。
魔族に止めを刺そうと
魔剣『ゾルフィンガー改』を掲げるおばあさん。
危険な眼光を輝かせるその老婆に
魔族は慌てて声を上げました。
「いや! 冗談! いやだなあ、おばあさん!」
ヘラヘラと笑う魔族に
おばあさんは魔剣を収めました。
「へへへ、実は今日はおばあさんに
耳よりのお話があってきたのでさあ。
おばあさん。温泉は好きですかい?」
「温泉かい? そりゃあ好きさ。
偶にはのんびりと温泉にでも
浸かりたいもんだね」
「そいつは良かった。
ここに温泉付き高級旅館の宿泊券が
あるのですが、おばあさんに
プレゼントしましょう」
「まあいいのかい?
そいつはありがたいねえ。
しかもペアチケットかい?」
「ええ、意中の殿方がいるのでしたら
その方と行くのが良いでしょう」
「おやおや、年甲斐もなく照れるねえ」
おばあさんはそう頬を赤らめると
いそいそと身支度をして
家を出て行きました。
森へと消えていくおばあさんを見送り
魔族はギラリと眼光を輝かせます。
「これで邪魔者は消えた!
後はばばあに変装し、
赤ずきんを待つだけだ」
================================
「おばあちゃん、焼き立てのパンを――あら?」
おばあちゃんがベッドで寝込んでいるわ。
いつも森で暮らしている魔族を
面白半分で虐殺するほど元気な
おばあちゃんが、どうしたのかしら?
あたしは首を傾げながら
おばあちゃんのベッドに近づいたわ。
「おばあちゃん具合が悪いの?」
「・・・ああ。少し体の具合が悪くてね。
さあ赤ずきんや。もう少し近くに来なさい」
おばあちゃんのその声に、
あたしはふと違和感を覚えたの。
「おばあちゃん。おばあちゃんは
どうしてそんな声がガラガラなの?」
「風邪をひいて喉が痛いからだよ」
なるほどと頷きつつ、
あたしはさらに質問を口にしたわ。
「おばあちゃんはどうして
肌が緑色なの?」
「病気のせいだよ。肌の色が変わるんだ」
「おばあちゃんはどうして
頭から角が生えているの?」
「年頃だよ。この年代になるとみんな生えるのさ」
淀みなく答えるおばあちゃんに、
あたしはまた何気なくこう質問したの。
「おばあちゃんはどうして
そんなぶっくりと太ってるの?」
おばあちゃんの肩がピクリと震えたわ。
何かを堪えるようにプルプルと震えて
おばあちゃんが絞り出すようにこう答えたわ。
「そ・・・それは・・・病気のせいか・・・
いや・・・その体形のことは・・・」
「おばあちゃんはどうして
そんなに口がくさいの?」
おばあちゃんの肩がまたビクリと震えたわ。
「口が・・・いや・・・くさいか?
そうでもないような・・・」
「おばあちゃんはどうして
そんなに顔が醜いの?」
「みにく・・・そんなことはない・・・はず・・・」
「おばあちゃんはどうして
そんなに生理的に受け付けないの?」
「いやおい・・・」
「おばあちゃんはどうして
ゴミクズ以下の掃き溜めなの」
「いやだから・・・」
「えい!」
「痛い!」
「おばあちゃんはどうして
魔剣で斬られたのに平然としているの?」
「してない! 血が噴き出して死にかけ――」
「おばあちゃんはどうして
生きてるの? さっさと死ねば?」
「それはもう質問ではなく・・・」
「おばあちゃんはどうして
存在するの? 生まれてこなきゃいいのに」
「なんでそんなこと・・・」
「おばあちゃんはどうして――」
「おばあちゃんはどうして――」
「おばあちゃんはどうして――」
「おばあちゃんはどうして――」
「おばあちゃんはどうして――」
「おばあちゃんはどうして――」
「おばあちゃんはどうして――」
―――-
―――-
「おばあちゃんはどうして
そんなに泣いているの?」
涙をポロポロと流していたおばあちゃんが
声を震わせてこうポツリと呟いたわ。
「・・・もう家にお帰り」
はたしておばあちゃんの意中の男性とは。
to be continued...
ブックマークと評価一件につき、10+2話書いてみたいと思います。
もう少し延長させてやろうという方、
よければブックマークと評価をいただけるとありがたいです。
ブックマークつけるか迷ったときはつけてみましょう。




