第二十六章:この世界のため
おいおいって思うと思います。
新たな世界は、一見すると平和で調和が保たれているように見えた。しかし、その裏で俺は管理者としての権限を徐々に広げつつ、自分にとって都合の良い方向へと世界を形作ろうとしていた。誰にも気づかれないように、少しずつ――だが確実に。
「正義」の名の下に
「この村にもう少し秩序が必要だと思うんだ。」
俺は村人たちを集めて提案を始めた。カフェの裏で行われる小さな集会は、もはやこの新世界の方向性を決める中枢の場となっていた。
「秩序って……具体的には?」
エリスが不安そうに問いかける。
「例えば食糧の分配や仕事の割り振りだ。この新世界では皆が自由にやっていては不均衡が生じる。俺たちがルールを決め、管理するべきなんだ。」
俺の提案に村人たちは困惑しながらも頷いた。誰も新しい世界の管理方法について明確な意見を持っていなかったからだ。
勇者が少し眉をひそめながら言う。
「でも、そのルールを作るのが管理者一人だけっていうのは危険じゃない? 皆で決めるべきじゃないかしら。」
俺は冷静な表情を保ちながら答える。
「もちろん意見は聞く。でも、最終的に決定を下すのは管理者である俺だ。全員の意見を取り入れたら混乱するだけだろう?」
その言葉に勇者は何か言いたそうだったが、結局黙ってしまった。
その夜、俺は村の中でも影響力を持つ何人かを秘密裏に呼び出していた。カフェの奥、普段は誰も入らない裏の部屋に集めた彼らに俺は静かに語りかけた。
「この世界を安定させるためには、俺たちが影で支配構造を作る必要がある。」
俺の言葉に、村の長老が戸惑いを見せる。
「支配……ですか? それはちょっと強引すぎるのでは……。」
「強引かもしれない。しかし、この世界はまだ未完成だ。皆がバラバラに動けばやがて混乱が訪れるだろう。それを防ぐためには統率力が必要なんだ。」
俺はその場の空気を支配しながら、さらに言葉を続けた。
「もちろん、表向きには皆の意見を尊重するように見せる。しかし、裏で確実に正しい方向に導くのが俺たちの役目だ。」
一部の者たちは同意し、他の者たちは不安げにうなずいた。だが、誰も俺に反論しようとはしなかった。
翌日、俺の動きに感づいた勇者が直接問い詰めてきた。
「管理者、あなた最近おかしいわ。みんなのためと言いながら実際には自分の思い通りにしようとしているんじゃないの?」
俺は彼女の言葉に眉をひそめた。
「何を言っているんだ。俺はこの世界を安定させるために行動しているだけだ。」
「それが本当ならいいけど……私には、あなたが何か隠しているように思える。」
勇者の目には疑念が浮かんでいたが、俺は冷静に答えた。
「疑うのは勝手だが、俺がいなければこの世界はどうなる? 君は均衡を守る勇者だろう。それなら管理者を信じてくれ。」
勇者は不本意そうな表情を浮かべたが、それ以上追及はしてこなかった。
夜、俺は再び扉の前に立っていた。風が吹き抜け、扉の周囲に漂う黒い気配が微かに蠢く。その中で、再びあの声が響いた。
「よくやっているな、管理者。だが、まだ足りない。お前にはさらに強い力が必要だ。」
「さらに強い力……?」
俺はその言葉に耳を傾ける。
「そうだ。この世界を完全に支配し安定させるには、もっと多くを捨てる覚悟がいる。お前はその覚悟を持っているか?」
俺は答えなかった。ただ、その言葉が胸に深く刺さるのを感じていた。
俺の行動は少しずつ村全体に影響を及ぼし始めた。食糧や資源の管理を一元化し、俺に近い者たちをその中心に据える。村人たちは表向き俺の決定に従っていたが、中には不満を抱き始める者も現れた。
「最近、管理者様のやり方が厳しすぎるんじゃないか?」
そんな囁きが聞こえ始める中で、俺は冷静に行動を続けた。
「不満は出るだろう。しかし、全員を満足させることなどできない。」
カフェの奥、誰もいない静かな部屋で俺は再びあの黒い羽根を手に取りながら呟いた。
「この世界を完全に安定させるには……俺の手で新たな秩序を作らなければならない。」
その時、扉が再び微かに輝き、どこかから聞こえる低い笑い声が耳を突いた。
「そうだ、進むのだ……管理者よ……。」
闇堕ちしてしまったのかしら。。




