第二十一章:真実
今回も読んでくださってありがとうございます!
作品タイトルとどんどん違う方向に向かっているようです。どうしましょう。
扉から現れた影――それは間違いなく俺自身だった。けれど、その姿にはどこか異質なものを感じた。現代で過労に苦しんでいた頃の俺とも違い、異世界でカフェを経営しながら成長した今の俺とも違う。冷たい目、感情の見えない表情、そして威圧感のあるその存在感に言葉を失った。
「お前は……俺なのか?」
恐る恐る問いかけると、その影はゆっくりと頷いた。
「ああ、俺はお前だ。だが、お前が捨ててきた“可能性”でもある。」
「可能性……?」
意味が飲み込めないまま、俺はその言葉を反芻した。
影の俺は、淡々と語り始める。
「お前は現代から逃げ、この異世界に安住の場を求めた。そして、ここで管理者としての役割を背負い、皆を守ろうとしている。その選択を俺は否定しない。」
「……なら、なぜお前が現れた?」
俺の声は震えていた。何か、根本的な部分を抉られそうな予感がしたからだ。
「お前はまだ気づいていない。お前が本当に求めているものは何なのか。お前の中には未だ“現代に縛られた自分”と、“異世界で救いを求める自分”が共存している。そしてその葛藤がこの扉を暴走させた原因だ。」
「俺が……扉を暴走させた?」
その言葉に息を呑む。
「そうだ。お前の迷いが扉の力を不安定にし、二つの世界を交わらせたんだ。」
俺の迷い……。確かに俺は異世界での生活を愛しながらも、現代社会での過去を完全には捨てられていない。家族や友人、叶えられなかった夢――それらが時折、胸を締め付けるように蘇ることがあった。
影の俺は一歩前に進み、俺を鋭く睨んだ。
「お前に問う。この異世界を守りたいという気持ち、それは本物か? それとも、現代から逃げるための言い訳なのか?」
その問いに俺は言葉を失った。自分でも答えを出せない問いだったからだ。
「……分からない。俺は現代で生きることに疲れてここに来た。でも、この村の人たちと過ごす中で、ここが大切な場所になったんだ。」
そう言いながらも、胸の奥にある罪悪感が消えない。現代で築けなかったものを、この異世界で補おうとしているだけではないのか――そんな疑念が拭えなかった。
「お前がその迷いを断ち切らない限り、どちらの世界も救うことはできない。」
影の俺は冷たく言い放つ。
「迷いを断ち切れだと?」
背後から魔王の低い声が響く。
「人間にとって迷いとは本能の一部だ。それを簡単に捨て去れるものではない。」
勇者も頷き、剣を構えたまま言葉を続ける。
「そうよ。それでも、自分で決めるしかないの。自分が何を守りたいのか、何を捨てるのか――それを決められるのは管理者であるあなただけ。」
その言葉に、俺の中で何かが動き始めた。
俺は本当に何を守りたいのか――。自分の心の奥底を見つめ直す必要があった。
「管理者さん……。」
小さな声でエリスが俺の袖を引っ張った。彼女の瞳には、深い悲しみと希望が宿っている。
「私、ずっと見てきたの。この扉を巡って、どれだけ多くの人が迷い、そして傷ついてきたか。でも、あなたにはその迷いを越えられる力があるって信じてる。」
「越えられる力……。」
俺は呟いた。
エリスは小さな手で俺の手を握り締め、続けた。
「この世界も、あなたのいた世界も、あなたが大切にしたいものはきっと同じ。あなたがどちらも守りたいと思うなら、きっと方法はある……!」
影の俺が再び口を開く。
「ならば選べ。壊すか、守るか――すべてを繋げるか。」
俺は深く息を吸い込み、迷いを胸に抱えながらも答えを口にした。
「俺は……両方を守る! どちらも壊させない!」
その瞬間、胸の奥でルナグレープの力が輝きを増し、体中を満たしていくのを感じた。それは、俺の決断が管理者としての力を完全に覚醒させた証だった。
扉の光がゆっくりと収まり始め、歪んでいた空間が次第に安定していく。しかし、その代わりに扉そのものが新たな姿へと変貌を遂げていた。
影の俺が静かに笑みを浮かべた。
「お前の選択、見届けさせてもらうぞ。」
そう言い残すと、影の俺は扉の中へと消えていった。
扉の奥から新たに現れたのは、全く未知の風景だった。それは現代でも異世界でもない、どこか新しい世界を感じさせる光景――。
「これは……一体……?」
俺が呆然と立ち尽くす中、リリスが微笑みながら囁いた。
「おめでとう。次はこの新しい世界での試練ね。」
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