表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/129

第十九章:裂けた現実

バイトに入りそうにない勇者と魔王をこれからどう回収するのか悩みます。。

読んでいただいてありがとうございます!

扉の奥に広がるのは、俺がかつて生きていた現代社会の風景だった。だが、その光景は俺の記憶とどこか違っていた。ビル群は歪み、人々の姿は影のようにぼやけている。時折、地面から手のようなものが伸びては霧散し、街全体が腐敗したかのような気配を放っていた。


「これが……俺のいた世界なのか?」

呆然と呟く俺に、リリスの冷たい声が降り注ぐ。


「そうよ。これが扉を通して見える、あなたの現代。崩れた未来。」


「崩れた……未来?」

俺の胸に嫌な予感が広がる。


扉の中で、さらに異常な光景が浮かび上がる。会社のデスクに向かって必死に働く俺自身の姿が見えた。だが、その姿は次第に変化し、皮膚が剥がれ落ち、まるで機械のような身体へと変わっていく。

「な、なんだこれ……?」


背後でリリスが楽しげに笑う。

「あなたが現代に戻るということは、そういうことよ。あなたが逃げ出したあの世界ももう正常じゃない。扉を通じて二つの世界が交わり始めた今、現代もこの異世界の影響を受けて崩壊しているの。」


俺は目の前の光景を直視できなかった。無限に働き続ける自分、他の人々も同じように機械の一部となり、歯車としてただ動き続ける。笑顔もない、希望もない。そこにはただ、無機質で絶望的な「機能するだけの社会」が広がっていた。


「戻れば……俺はあんな世界に生きることになるのか?」

俺の問いに、リリスは優雅に微笑む。


「そうね。でも、そこに戻るのもあなたの選択。少なくとも、“この異世界”の問題を無視することはできるわよ?」


その言葉が俺の胸に刺さる。異世界の問題を捨てて現代に戻る――だが、それが俺の求めていた「現代」ではないとしたら?


勇者が俺の肩を掴み、必死に声を上げた。

「信じちゃだめ! リリスはあなたの心を惑わせようとしているのよ!」


だが、俺は目の前の光景から目を逸らせない。俺が働いていた職場、街の景色、どれも俺にとって懐かしいものだった。それでも、そこに漂う絶望感は拭いきれない。


「お前は何がしたいんだ……?」

俺はリリスに向き直り、震える声で問いかけた。


リリスはふわりと手を広げ、まるで親切心から助言するかのように答えた。


「簡単なことよ。あなたが“管理者”としての役割を捨て、この扉を完全に開けばいいの。そうすれば、現代も異世界もすべて壊れて、一つの新しい世界が生まれるわ。」


「壊す……だと?」

俺の拳が震える。


リリスは笑顔のまま続けた。

「そう。壊さなければどちらの世界も中途半端な崩壊を続けるだけ。でも、全部を壊して再構築するなら、もっと良い世界が生まれるかもしれないわよ?」


「それがいい未来だって言うのか……?」

俺は声を荒げるが、リリスは微笑んだままだった。


「いい未来かどうかなんて誰にも分からない。でも、この“均衡”に縛られたまま生きるよりはずっと自由でしょ?」


その時、扉の光がさらに強くなり、現代の景色と異世界の景色が重なり始めた。俺のカフェが見える。俺が大切にしてきた場所だ。だが、そこにも現代の腐敗が侵食し始め、村人たちの笑顔が薄れていくのが見えた。


「これ以上、壊れるのを見ていられるか!」

俺は叫び、ルナグレープの力を全身に巡らせた。だが、その力が通じる気配はない。


リリスが扉の向こうから静かに言う。

「あなたにできるのは選択だけ。全部を壊すか、それとも全部を見捨てるか。」


その瞬間、勇者と魔王が同時に声を上げた。


「店主、決断しろ! 扉の力を制御できるのはお前だけだ!」

「だが、選択を誤れば……すべてを失うぞ!」


扉の光は最高潮に達し、世界全体が崩壊寸前だった。俺は自分の中で叫ぶ。


「本当に……俺にこの選択ができるのか……!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ