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うなぎさんはうなぎ

「どうだ、土屋も今から食べるか? 作るのはすぐできるが」


「今食ったらオレもああなるんかな」


「たぶん」


 ミオさんと村崎が大人として消えない傷を負っているのを横目にしつつ。隣で真顔になっている土屋に問うた。


 いくら状況が状況でも、ふたりに出して土屋に出さないのも不公平だからだ。


「食う」


 まさかの即決。あえての即答。


「気は確かか」


「ウノの時はな、空気に呑まれるだけで乗りきらんくて」


「そうだったか?」


 実をいうと、土屋が来た後のことはあんまり覚えていない。


 だんだんカーテンの向こうが明るくなって、朝食が夕食だったことはぼんやりと記憶に残っている。


「実はちっと後悔しとった」


「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら……か」


「早乙女さんはアホやない」


「村崎は?」


「ノー・コメンツ」


「I see」


 ともかく今度は乗り遅れたくないと、そういうことらしい。土屋がそう決めたなら仕方あるまい。


 大山さんも、まさか自分の犠牲がうなぎ保護に貢献したとは思わないだろう。


「てことでマッツー」


「おう」


「ブツをくれ」


「ブツ言うな」


 うなぎのバラ肉はもう下ごしらえまで済んでいる。あとはタレをつけてうなぎ焼きグリルでうなぎがつくまで焼くだけだ。


 三回、四回とタレをつけては焼いて、焼いてはつけて。ご飯にのせてさらにタレをかけて。


「ほい完成」


「おー、マジで見た目はうなぎやん」


 自分のとあわせて二人前をこさえて、ミオさんと村崎の待つテーブルへ。箸でさくりと入れれば、ほどよく脂の落ちた肉からタレの香りが立ち上る。


「じゃあ絶滅危惧の(うなぎ)と全世界一〇億頭の(ぶた)に感謝をこめて」


「いただきます」






「……はっ?」


 今、何時だ。


 時計を見ると九時を指している。さっきまで二時半だったはずなのに。


 寝ていたわけじゃない。確かに活動していた、なんなら食べたり飲んだりしていたのに。まるで時が飛んだようにしか感じられない。過程が吹き飛んで結果だけが残った、そんな感覚。


「ミオさん、そろそろお開き、に……?」


 周りを見渡せば、見慣れた顔が並ぶ。それなのにこの異様さはなんだ。




「これはうなぎ、これはうなぎ、これはうなぎこれはうなぎこれはうなぎこれはうなぎこれはうなばばばばばばばばばばばば」


「やっぱうなぎは天然やな空気も天然やし空気はうなぎやな空気うまい空気空気うなぎ」


「うなうなうなうなうなうなうなうなうなんぱん」




 ミオさんはしば漬けを食べている。


 土屋はなぜか深呼吸している。


 村崎はメロンパンを前に置いてバグっている。好物をうなぎと思い込むことを脳が拒否したらしい。


「なんで、こんなことに」


 俺はただ、絶滅危惧種を守りたかっただけなのに。


 人間は長きに渡って環境を好き勝手に破壊してきた。いずれ支払う時が来ると言われ続けたその代償が、これほどのものだと誰が予想しただろう。


「かくなる上は……」


 だがこれが現実ならば。いつかは向き合わねばならないことならば。


 俺がすべきことは決まっている。


「……皿、洗うか」


 君子危うきに近寄らず。


 言ってもまだ九時だし。あと一時間くらいなら、ほっといても明日の仕事には差し支えないだろう。たぶん。






 三人は動画をパンダに変えたら治った。

更新遅れましてすみません。レビューをいただいためでたい日に風邪ひきました

なんか知らないけど、私が外に出ると雨降るんですよね


これにてうなぎ編はおしまいです。次回の頭で後日談はあるかも?

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