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#41 全部「漂流者だから」で片付けられる



「フッ……かなり良好な関係のようだな。いい漂流者が来たものだ。なぁ?陛下」


「だな。これ見てりゃなんの心配もいらねぇだろ。コイツらに愛想尽かされねぇようコッチがしっかりやんねぇとな。その辺はゲシュトも分かってんだろーがよ、なぁブリュナ」


「ええ、我が父もその辺りは弁えておりますのでご心配なく。勿論私もです」


「だろーな。んじゃそこは頼んだぜ。ところで…ブリュナは何しに来たんだ?」


「申し遅れました、私は先だっての防衛戦の事後処理が終わりましたのでご報告に、と」


「事後処理?何かあったか?」


「あァ…あヤツの解体か。ゼクト、お主にも言っタだロう、手の焼いてイる魔物がいたト」


「ん?あー…そういやそんなことも言ってたか。確かバカデカい奴がいるからそいつも向かわせるって。んじゃソイツをバラし終わったから報告しに来たってわけか。けど報告だけなら来ることもねーだろ?」


「いえ、その解体したものも届けに参った次第です」


「持ってきたって…どこにも無ぇだろ、そんなの」


「こちらになりますので、ご査収ください」



 陛下とエルムさんが俺達のわーわーぎゃーぎゃーやってる様子に納得した後、話題の矛先をブリュナ様へ向けた。

 愛想尽かされないようにって、こんなに良くしてもらっててそんなこと微塵も思わないんだけど…家まで用意してくれたんだから。

 何かあったら遠慮無く言えとまで言われたし、ゲシュト様に。


 で、ブリュナ様が来た理由である、あの大亀の解体物が収納されている腕輪を陛下に差し出した。

 本来なら明日の謁見で渡すはずだったんだろうけど、こうして今日目の前に居るし流れで渡す羽目になってしまった感が。

 でもここで渡しちゃったらもう明日謁見する意味無くなるんじゃ、ブリュナ様…。


「…?腕輪なんて渡されてもなぁ。コレがなんだってんだ?」


「はい、この腕輪の中に解体物が収納されております。ですのでこのままご査収ください、と」


「……は?ちょ、待て待て、確かオーガに聞いた話だと山くらいデケぇって奴じゃなかったか?それがなんでこんな腕輪に……」


「あ、陛下、それ俺が創った収納機能付きの腕輪です。そのデカい奴が入るくらいのですが」


「………創ったってお前、そんな簡単に言ってるけどなぁ……それがホントならコレ国宝級、いや、伝説級の代物じゃねぇかっ!」

「また出鱈目な物を……。そもそも魔導具作成には付与魔法グラッディギーヴァが必須なはずだ。いくら漂流者とはいえナオト、お前は冒険者だろう。戦闘以外の能力まで桁外れは無しじゃないのか………?」


「伝説級って…。えっと、何かおかしいですか?収納なら魔法袋とかありますし、それに俺が来る以前の漂流者だっていろいろ創ってますよね?あの宣伝飛行船とか街頭モニターとか」


「いや、まぁそうなんだけどよ…何事も限度ってものがあるだろ?その魔法袋だって精々普通の民家一軒分の広さが収納できりゃ国宝級なんだよ…。それがお前、山が収納できるとかオカシイだろ……」


「え?そうなんですか…?」


「ったく、お前ら誰かこいつにそこら辺の常識ってやつ教えてねぇのかよ……」


「いやぁ、もうその辺は漂流者だからってんでいいかなぁってよ……」

「驚くことはあっても特に不都合はあらへんかったしな…」

「……マスター、なら………当然……………」

「リーちゃんにはぁ〜常識ぃ教えるのぉなんてぇ〜無理だしぃねぇ〜……」

「まー、本当ならワタシたちが教えないとだったんだろーけどねー、ラナ」

「そうかもね…。冒険者としての説明くらいしかしてなかったし……」


「私も最初はこの腕輪を見てもしやとは思いましたが、やはり漂流者ということであれこれ口を出すのもどうかと思い直しまして……」



 自分が自由に動けるようにって創っただけの収納付き腕輪がまさか伝説級の代物になっているとは思いもよらず…だって収納用の魔導具である魔法袋とかあるくらいだから、そこまで珍しい物でもないよなって思ってたし…。

 ただ、収納という機能はいいとして、問題はその許容量だったらしい。

 民家一軒分、倉庫くらいの広さがあればそれだけで国宝級とか、そんなの知らなかったって…シータ達が持ってる魔法袋の収納量は少な目って話だったのは覚えてる、その時に正確な容量までちゃんと聞いておけばよかったのかもしれないけど、それでもあの亀を収納出来るようにしとかないと駄目だったし、結局予め知っていたとしても伝説級のものを創るしかなかったわけで。


 エルムさんが言うには、魔導具の作成には付与魔法グラッディギーヴァが必須だって…確かマジックユーザーの一種だったかな、この世界に来て初めての夜、シータに教えてもらったのもちゃんと覚えてる。

 俺の場合は道具に機能を付与したわけではなく、一から想像して創ったってだけだから付与魔法とか関係無いんだよな、多分。

 やっぱりこっちの世界での常識からは逸脱してるってことか、魔法もオリジナルだし何もかもが当て嵌まっていない、と。

 そういう細かい所は誰からも教えてもらってはいないよなぁ…俺が何かやったら全部漂流者だから、で片付けられてた気がする。



「こんなところまでチートとか、どれだけ盛れば気が済むんだっ」


「同じ漂流者なのにこの差は……」

「……召喚と転生で違いがあるということですか………?」

「なんかわたし、ますますヘコんできそう……」

「私もです…。こんなに力の差があるのにあの態度はもう、恥を通り越して穴に埋まりたいレベルです……」


「尚にぃ、万能過ぎない?」


「戦闘力だけデはないノダな、ナオトは」


「や、やっぱりすす、凄いんです、ね……な、尚斗さんは………」


「なんかもう、尚兄さんが勇者でいいんじゃないかと思い始めてきました……」


「ハッ!コイツが勇者とかないわーっ。こんなヤツに救われるとか、その世界終わってるわっ」


「おまえなぁっ…俺が救ったらそんなにおかしいのかよっ!」



 この場に居合わせた漂流者全員からなんか言われてるけど、確かに俺が勇者とかないわー、と自分でも思う…が、相変わらず弘史の言い草は俺に対して遠慮ってものがない。

 自ら進んで世界を救おうなんていう気概は今更持てないけど、このままいくと成り行きで世界を救っちゃえる気もしなくはない、どうも俺はこの世界では最強らしいし、エクリィが言うには。

 そんな俺に救われる世界が終わってるって…弘史に言われたから条件反射で言い返しちゃったけど、冷静に考えたらこんな俺に救われる世界とか、確かにどうなんだろう…?と思ってしまった…。

 やっぱりほら、救われるならイケメンか美少女って方が格好付くというか、その方が救われる側としても嬉しいだろうし。



「まぁ、アレだ。こっちからすりゃこの世界を救ってくれるってんなら、どんな奴でも文句は無ぇよ。それよりも、だ。ナオト、こんなもんポンポン創られちゃこっちが困っちまうから自重してくれ。まぁ創っちまったもんはしょうがないから受け取っておくけどよ」


「あー……ハイ…………」


「ハァ…。その返事だともう既に手遅れなのか…?」


「えっと、まぁ、それなりには…。ただ、大体うちのメンバーにしか渡してませんけど。外に出してるのはこの腕輪くらいですかね……」


 まぁ、言う程創ってはいない…はず。

 この世界に来た時に考えたことだけど、これに頼ると堕落しそうで怖いから、最低限必要だと思うものしかまだ創っていないよな。

 この腕輪もそうだし、カティの腕輪だってあの格好で街中を歩かせるのが可哀想だと思ったからだし、魅音達のアクセサリーは器材運ぶのに必要なわけだし。

 家の中のものだって、各部屋に付けた清掃装置もエマ達が少しでも楽になればと思って創ったもので、決して自分が楽しようとか考えたわけじゃないんです。


 でも話を聞いてて何となく分かった、要はやり過ぎなきゃいいってことでしょう?

 今回のこの腕輪はもうどうしようもなかったってことで、これからは気を付けるようにします、はい。



「ま、身内で収まってるならいいけどよ。んじゃホントにこれ貰っちまうぜ?」


「あ、はい、もちろん。そのつもりで創りましたから」


「あヤツの素材なら幾らデも使い途ハあるだろウ」


「そうだな。とりあえずキャトローシャニアの復興支援に早速使わせてもらうわ。正直助かった」




 と、こんな感じで陛下達を相手に話をしていたんだけど…俺の我慢が限界を迎えて、ちょっと席を外させてもらいました。


 向かった先は当然フィオの部屋、俺が入った途端大喜びで迎えてくれました…ちょっと泣きそうになるくらい嬉しかった。

 フィオやノルン、それにロランも、まだそんなに俺と交流していないはずなのに、ひぃ達と同じくらい懐いてくれてたのがまた更に嬉しくて。

 そりゃもう思う存分癒やされまくりました…夕食で呼ばれるまでずっと。

 それまで誰も来なかったのは、多分リズかシータ辺りが俺の好きにさせてやってほしいと、皆を説得というか上手く丸め込んでくれたんだと思う。

 皆俺の事良く理解してくれていて、もうなんて感謝したらいいか。

 まぁでも恐らくこれをネタにして揶揄うつもりなんだろうけど、特にリズ。

 そうだと分かっていてもこの癒し空間からは全く出るつもりはありませんでしたが。


 こんなに慕って戯れてくるなんて、多分これも称号のせいなんだろうな、と理解はしていても、本当に一瞬、一瞬だけ陛下が言っていた褒美のことが頭を掠めてしまった俺はもういろいろと手遅れなのかもしれない…。






 ちなみに今日この場で初顔合わせをした俺と同性のこの二人、後に『優者ロラン』と『炎髪の智者ウォル』と呼ばれ、この国の中心人物的存在になるのだが、それはまだまだ先の未来のお話。






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