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浮世にまじりて神は舞う  作者: 名称未定


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はじまり




 その日も地獄のような日だった。大嫌いな奴らに囲まれて、私は胃痛と吐き気を感じながら、うつむいて、無理な要求を突き付けてくる奴らに、震えながら抵抗していた。

 奴らの一人が待ちきれなくなって、私の腕を掴んだ時、


 ドンッ!!!


 鈍い、とても大きな音がした。驚いて、音のした方を見たら、地面の上に真っ黒な何かがあった。黒くて濃い霧みたいなものが一か所に集まって、ぐるぐると蠢きながら、その何かを形作っているようだった。

 理解できない突然の出来事に、その場に居た全員が凍り付いたように動けず、ただ地面の上にあるその何かを、引き寄せられるように見つめていた。


 きっと音がしてからほんの数秒だったと思う。その何かが音もなく、ゆらりと大きく動いた。その瞬間、奴らの内の一人が叫び声を上げた。緊張した空気が一気に弾け飛んで、私以外の人間は、悲鳴を上げながら走って逃げて行く。私は腰が抜けてしまって、その場に座り込んでしまった。


 ゆっくりと起き上がったその何かには、頭と両腕両足があって、人の形をしていた。でも目鼻や口などは見当たらない、影のように、形だけ。

 座り込む私に近付くことなく、その何かはその場で立っているだけだったが、視線を感じて、その何かが私を見ているんだろうなと思った。そして、誰かが内緒話でもしているかのような、声なのか、雑音なのか、よくわからない音が聞こえてくる。自然と涙が出てきて、私は逃げることもできずに、その何かをじっと見ることしかできない。

 すると、ゆらゆらと佇むその何かの、腕のようなものがゆっくりと持ち上がって、何かを指している。私は訳も分からず、指す方向を見てみるが、何か変わったものがある様子もない。


 目線をその何かに戻すと、煙が空気の中に溶けて見えなくなっていくように、その何かはだんだんと消えていった。




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