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復讐に行ったら、能力者探偵と出会った  作者: 小説書こう


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サンクチュアリ そのニ

「はっけよい……のこった!!!」


剛の咆哮と同時に、二つの巨躯が水飛沫を爆発させて激突した。

バチィィィン!!!と、肉と肉がぶつかり合う凄まじい衝撃音がモールに響き渡る。

大厳山の突っ張りは重く、鋭かった。サイバーウェアの補助を失った剛の肉体に、容赦のない衝撃が突き刺さる。だが、剛は一歩も引かなかった。冷たい噴水の水が傷口を打ち据える中、剛の脳裏には、かつて東関部屋の泥塗れの土俵で、互いに声を枯らしてぶつかり合った日々の記憶が鮮明に蘇っていた。


「佐藤……! お前の相撲は、そんなものだったか!」


「黙れ、千代ノ皇ァ!」


大厳山がさらに腰を落とし、剛の胸元へもろ手突きを放つ。剛の巨体が

わずかに浮き、噴水の縁、すなわち土俵際へと追い詰められた。足元の大理石は水で濡れ、極めて滑りやすい。一歩間違えれば、そのまま奈落へ崩れ落ちる。


(ここまでか……)


弱気がよぎった瞬間、2階のベランダから「剛!」という震える声が聞こえた。雷真だった。恐怖に怯えながらも、必死に自分の名を呼ぶ主人の姿が視界に入る。


(いや、まだだ。俺は雷真様の盾。ここで引けば、名が廃る!)


剛は限界を超えた肉体に最後の力を込め、大厳山の突っ張りを紙一重でいなした。体勢の崩れた大厳山の懐へ、剛の巨大な左腕が深くねじ込まれる。渾身の下手投げ。


「おおおおおっ!」


「なっ……!?」


全盛期さながらのキレを見せた剛の体捌きに、大厳山の巨体が宙を舞った。激しい水しぶきとともに、大厳山は噴水の外、大理石の床へと頭が叩きつけられた。勝負あり。

大厳山はしばらく天井を仰いでいたが、やがて力なく笑い、そのまま意識を失った。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


静寂が戻ったモールの中で、剛は荒い息を吐きながら立ち尽くしていた。勝った。しかし、その充実感はすぐに、冷酷な現実の自覚へと変わっていった。

自らの両手を見つめる。指先は小刻みに震え、膝はガクガクと音を立てている。もし、最後のいなしがコンマ数秒遅れていたら。もし、雷真の声が届いていなかったら。サイバーウェアに頼り、純粋な心技体を怠っていたツケが、この死闘で完全に露呈してしまったのだ。


(今回は守りきれた。だが……次も同じように守れるか?)


ヤクザ連合の刺客は、今後さらに凶悪化していく。今の、衰えをサイバー技術で誤魔化しているだけの自分では、いずれ雷真様を守りきれなくなる――。

剛は、胸の奥底で己の「限界」を痛烈に感じていた。


「剛! 無事だったんだね!」


駆け寄ってくる雷真の無邪気な笑顔を見つめながら、剛は静かに決意した。

このままではいけない。もう一度、己を根本から鍛え直さねばならない。銃にも、サイバーウェアにも頼らない、本物の「不動の盾」となるために。

その夜、剛は静かに荷物をまとめ、一通の手紙を書斎の机に置き、雷真の家を後にしたのだった。

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