私の日常は私が守る
豪奢な装飾が施され、威風堂々たる存在感を放つ両開きの扉が目の前に佇んでいる。
「間も無く王との謁見です。くれぐれも粗相のないようお願いします」
「はい。リアナ、ルーク、セレナ。何回も言うけど王様の前では静かにしてね」
このセリフも子供達に今まで何回言っているかわからないほど繰り返している。
『はーい』
元気がよろしい! …………不安しかねぇ。
「王国騎士団3番隊隊長、ユリウス様とそのご家族がお見えになりました」
「通せ」
「はっ!」
歴史を感じさせる重厚な音を響かせながら、謁見の間の扉が開かれた。
「よく来てくれた。貴女が『聖女』で間違いないかな?」
私は突然の王のセリフに驚きながらも慌てて頭を下げた。
「お恥ずかしながら、そう呼ばれております。このティアット=シッザード、本日は陛下のご子息のため、誠心誠意尽くさせていただきます」
「面を上げよ。今日はこちらからお願いして来てもらっているのだ。そうかしこまる必要はない」
「はい、ありがとうございます」
「自己紹介が遅れたな。まあ、知っているとは思うが。私がアヴェリア王国第十三代国王、ジェラルドだ。今日はよろしく頼む。それにしてもユリウスよ」
「はっ! なんでしょうか」
「子供が3人もいたとは思わなかったぞ」
「そ、そうですか」
「奥さんも美人で羨ましいのお。お前は幸せ者だな」
「はい、おっしゃる通りでございます」
「ユリウスの子らよ、名をなんという?」
「リアナです!」「ルーク!」「……セレナ」
「そうかそうか。みんな将来が楽しみじゃの」
王様はそういうと私の方を向いた。
次に言われることはもうわかっている。
「それでは、そろそろ本題に入るとしようか。ティアット殿、ユリウスから聞いているだろうが私の息子、第一王子のセルヴィンが死病を患った。王国に仕えている治療師は誰も治すことができない。そこで貴女に最後の希望を見出し呼んだのだ。半ば賭けのようなものだ。もし治せないとしても気に病む必要はない。最初にそれだけを言っておこう。それではセルヴィンのところまで案内しよう。子供達には部屋を用意しているからそちらで待機してもらう」
「承知いたしました」
陛下の言葉に少し気分が和らぐが、私は絶対に治してみせる。
それは私のため。私の日常を守るため。結局は自分のためなのだ。
不敬だと思われるかもしれない。だけどそれでも構わない。
私はユーリと子供達と一緒にいつも通りの日々を送ることができればそれ以上幸せなことはないのだから。
「うむ、ではついてこい」
そうしてひとつの部屋の前に連れてこられた。
部屋の前は兵士によって厳重に警備されている。
「セルヴィン、入るぞ」
王様はそういうと部屋のドアを開け、中に入った。
私も続いて入室する。
そして、ついに対面することとなった第一王子セルヴィンは、痩せこけ青白い肌で、今にも消えてしまいそうな雰囲気でベッドに横たわっていた。
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信じられない思いでいっぱいです!
なんか毎回言ってる気がするけど本当にありがとうございます!