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聖装士学園の異端者  作者: 綿砂雪
第三章
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第五十八話 奪われた自由(休日)

前回に続いてこんにちわ、綿砂雪です。

以前リアルが忙しくなるため投稿頻度が落ちるとお伝えしましたが、具体的には今年度末まで続きます(受験のため)。投稿頻度も指数関数的に落ちる事になると思いますが、ご理解いただけると幸いです。

では本編をどうぞ。

そうして時は戻って、その日の朝七時頃。

王城にやって来た二人が通されたのは玉座の間。

汚れ一つすら見受けられない美しい室内。床の中央には縦長のレッドカーペットが敷かれており、室内の壁付近に立派な玉座が置かれている。


現状室内にいる人物は三人。

玉座に座っているのはアランとアリシアを呼び出した張本人、ローヴェン・エルデカ。その傍らに立っているのはアリシア・エルデカ。

そして彼らの前で、現在アランは片膝を付いて(こうべ)を垂れていた。


「面を上げよ、アラン・アートノルト」


重々しくも威厳を感じさせるローヴェンの声。それに従い、アランは顔を上げる。


「今日はよく来てくれた。せっかくの休暇だというのに、このような早朝から呼び出してすまない」


「いえ、陛下より直々にお役目をいただける事、誠に光栄に存じます。如何なる(めい)でも何なりとお申し付けください」


国王を相手にするに相応しい態度でアランは応じる。とても普段の彼からは想像できないような態度だ。

実際、先程から違和感のあまりアリシアがちょっと引いてる。仲良くなる前はこの礼儀正しいアランの姿を見てきたはずなのだが、今では違和感しかない。


「そうか、では早速本題に入らせてもらおう。まず君を呼んだ要件についてだが……」


一度咳払いをした後、ローヴェンは重々しく言った。



「アラン・アートノルトよ。君に我が娘、アリシア・エルデカの騎士として、リフレイム皇国の海礼祭(かいれいさい)に出席することを命ずる」



「…………え?」


思わず素っ頓狂な声が出た。

ある程度何を言われるかは予想していたが、告げられた内容は全く予想外のものだった。


「詳しい話は今からするが……まず君はリフレイム皇国を知っているかね?」


「は、はい。存じておりますが……」


聞いた事がある名前だった。なんなら過去に一度、『学園最高戦力者』として依頼を受けて行った事もある。


リフレイム皇国はエルデカ王国の東側にある隣国だ。国力も高く、古くからエルデカ王国と友好関係にある。

リフレイム皇国の最大の特徴は海と深い繋がりがある事だ。リフレイム皇国の歴史は海と共にあるとも言われるほどで、海産資源や水資源が豊富なのはもちろん、これらに関する観光スポットまであるとのこと。


「今回君に向かってもらうのはリフレイム皇国、その目的はリフレイム皇国で行われる海礼祭に参加してもらう事だ。海礼祭とは年に一度、リフレイム皇国の皇都で執り行われる重要な祭典だ。古くから国が栄えるきっかけとなった海に感謝する、そういう意味が込められている」


「その海礼祭にアリシア様の騎士として私も出席するという事ですか」


「そうだ。今回、海礼祭には我々も招待されていてね。私も友好関係にある国として、この誘いには是非とも応えたいと思っている。なのでアリシアに海礼祭に出席してもらう事にしたのだが……ここで一つ問題が生じた」


「問題?」


アリシアという完璧超人を出席させる事の何が問題となるのか。疑問を抱くアランに告げられた内容は──


「……この子には、専属騎士がいないんだ」


「え、そうだったのですか!?」


マジで?と言わんばかりの視線をアリシアに向けるアラン。アリシアは苦笑いしていた。


「我が国の聖装士は皆とても優秀な者たちだが、その中でもアリシアは抜きん出ている。実際、ほとんどの聖装士はこの子の実力に付いて行けていないのが現状だ。それ故、今までこの子には護衛を付けた事がほとんど無かったんだ」


(……まぁアリシアならそうなるか)


最初に聞いた時は驚いたが、考えてみれば確かにその通りだ。

アリシアの実力からしたら、護衛なんて必要ない。むしろ護衛が逆に足手纏いになってしまうだろう。

無駄な護衛を付けるくらいなら、一人でいさせた方がある意味安全かもしれない。


「私も護衛を付けずともこの子なら大丈夫だとは思っているのだが……だからと言って常にこのままでいさせるわけにもいかない。特に他国に赴かせる時は、相手の国から気にされてしまうからな。という訳で、今回君をアリシアの騎士もとい護衛として選ばせてもらった。アリシアと同じ『学園最高戦力者』の一人である君であれば、十分に成し遂げられる役目だろう」


「…………」


一通り話を聞き終え、アランは言う。


「……陛下、お聞きしたい事があるのですが」


「構わん。何かね?」


「海礼祭はいつ行われるのでしょうか?」


「ああ、そういえば言ってなかったな。海礼祭は五日後にある。そしてリフレイムに出発するのは今日だ。リフレイムが転移魔法士をこちらに派遣しているから、この後その転移魔法士と共にリフレイムまで移動してもらう」


「つまり私は今日から五日後までリフレイムで過ごすということですか?」


「そうなる。その間どう行動するかはアリシアと相談して決めてくれ。時間さえあれば好きに観光してもらってもいい」


「で、ではリフレイムに滞在するための私の荷物は……?」


「必要な物は既にこちらで用意してある。私は君自身に必要な物を用意してもらった方が良いと思ったのだが、アリシアがこちらで用意した方が良いと言ってきたので、そうさせてもらった。もし他にも必要な物があれば後で買い足してくれて良い。滞在中にかかった費用は全てこちらが持とう」


「…………」


アランは言葉が出なかった。

頼まれた内容は理解した。その他のあれこれも全て理解した上で───尚、受け入れられない。


何故俺が貴重な長期休暇を勝手に割くことになっている。しかも、よりにもよってアリシアの騎士として他国の祭典に赴けと。

ならばリフレイムに滞在するための荷物はどうするのかと思えば、それも既に用意済みと来た。

俺に直接荷物を用意させるなとアリシアが意見した理由は分かる。俺が国王の命令に反抗して逃げる隙を無くすためだろう。


「せっかくの休暇を割かせてしまい、すまないと思っている。だがその分の報酬は用意してある。リフレイムに滞在する間、我が娘の事を頼むぞ。アラン・アートノルト」


「ッ────」


深く、深く息を吸う。

言いたい事は山ほどあったが、この状況で反抗する訳にはいかない。ここは受け入れるしかないのだ。

アランは今にも溢れそうになる()()を必死に抑え込み、どうにか表情を作って言った。


「かしこまりました。陛下のご命令、聖装士の誇りにかけて必ずや成し遂げてみせます」


それは始まり(仕事の)を告げると同時に、終わり(休暇の)を告げる言葉でもあった。

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