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ニコニコショップのアルバイトたち  作者: 円寺える


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第22話

 波瀬の写真をカウンターに戻すと、海老原が二人の元へやってきた。


「今日も客少ないっすね」

「いつものことだけどね」

「重森さんインツタ見ました?」

「さっき斉藤くんに見せてもらったよ」

「フォロワー少ないんで、いいねの数は片手で足りますわ」


 ケラケラ笑う海老原に、千奈津は提案する。


「今日は海老原くんの写真を載せない?」

「俺っすか?」

「何か商品持って来てよ。それと一緒に撮るから」


 海老原は「えー」と不満そうにしていたがそれも一瞬で、真剣に悩みながら商品を吟味する。

 千奈津の隣に立っている斉藤は、海老原の写真を投稿すると聞いて、楽しみになったことがある。


「重森さん」

「何?」

「これで海老原に押されるいいねがあの女を上回ったら、どうなりますかね?」

「……どうなるかな」

「如月さんに負けるのは仕方ないじゃないですか。結果なんて分かり切ってますし。でも海老原に負けるとなると」

「でも海老原くんも格好いいから、いいねの数を競おうとは思わないんじゃないかな?」

「如月さんと海老原じゃ階級が違いますよ。あの女のことですから、海老原より自分は上だと思ってそうじゃないですか。それなのに、海老原の方がたくさんいいねを押されたら……くくく」


 小躍りしそうだ。

 斉藤が両手を握りしめて笑っていると、海老原は茶色い熊のぬいぐるみを持って「これに決めました」と千奈津に差し出した。

 チェーンが付いているので、ぬいぐるみとして部屋に飾ることができ、鞄に付けることもできる。


「これってもうすぐ終了するコラボ商品だよね」

「そうっす。あんまり有名じゃないアニメに出てくるキャラクターです」

「私は詳しくないけど、やっぱり有名じゃないんだ」


 ニコニコショップではよくコラボ商品を販売するが、有名なものとコラボすることは少ない。国民的ゲームキャラクターやアニメキャラクターは手が届かないようで、マイナーなものとのコラボが多い。

 それで売上は大丈夫なのか、と思っている人もいるようだが、「よく分からないけど、このキャラクター可愛いから買ってみようかな」と購入する中高生がいるのだ。

 マイナーではあるが、まったくファンがいないこともないので、それなりに黒字である。


「有名じゃないっすね。でも売れ行きは悪くなかったんで、今度第二弾をやるみたいなんすよ」

「え、そうなの?」

「他の店舗で働いてる友達がマネージャーから聞いたみたいなんで。だからこれを撮って、駆け込み客を狙います。第二弾もあるらしいんで、撮っておいて損はないかなと」

「ふうん、考えてるんだね。駆け込み客、来るといいけど」

「インツタはこの前開設したばかりだし、期待はしてないっす」


 けろっとした様子だ。

 千奈津と斉藤がそうであったように、海老原もまた建前を言ったのだろうか。二人はそんな失礼なことを思った。


「じゃ、撮るよ」

「はい。手で持てばいいですか?」

「そうだね。まずはアップから撮ろう」

「はーい」


 海老原はぬいぐるみに頬ずりするので、そこを千奈津は携帯で撮影した。

 二枚撮り終えると、その辺にあった適当なトートバックにぬいぐるみを付けて、海老原にトートバックを持たせる。


「手で持たないんすか?」

「鞄に付けて、ぬいぐるみの大きさを見せないと」

「あぁ、そういうことっすか」


 海老原はぬいぐるみをアピールするようなポーズを二回とり、最後はぬいぐるみを鞄から取り外し、両手で大切そうに持つ海老原を撮影した。

 時間をかけて撮るつもりはさらさらなかったため、すぐに撮影は終了し、千奈津はぬいぐるみだけの写真もいくつか撮った。


 インツタに文字を打ち込み、写真を載せ、投稿ボタンを押せば終わりの段階までいくと二人に見せた。


「これでいいかな?」

「すげえ、ハッシュタグまで付けたんすね」

「ぶ、文章がキラキラしてますね」


 文章だけでは味気ないと思い、星やハート、絵文字を使って明るさを演出させた。

 普段こんなに文章を華やかにはしないのだが、店舗の投稿には必要だ。他店舗もそうしていたので間違いない。


「じゃ、投稿しておくね」


 二人から反対されなかったので、そのまま投稿ボタンを押した。

 海老原は携帯を取り出してインツタを見ると、恰好いい自分の写真が投稿されていたので「うおおぉ」と声が漏れた。


「重森さん、写真撮るの上手いっすね」

「そ、そうかな?」


 えへへ、と照れる千奈津を視界に入れるより先に、海老原は店内に入ってきた女子高生たちの元へ行き、「インツタやってる? これ俺!」と画面を見せつけていた。

 女子高生たちは各々携帯を取り出し、「フォローします」と笑った。


「そういう戦略なのね」

「海老原のやつ、やりますね」


 女子高生たちと携帯を見せあって騒ぐ海老原に尊敬の念を送る。

 ぐいぐい積極的に話しかけることができる人間はこうやって人間の輪を広げていくのだろう。

 あのくらいの積極性があればどこでだって生きていける。


「海老原くんは凄いね」

「コミュ力おばけですよ」

「さっきの、いいね数の話だけど」

「海老原とあの女のいいね対決の話ですか?」

「そう。海老原くんが勝つに一票」

「正しい票だと思います」


 千奈津は携帯に保存しているシフト表の写真を取り出し、明日のシフトは誰と被っているのか指でなぞっていると、重森、斉藤、波瀬の名前があった。

 千奈津が持っている携帯の画面にシフト表が映っているのが見え、斉藤は横から覗き込むとその三つの名前を目にし、肩を落とした。


 明日は波瀬がいる。


 カウンターに置かれている波瀬の写真を倒したくなった。


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