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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第八章 王者・無双編

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745 聖霊戦士対鎧武者


 憂い谷とは死者を奉る大霊園である。

 荒涼とした大地と岩山が広がる黒い風の吹く辺境で、訪れるのは墓を参る者と生への渇望を忘れられぬ死者の魂のみである。

 その哀しみに寄り添い、労わり、この地を守護する役目を負った一族がいた。

 その現頭首がウーサー。

 憂い谷のウーサーと言えば〈死を想う者〉〈死者の守護者〉と呼ばれるほど名の通った戦士でもあった。

 鍛え抜かれた肉体には全身に複雑な模様をした刺青が彫られ、頭には大鷲の羽根を飾る。

 長い白髪と同じくらい長い白髭を三つ編みにひとつにまとめ、先端にはオオカミの牙が吊るされていた。

 同行する二人の戦士はコヨーテとサンダーバードと名乗る。

 ウーサーに比べれば年若いが、二人とも遜色ない戦士なのは一目瞭然であった。


「あれが憂い谷の聖霊戦士だ」

「聖霊戦士って?」

「彼らは墓守だ。戦いで散った戦士たちの魂が歓びの地へ送られるのを見届ける。そこは獲物が豊富な極上の狩場とされ、戦士たちは未来永劫にわたって狩りを楽しむことが出来るそうだ」

「未来永劫に狩りを楽しむ? 死ねば生まれ変わるものです」

「ホウライではそう信じられているのかもしれんが」


 ダーナの意見は置いておくとして、アナトリアが説明を続ける。


「魂を見届けることのみに自らの一生を捧げるのが憂い谷の一族の使命だが、そのためにもうひとつ課せられたものがある」

「それは?」

「迷える死者を見つけたならば、歓びの地に送還すること」

「まるっきり聖職者みたいだ」

「そんなことが出来るのですか」


 ウーサーたち聖霊戦士と相対するのはもののふチーム。

 鎧武者姿の三人で、それぞれミスターダイミョー、ムッシューハタモト、ナイスガイショーグンと名乗る。

 一時に全員が試合場に立ち、全員同時に一対一の戦いが展開されていた。

 若き聖霊戦士コヨーテはムッシューハタモトと、同じくサンダーバードはナイスガイショーグンと、お互いのチームリーダー、ウーサーとミスターダイミョーが顔を合わせていた。

 両チームともに寡黙であった。

 言葉を交わすこともなく無言で戦いは始まった。

 ウーサーは両手にそれぞれ使い込んだトマホークを握る。

 ミスターダイミョーは大太刀を両手持ちで握る。

 ウーサーは全身に彫られた刺青もわかる軽装だ。

 ミスターダイミョーは面頬で顔すら見えない全身武者鎧姿だ。

 対象的な二人だが、唯一同一なのは大柄な体躯であることだけ。


「いいえ、それだけではないですよ。二人の周り、見えますか?」


 ダーナの指摘通り、なんと戦う二人の周囲に白く光る何かが漂っているのだ。


「予選で戦ったあのファズボールじゃないのか」

「違います。あれは霊魂です。死者の魂が二人の間にたくさん飛んでいます」

「それって、人魂……」


 無数の人魂がどこからともなく現れ出でて、二人の戦いに合わせて飛び回っている。

 さらにお互いの攻撃時に数個の人魂も釣られて相手側に突撃してダメージを負わすのだ。


「三ヵ所共に人魂が飛んでいるな」

「これは聖霊戦士のスキルなのか? アナトリアよ」

「かもしれんが、妙なのは武士たちの攻撃にも合わせてウーサーたちを攻撃しているじゃないか」


 そうなのだ。

 この霊魂の群れはどちらかの戦士が召喚したモノとは思えず、引き寄せられてこの場に現れたように見えた。

 事実、ウーサーたち聖霊戦士側の三人は戸惑っていた。


「これはあきらかに戦士の魂。それが何故に我らに対しても矛を振るう?」


 大太刀の一撃を二本のトマホークで絡めとりながらウーサーは相手をつぶさに観察した。

 手合わせをしていて違和感がぬぐえないのだ。

 その答えがようやくにして分かった。


「なるほど! それゆえに戦士たちの魂がここへ」


 ウーサーが秘密を掴んだのと同時だった。


「ぐわぁッ」

「ぐふぅ」


 仲間のコヨーテとサンダーバードが共に負傷して倒れたのだ。

 コヨーテはムッシューハタモトの十文字槍を腹に受け、サンダーバードもナイスショーグンの剛槍を支えきれずに斬り倒された。


「……むぅ」


 独りになったウーサーを包囲するように三人の鎧武者が取り囲んだ。

 勝利を確信しているのであろうか、不気味なほどに三人とも無言で包囲を狭めつつあった。

 ところがウーサーは何ひとつ臆することなく、あろうことか両目を閉じて何やらブツブツと唱えだした。

 はや負けを認めて己への念仏でも唱えだしたのかと思われたがそうではなかった。

 ウーサーの呪言を聞いた鎧武者の三人が途端に苦しみだしたのだ。

 ウーサーの呪言は次第に大きな声で力強くなっていく。

 朗々とした低い声がズッシリと武者鎧に浸透していくと、まず最初にナイスガイショーグンが膝を着き倒れ、次いでムッシューハタモトが続く。

 最後まで立っていたミスターダイミョーも鎧の継ぎ目から煙が噴き出しついには崩れ落ちた。


「あッ」


 観客の驚く声が和した。

 倒れた武者鎧の中はがらんどうだった。


「もののふチーム、とうに生を終えた武者の魂のみで動いておったのだ。そなたらの迷いし魂、この憂い谷のウーサーがしかと見送ろう。いざ参られい。歓びの地へ赴くために、冥界の監理者マグ王の元へ」


 独り祈りを捧げるウーサーに勝利のアナウンスが響き渡った。


挿絵(By みてみん)

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