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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第六章 英雄・奇譚編

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474 自由騎士タイランその7 思わぬ襲撃


「まァったく、駄目な大人たちだぜ」


 〈蒼剣〉のボンドァンはひとりで愚痴りながら館の周囲を歩いてまわった。

 この町はディバマンドの山中に、崖をくり貫いて造られた関所の町だ。

 滝の裏側に広い面積を有する特殊な町で、エスメラルダ王国から派遣された太守の館はもっとも奥まった位置にある。

 そのため館の上は岩盤におおわれ、後方は硬い岩壁に接していた。


「お、こんな所にも野の花は咲くのか」


 太陽光は町の至るところに設置された鏡を使い十分な明るさを確保している。

 それでもこの町で咲く花は貴重であり、力強い。


「なんて花かは知らないが、持っていったらあの奥方さまも喜ぶかな」


 薄紫色に咲く花をジッと見つめ、次いで顔を上げて館の方を見る。

 いつのまにか館のもっとも裏側に来ていたらしい。


「あの部屋が奥方さまのいる部屋だな」


 近寄ってみるが窓は全て鎧戸に閉ざされ、当然だが中を見ることは出来なかった。


「わからなくもないが、こう閉ざしていては不健康きわまりない。…………おや?」


 一ヶ所中から光が漏れている。

 鎧戸の一片が朽ちているようだ。


「な、なんだあれ?」


 そこから中を覗き見たボンドァンは思わずうめき声をあげた。

 部屋の中は薄暗く、いくつか点いたランプの明かりに照らされて、太守の奥方リュキアが椅子に座っていた。

 身なりは一応整えているが、特筆すべきはそんなことではない。

 彼女は椅子に縛り付けられていたのだ。

 そのうえ猿ぐつわを噛まされ、黒い布で目隠しまでされている。

 特にもがいている様子は見えないが、もちろん喜んでいるようにも見えない。

 おとなしいのだ。

 糸の切れた人形のような印象をボンドゥアンは抱いた。


「どういうことだ? なんで奥方さまが縛られてるんだ?」


 もっとよく見たいと身を乗り出したときだった。


 ドォォン、という強い衝撃があり、辺り一帯が揺れだした。

 周囲の硬い岩盤にも亀裂が走る。


「まさか、地震かよ!」


 そうではなかった。

 突然地面が陥没すると、そこから丸太を数本束ねたほどの太さを持った怪物が姿を現した。


「さ、砂虫(サンドワーム)ッ! なんでこんな山の中に」


 続けて壁や天井の岩盤をぶち抜いて二匹目、三匹目の砂虫(サンドワーム)が姿を見せる。

 それは手も足もない、巨大なミミズのような怪物だった。

 暗闇に生息するために目は退化し、代わりに音と振動で感知する。

 しかし人すら飲み込まんとする巨大な口が開くと、そこには鋭利な歯列が何重にも連なっている。

 通常は広大な砂漠に生息しており、岩盤の固く標高のあるこの町に出没した例はなかった。


「聞いてないぞ、こんな怪物が襲ってくるだなんてッ」


 突然の事態に気圧されていた。

 剣を矢鱈目鱈に振り回し、どうにか砂虫(サンドワーム)を近付けないようにするので精一杯だ。

 そのとき館の内部からも地面を穿ち、地中から巨大な怪物が現れる音が響いた。


「マズイ! 中に直接ッ」


 館へと駆け出そうとしたボンドァンだったが、背後にあった岩盤に亀裂が生じ、そこからさらに新手の砂虫(サンドワーム)が飛び出してきた。

 出現の衝撃で内側から砕けた岩が重いつぶてとなりボンドァンの背中を打った。


「くぁッ」


 背中の痛みと息が詰まって思わず膝をつく。

 屈んだ彼の頭部に向かい、周囲ににょきにょきと生え出た怪物が大きく凶悪な口を開ける。

 恐怖とおぞましさにボンドァンは大きな叫び声をあげた。


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