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亜人世界をつくろう! ~三匹のカエルと姫神になった七人のオンナ~  作者: 光秋
第六章 英雄・奇譚編

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473 自由騎士タイランその6 それぞれの働きかた


 依頼内容はいたってシンプル。


 バギン太守がこのペシャの町に戻るまで、彼の妻リュキアを護衛すること。

 リュキアはそれまで外出どころか館の奥にある自室に引きこもり、一切の世話は限られた召し使いのみで行う。

 タイランたち雇われた冒険者も誰も直接会うことは許されない。

 期間はおおよそひと月と見ているが、それまでにリュキアを狙う不審者を捕える、もしくは処分できればその時点で依頼は完了と見なすこともある。

 タイランたちにはこの館にあてがわれた部屋での宿泊を許可し、朝夕の食事も保証する。

 報酬は日当で一日辺り一〇〇ガル。

 太守が戻った際にまとめて精算する。

 ただしリュキアを狙う者の首謀者を事前に処分した場合は報酬の上乗せ、及びその時点での精算もある。


 だいたいこんなところだった。


 特段聞いておきたい事もなかったので、全員その日は散会した。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 明けて翌日。

 タイランはひとり、あてがわれた自室にいた。

 何をするでもなく、寝台に寝転がり天井を見ていた。

 時刻はそろそろ正午になろうとしている。

 窓からは曇天の薄明かりが射し込む。


 扉の外に人の気配があり、続いてノックの音がした。


「開いてるぞ」


 扉が開くと立っていたのは〈蒼剣〉のボンドァンだった。


「なにか用か?」

「いや、部屋にこもって出てこねえから」

「出たところでする事もないしな」

「護衛の仕事があるだろ」


 若者がいきりたつ。


「護衛と言ってもオレたちに求められているのは武力だ。世話は召し使いがするんだから、話し相手も毒味役も不要だろう」

「見廻りや見張りをしたらどうだい」


 タイランは上体を起こすとボンドァンに言って聞かせる。


「オレとしてはだな、この町を抜けて早く旅に戻りたいから、ひと月もいるつもりはない。とっとと不審な首謀者とやらを捕まえて、出ていきたいのさ」

「だったらなおのこと……」

「外に見張りがいたら敵が用心して出てこないだろ。無警戒をさらけ出しておく方がいいのさ」

「わざと奥方を危険に晒すつもりかよ」


 もう行け、と若者に向かい片手を振る。


「けど、あの暗殺夫婦は見張りに立ってるぜ」

「仕事のやり方を強制はできん。オレたちは別にワンチームではないからな」

「けっ、好きにしろよ。腰抜けの言い訳にはうんざりだぜ」


 少し強めに扉を閉めてボンドァンは出ていってしまった。


「やれやれ、あいつが一番、この仕事に対し真面目かもしれんな」




 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「〈赤い鳥〉は来ねぇぜ」


 ボンドァンは庭先にいた元暗殺者の夫婦にそう言った。


「あいつはこの仕事に乗り気ではなさそうだったからな」


 禿頭のクロウ・リーが納得した顔で応える。


「あんたらは違うのかよ?」

「乗り気ではあるが解決する気はない」

「はあ?」

「寝食付きで日当払い。できれば何事もなく期限一杯稼がせてほしいね」


 こっちはこっちでタイランとは真逆の方針らしい。


「チッ。結局お前ら全員やる気ねえんじゃねえかよ。あーヤダヤダ。オレ様はちゃんと見廻りに行ってくらあ。あんたらはそこで日向ぼっこでもしてろや」


 少し怒った感じでボンドァンは館の裏手の方へと行ってしまった。


「若ぇな。無邪気にあの女を守ろうとしてやがる」

「羨ましい?」


 クロウ・リーに妻のバイド=バイタが尋ねる。

 革のマスク越しのため、より一層声が低く聞こえる。


「多少な」


 苦虫を噛み潰した表情で答える。

 その反応でバイド=バイタは夫がこの仕事になにやら思う所があるのだと気が付いた。


「この仕事、どう思ってる?」


 なので率直に聞いてみることにする。


「太守は信用ならねえ。この依頼もだ。いくつもの疑問点があるからだ」

「教えて」

「お前もわかってんだろ?」

「問題点は明確に洗い出しておきたい。その時になって選択肢に迷わないためにも」

「そうだな。そうしておこう。…………まず奥方を狙っている奴がいるって話だが、その首謀者のことを……」



 ドォォン!



 そのとき館の周囲からいくつもの衝撃が起こった。

 はげしい地鳴りと縦揺れが襲う。

 そしてそのあとにボンドァンの叫び声が聞こえてきた。


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