紡ぐ言葉はまだ途中
僕は頭が真っ白になった。
「そんな…嘘だ」
「まだ魔女と決まった訳ではないけど…この二人から避けた方が身のためだと思うの」
僕は口を噤んだ。エリンも申し訳なさそうに目を細めている。
「僕は頑張って生き残るから…そのときはエリンを」
ガシャーンドタドタドタッ!!
言いかけた言葉を遮るように書庫から、ものが倒れてきたような鈍く間抜けな音が響いた。
「…ヒントをくれてありがとう、エリン」
「いえいえ。お兄様の役に立てて嬉しい」
僕は急いで書庫へかけていった。
「アシュリー!」
扉を乱暴に開けた先に、アシュリーは本棚の下敷きになっていた。はみ出している色白な右手は、僕に助けを求めているようだった。
僕はなんとか本棚を支えることができた。と言ってもかなり危ないラインなのだが。
その間にアシュリーは左足を若干引きずりながらも、その場から離れてくれた。怪我は左足だけだったのは不幸中の幸いだろう。
「エリック…ありがとう」
アシュリーの声のおかげで己の力を存分に発揮し、本棚を立たすことに成功した。
大量の本が散らばっていることに対しては仕方ない、今は片す気にはなれなかった。
「アシュリー、何をしてたの…?」
「手掛かりになりそうな本を探してたら…急に本棚が倒れてきて逃げれなかった」
アシュリーは左足の傷を両手で覆った。赤黒く、鉄の臭いのする鮮血が、アシュリーの足や腕に伝って、その紅が床を染めていく。
見ているだけでも心が痛んできた。やっぱり僕、血を見るのは怖い。
僕はリュックサックからハンカチを出した。そのハンカチでアシュリーの傷を包むように結んだ。
「エリック、ありがとう。でも…ハンカチ汚しちゃった。ごめん…」
「ううん、大丈夫。これでマシになるならいいんだ」
そう返事した直後、ある本に視点が移った。
僕は微かに動く唇で、その本の題名を読み上げていた。
「『魔女の日記』…」




